群馬県太田市の新田製パン有限会社が、地元の工業高校と連携し、日本最大級の災害対応キッチンカーを製作するプロジェクトを進めている。今後発生が懸念される首都直下地震や大規模災害時に、避難所などで温かい食事を提供できる支援車両として活用する予定だ。
産学連携で進めるキッチンカー製作
本プロジェクトは、新田製パンの統括部長・星野茂氏の発案でスタートした。新田製パンは、これまで東日本大震災や台風19号、能登半島地震などの被災地に食料支援を行ってきた経験を持つ。災害時に被災地へ温かい食事を届けたいとの思いから、2023年1月に本プロジェクトを立ち上げた。
車両の製作には、群馬県立太田工業高校電子機械科の3年生が参加。車両の修理や塗装作業を行い、2024年4月にプロジェクトが本格始動した。完成した外装の後、キッチン内装の設計・施工は後輩の生徒たちに引き継がれ、世代を超えて技術が継承されていく。
日本最大級の災害対応キッチンカーの特徴
製作された車両は、大規模避難所での食事提供を想定し、大量調理が可能な設備を搭載する。
- 車両仕様:
- 三菱ふそうスーパーグレート(元大型中継車)
- 全長10m、全幅2.5m、高さ3.5m
- 装備:
- 大型発電機(50kVA)
- パワーリフト
- 今後、大型のオーブンや立体炊飯器など大量調理に対応した調理器具を搭載予定
- 支援物資の積載スペース
電力や水道が寸断された被災地でも稼働できる設計となっており、支援スタッフが数日間滞在しながら活動できるスペースも確保されている。
企業・団体の協力による実現
本プロジェクトには、多くの企業や団体が協力している。太田工業高校の生徒たちは、群馬自動車大学校や京成自動車工業、関西ペイントなどの企業から技術指導を受けながら、車両の補修や塗装作業を進めた。さらに、車両の仕上げにはN-KITや株式会社クラインズ、株式会社サンユーサービスなど、多くの企業の支援が寄せられた。
完成後の運用と今後の展望
完成後のキッチンカーは、新たに設立された特定非営利活動法人「新田フードサポート」が運用を担う。災害時の炊き出し支援に加え、平時には防災啓発イベントや子ども食堂、パン作り教室などを通じて地域に貢献していく予定だ。
新田製パンは、「大きな車両ではあるが、小さな子どもたちにも寄り添える存在にしたい」とし、今後も社会貢献活動を続けていく方針だ。
このプロジェクトは、地元企業と教育機関、地域社会が協力し、未来の防災対策を形にする取り組みとして、多くの注目を集めている。