東急不動産株式会社とソフトバンク株式会社は11月7日、渋谷駅から半径約2.5km圏内のエリアにおける「広域渋谷圏」で、「地域特化型生成AI」を搭載したタッチ式サイネージが来訪者に対して“おすすめの行き先”などを提案する実証実験を11月11日から開始すると発表した。設置場所は、shibuya-san(東京都渋谷区道玄坂一丁目2番3号 渋谷フクラス1階)。
この取り組みの目的は、広域渋谷圏の回遊性向上はもちろんのこと、同エリアの魅力や満足度を上げることだ。
渋谷エリアの行き先を趣味や目的に合わせて提案
冒頭に記載のとおり、タッチ式サイネージには「地域特化型生成AI」が搭載されている。この生成AIは、自然言語処理モデル「GPT」と、「都市OS」と言われるデータ連携基盤が組み合わされており、広域渋谷圏で収集したイベント情報や店舗情報、気象情報などの多様な情報を活用する。
具体的には、広域渋谷圏で収集したイベント情報や店舗情報、気象情報などの多様な情報をもとに地域特化型生成AIが解釈・分析し、飲食やショッピング、イベントなどに関する来街者それぞれの興味や目的に最適な提案をしてくれるそうだ。また、サイネージでは「渋谷で働く女性」や「渋谷に長年住む地元のおじいさん」など、生成AIにより生成されたさまざまな人格・個性を持ったアバターがそれぞれ独自の口調や表現でコミュニケーションを取ってくれる。
対応言語は日本語のほか、英語や中国語、韓国語に対応する。
本当の狙いは「スマートシティの新たなモデルケースの構築」
渋谷エリアでは、海外からの観光客を含め、多くの人々が渋谷スクランブル交差点や忠犬ハチ公像を訪問するなど、観光名所に関する認知度や満足度が高い。しかし、飲食やショッピングに関する認知度・満足度は相対的に低いという課題を抱えているそうだ。
今回の実証実験ではこれらの飲食やショッピングに関わる店舗・施設への回遊を促すことが目的としているが、根底にあるのはモデルケースの構築であるという点に着目したい。
渋谷エリアにおける東急不動産がもつ独自のエリアナレッジと、気象情報やイベント情報などのさまざまなデータを組み合わせ、それをユーザーである来訪者に伝えて「どのように行動を変えることができるのか」というのが今回の実証実験の軸にある。
たしかに、渋谷エリアにおける課題の解決も狙いのひとつにあるが、都内の有名箇所は「案内される以前に、行きたいところがあれば調べられる」というのは誰しもが理解している。ただ、もし渋谷での実証実験がうまくいけば、多くの地域における観光等での回遊に大きく貢献する取り組みになるだろう。
東急不動産とソフトバンクもプレスリリースで「この共同実証の結果を踏まえ、生成AIなどの活用によるスマートシティの新たなモデルケースの構築に向けて、さまざまな可能性を検討していきます」と今後の展開についてコメントしており、各地の地域活性化に寄与する可能性を秘めているように思える。