「結婚はしたいけれど、急いではいない」。そんな声を、若い世代から耳にすることが増えました。かつて「結婚適齢期」という言葉が当たり前のように語られていた時代とは、明らかに空気が変わってきています。
1990年代後半から2010年代前半に生まれたZ世代。デジタルネイティブとして育ち、多様な価値観に触れてきた彼らは、結婚というライフイベントをどのように捉えているのでしょうか。
地域や自治体の政策づくりに携わってきた中で感じているのは、若い世代のライフプランを理解することが、これからの社会設計に欠かせないという点です。この記事では、公的機関の調査データを手がかりに、Z世代の結婚観を丁寧に読み解いていきます。
この記事で学べること
- Z世代は「いずれ結婚したい」意向が依然として高い一方で結婚の優先順位は下がっている
- 経済的不安が結婚をためらう最大の理由として繰り返し挙げられている
- 「結婚は必須ではない選択肢の一つ」という考え方が主流になりつつある
- 共働き前提のパートナーシップや対等な関係を求める傾向が強い
- 意識調査を読む際は設問設計や母集団を確認することが重要
Z世代が結婚に抱くリアルな意識
まず押さえておきたいのは、Z世代が決して「結婚を望んでいない世代」ではないという点です。
国立社会保障・人口問題研究所が実施している「出生動向基本調査」などの公的調査では、18歳から34歳の未婚者において「いずれ結婚するつもり」と答える割合が依然として8割前後で推移しています。つまり、結婚願望そのものは根強く残っているのです。
ただし、その中身が変わってきています。
「結婚しなければならない」という規範意識は明らかに弱まり、「したい人がすればいい」「自分のタイミングで考えたい」という自律的な姿勢が目立つようになりました。結婚は人生のゴールではなく、数ある選択肢の一つとして位置づけられているのです。
未婚者の結婚意向のイメージ
国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」の傾向をもとにした概念図です。
結婚をためらう理由として挙げられるもの

意識調査で繰り返し浮かび上がってくるのが、経済的な不安が結婚のハードルになっているという現実です。
「結婚生活を送るだけの収入がない」「将来の家計に自信が持てない」といった声は、特に男性を中心に根強く見られます。非正規雇用の広がりや実質賃金の停滞といった構造的な要因が、若い世代の選択に影を落としているのです。
お金の問題だけではありません。
「まだ自由でいたい」「一人の時間や趣味を大切にしたい」という価値観も、結婚を先送りする理由として挙がります。自分のキャリアやライフスタイルを充実させることへの意識が高いのが、この世代の特徴といえるでしょう。
結婚に前向きな要素
- 精神的な安心感やつながりへの期待
- 好きな人と生活を共にしたい気持ち
- 子どもを持ちたいという願望
ためらう要素
- 経済的な不安や収入への自信のなさ
- 自由な時間を失うことへの抵抗
- 仕事や家事分担への不安
価値観の変化が示すもの

Z世代の結婚観を語るうえで欠かせないのが、パートナーシップに対する考え方の変化です。
「男性が働き、女性が家庭を守る」という従来型の役割分担を前提とする人は、この世代では明らかに少数派になっています。共働きを当然のものと捉え、家事や育児も対等に分担したいという意識が広がっているのです。
結婚という制度そのものへの向き合い方も柔軟です。
事実婚や、あえて籍を入れない選択、多様なパートナーの形を尊重する姿勢も見られます。こうした価値観は、地域社会のあり方や地方移住を考える若い世代の動きとも深くつながっています。
結婚は「するもの」から「選ぶもの」へと変わってきています。この変化を否定的に捉えるのではなく、多様な生き方が認められる社会への移行として理解することが大切です。
意識調査を正しく読み解くために

ここで一つ、注意しておきたいことがあります。
「Z世代の意識調査」と銘打たれたデータは数多く存在しますが、その信頼性は一様ではありません。企業のマーケティング目的で行われた小規模なアンケートと、公的機関が継続的に実施する大規模調査とでは、意味合いが大きく異なります。
調査データを見るときの確認事項
数字はときに一人歩きします。「〇割が結婚したくない」といった刺激的な見出しが、実際には限定的な条件下での回答であることも少なくありません。データの背景まで確認する姿勢が、正しい理解への第一歩です。
よくある質問
Z世代は本当に結婚したくないのですか
いいえ、そうとは限りません。多くの調査で「いずれ結婚したい」という意向は8割前後を保っています。ただし優先順位が下がり、タイミングを慎重に見極める傾向が強まっているというのが実態に近いでしょう。
結婚をためらう最大の理由は何ですか
継続的に挙げられているのは経済的な不安です。収入の安定性や将来の家計への懸念が、特に大きなハードルとなっています。自由な時間を大切にしたいという価値観も影響しています。
上の世代と何が一番違うのですか
「結婚は必須」という規範意識の薄さです。以前は結婚を人生の当然の通過点と捉える見方が主流でしたが、Z世代では数ある選択肢の一つとして相対化される傾向が顕著です。
自治体や企業はどう対応すべきですか
結婚を促すよりも、安心して選択できる環境づくりが重要だと考えられます。雇用の安定、住まいの支援、対等なパートナーシップを支える制度など、土台を整えるアプローチが求められます。
信頼できる意識調査はどこで見られますか
国立社会保障・人口問題研究所や内閣府、厚生労働省などが公表する公的調査が参考になります。継続的に実施され、母集団も明確なため、傾向を把握するうえで信頼性が高いといえます。
まとめ
Z世代の結婚観は、「したくない」のではなく「自分らしく選びたい」という方向へと変化しています。経済的な不安という現実的な課題を抱えながらも、対等なパートナーシップや多様な生き方を求める姿勢が、この世代の大きな特徴です。
意識調査を読む際は、数字の背景にある文脈まで丁寧に見ていくことが欠かせません。まずは公的機関の一次資料に触れることから始めてみてはいかがでしょうか。
若い世代の価値観の変化を正しく理解することは、これからの社会や地域のあり方を考えるうえで、静かに、しかし確かに重要性を増していくはずです。
