堀江貴文氏 「観光ビジネスは1兆円超のポテンシャル」。地方創生、首長と起業家それぞれの思惑:GRIC 2024レポート

GRIC2024
本稿の写真はすべてオフィシャル提供
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‍フォースタートアップス株式会社は11月12日(火)から14日(木)の3日間、成長産業に特化した国内最大規模のカンファレンス「GRIC2024」を開催した。

14日(木)はオフラインDAYとして、渋谷ヒカリエにて展示やピッチイベント、セッションが実施された。本稿では実施されたセッションのなかから「高島市長x堀江貴文x堀義人:首長と起業家が仕掛ける同時多発的な地方創生」のレポートをお届けする。

登壇したのは、堀 義人氏(グロービス経営大学院 学長/グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー)、堀江 貴文氏(SNS media&consulting株式会社 ファウンダー)、高島 宗一郎氏(福岡市 市長)の3名。またモデレーターは谷本 有香氏(Forbes JAPAN 執行役員 Web編集長)が務めた。

目次

「地方に“イケてる”経営者は増えていると思いますよ」

谷本氏:高島市長、現在の地方創生をどうご覧になっているか聞かせていただけますか。

高島市長:行政“だけ”で取り組む地方創生って、やっぱりおもしろいことはなかなか実現できないんですよね。本来、地方創生は地域の強みを尖らせる必要があるものの、議論を重ねていくうちに丸くなってしまう。ジャパネットさんのの地域創生を担うグループ会社が長崎にホテルやスタジアムなどが一体になった施設を作りました。この規模の施設、行政だけでは実現が難しい話です。

やはり民間企業の方にも協力いただく必要が地方創生にはあります。そのため、行政側としては、どのように民間企業を巻き込めるかがより重要になってきているなと思います。もっと言えば、民間企業や起業家の方にどうすればこの地域で取り組むことを選択してもらえるかです。

谷本氏:堀江さんもさまざまな地方創生に携わられていますが、どういった経緯で各地で取り組まれているのでしょうか。

堀江氏:ノリときっかけです(笑)。福岡にいくつか会社を作ったのですが、それも高島市長とNewsPicksのインタビューで一緒になる機会があり、そこから「福岡市はベットする(=取り組む)価値がある」と思ったからです。

高島市長が話した、ジャパネットの長崎スタジアムシティのレセプションに参加させてもらったんですけど、「こんな施設が長崎にできるんだ」ってすごく驚きましたね。

日本各地にある程度の資本を持ち、なおかつ迅速な意思決定できるような“イケてる”経営者は増えていると思います。とくに地方には、非上場だからこそスピードある意思決定ができ、なおかつ銀行など金融機関とも深いつながりを持つ会社があります。なので、地方創生は結構チャンスがあるものなのかなと。

谷本氏:堀江さんの発想や仕掛けって非常におもしろいのですが、堀江さん“だから”できているというわけではないのですか。

堀江氏:いやいや、そんなことはないです(笑)。お手伝いしただけのところもたくさんあるので。

谷本氏:では、堀さんには水戸での取り組みについて紹介いただきたいです。

堀氏:高校までは茨城・水戸で暮らしていました。その後、京都大学に入学し、就職して起業し、家族も増えるなどもあったのでしばらく水戸に帰っていなかったのです。しばらく経ってから、同窓会で水戸に帰ったとき、街中の光景を見て愕然としたんですよ。昔はデパートがいくつもあったのに、そのほとんどが撤退して空地になっていたり、廃墟になって取り残されていたりと……。

僕自身の使命感としても「現場を目の当たりにしてしまった」からにはやってみようと、そう思って水戸の創生に取り組んだのです。

有志の方といっしょに、たとえば街中の再開発では、空地を借りたり買ったりして人が集まれる場所を作りました。アリーナやカフェ、そして大きかったのはプロスポーツチームです。スポーツチームがあると、ファンやサポーター、ブースターの方が集まってくるのです。あとは、放送局がなかったので、茨城県内唯一のLuckyFM茨城放送を作るなどもしました。

「音楽(アリーナ)」「スポーツ」「告知・拡散」する3つの手段を持てば人や起業家を動かす“うねり”を作れると思っています。

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「自分では自分の地域の良さに気が付けないんですよ」

谷本氏:たとえばニセコのような、お金を落としてもらえるような地域を作るために必要なことは何かあるのでしょうか。

堀江氏:ニセコはもともと陸の孤島なんですよね。高速道路もなければローカル列車の本数も多くはない。アクセス面は不便なんです。ただ、国内トップクラスで雪が良いんです。それをたまたまオーストラリア人が日本に来たときにニセコの良さを見つけ、ちょっとした商売を始めたことがすべての始まりなんですよ。そうしたらSNSで口コミを見た海外の人が急激に集まっていき、いつの間にかインバウンドの街になったわけです。

堀氏:基本的にその地域や街の特長や良さを伸ばすしかないと思うんだよね。

堀江氏:僕はやっぱりインバウンドがキーになっていると思うし、一番伸びしろがあると思っているんです。

コロナ禍になって、日本中回ってみたんですけど、どこに行っても良いんですよ。どこにでも1,500年ぐらいの歴史と文化があって、豊かな自然があるのは日本ならでは。だから、どの地域も世界に向けてアピールできます。

たとえば、飛騨高山は実は古くからインバウンドに力を入れていて、朝市にいる漬物店の方でも物を売れる程度には英語を話せるんです。これは地域全体を巻き込んでやるような、ある意味、草の根活動に近いんですが、それでうまくいっているからこそ人がいっぱい来る地域になっているんです。

堀氏:やっぱり地域それぞれで強みは違うんですよね。同じ九州でも福岡と鹿児島、宮崎などでもまったく違う。地の利や歴史、文化をどうやって活用して何が良いかを考える必要があるんです。だから自分のいる地域の良さを1個だけでもいいので、それを大きくしていくしかないでしょう。

堀江氏:ただ、自分では自分の良さに気が付けないんですよ。それこそ僕も以前、「堀江さんって良い声していますよね」って言われたことありますけど、自分ではまったくわかっていませんでしたからね(笑)。要するに、自分の良さは他人に言われるまでわからないんです。

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「飲み会って結構大事ですよ」

高島市長:堀さんが水戸のプロジェクトで成功している理由は、合理的な戦略だけでなく、アナログなこともかなりやられているなって思っています。ステークホルダーをしっかり集めて、対話して、時には人を立てながら……。

堀氏:地方創生で難しいところは、たとえば自治体から補助金をもらってやる部分。税金を使うときは議会を通す必要があってすごく大変。だから僕は一切税金を使わず、自分たちのお金でやるようにしています。そのうえで、一切敵を作らずにやりきる。多くの人を巻き込んで、「あなたたちのおかげで成功したんです」と手柄を持って行ってもらう。

あと、誰でもできることはやらないと決めています。誰かができることに価値はないかなと。だからこそ、誰かを押しのけるようなこともない。こういう活動をしていると、周りの人から感謝しかされないんです。

堀江氏:僕も前にビーチでフェスを開催したんですが、同じ地域で同じようなフェスを地域の方たちがやりたがっていたみたいなんですね。予算としては2億5,000万円くらいの売上が必要になる規模だったんですが、地元の有志の方だけでは到底難しい。

ところが、僕らが来てボーンってやっちゃった。そうしたら、妬まれますよね。お客さんたちからは感謝しかされなかったですけど、もともとやりたかった人には「あいつ突然やってきてなんなんだよ。ホリエモンだからやれたのか」みたいなことを思われてしまう……。だから、割と早い段階から周りを巻き込んで敵を作らないことは本当に大事。

高島市長:いろいろ言われますけど、日本でプレイするみなさんには「俺聞いてない」「聞いてなかった」という人をできるだけ少なくする行動が必要なことは覚えてもらいたいですね(笑)。

堀氏:人間関係をきっちり構築して、全員と会話してスタートしないとね。

高島市長:こういう場で言うとアレですけど、飲み会って結構大事ですよ。DXの時代だからこそではなく、やっぱり地域のステークホルダーの方たちと酒を酌み交わすリソースを割くというのは、結果的に自分たちにとって大きなメリットになります。

堀氏:そうそう、人間関係さえ構築できていれば、説明しても反対されづらくなるんですよ。

高島市長:あと、相手から言わせる。たとえば飲み会で会話できるなら、自分たちがやろうとしていることを相手に言わせるように仕向けていって、こちらがやりたことを発言してくれた瞬間に「なるほど! それいいですね! やりましょう!」って言うとか(笑)。

堀氏:ステークホルダーたちとの接点を作って会話できたら、あとは自分の能力次第。人を巻き込んで成功させられるかは起業家の能力なので、プロダクトを考えてビジネスモデルをどうするか練って、どうすれば儲かるかのマーケティングの戦略を出していくだけ。

高島市長:ただ、行政には行政ならではの、行政を動かす力学、その一方で動かしづらくなる事案もあるんです。

たとえば、自治体の電話受け付けをLINEで完結させられるサービスがありますよね。コールセンターを抱えるよりもコストも抑えられるし、24時間受け付けられるメリットもある。明らかに経済的な合理性があるわけですよ。ただ、なぜか反対する人が出てくる場合がある。反対する人について調べてみると、実はその電話対応を担っている事業者が、その地域の議員さんの関連企業だったという……。すでにその地域にある取り組みの背景など、こういう話は覚えておくだけでもいいかなと。

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「観光ビジネスには1兆円を軽く超えるポテンシャルがある」

谷本氏:まだまだたくさんの話を伺いたいところですが、最後に地方創生についてそれぞれコメントをいただきたいです。

高島市長:地方だけでもおもしろいことがどんどんできる。地方から日本を変えることができる。そのきっかけになるような、地方の行政をみなさまに見ていただけるように、福岡市でがんばっていきます。ですので、みなさまもみなさまの地域でがんばっていただければと思います。

堀氏:地方創生はやっぱりおもしろいですよ。もしやりたいと思ったら、まずは力をつけること。起業家としての力、経済力、影響力などを持ってから取り組んだほうがスピードアップできます。そのため、まずはみなさんの本業の部分で力をつけてほしいです。それとあわせて、地方創生の成功モデルを目の当たりにしてほしいです。ということで、みなさまぜひ、水戸に来てください!

堀江氏:いま観光ビジネスについて政府の目標は6,000億円などを設定していますが、そんなもんじゃない。軽く1兆円を超えるポテンシャルがあると思っています。地方自治体の方や地方で働いている方、観光系の仕事をされている方は、世界に向けてInstagramやTikTok、Googleマップをやれば人を集められるので、みんなで仕掛けていってがんばってください。

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