築40年以上マンション所有者の「耐震や防災に対する意識が低い」東京都港区は3棟に1棟が旧耐震:株式会社スマート修繕調べ

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株式会社スマート修繕は2月19日、東京都23区旧耐震マンション棟数比率についての調査を実施した。これは、築40年以上のマンション区分所有者を対象に、お住まいのマンションの耐震・建替に関するアンケート調査だ。プレスリリースではこの調査結果が発表されているので、本記事にて紹介する。

調査名:お住いのマンションの耐震・防災に関するアンケート
調査対象:築40年以上のマンション区分所有者
有効回答人数:189名
調査期間:2025年1月14日(火)~2025年1月21日(火)
調査エリア:全国
調査方法:インターネット調査(株式会社ジャストシステム「Fastask」利用)
調査実施機関:株式会社スマート修繕

目次

調査サマリー

  1. 東京都23区旧耐震マンション比率No.1の港区は3棟に1棟が旧耐震。古くから発展している町ほど旧耐震マンションの問題は深刻に。
  2. 耐震診断、耐震工事、建て替えの検討有無から、マンションの耐震性や老朽化への関心の低さが明らかに。
  3. 自身のマンションの耐震性を把握していない人が約6割。興味関心はあるものの、工事費の負担には消極的
  4. 約7割の人はマンションの耐震性や強度に問題意識なし。4人に1人は災害への対策をしていない実態も明らかに。

東京都23区旧耐震マンションランキング

東京都23区の区ごとの全マンション棟数と、旧耐震マンション棟数から、旧耐震マンションの棟数と比率のランキングを作成。旧耐震マンション棟数のTop5は「世田谷区」「港区」「渋谷区」「新宿区」「杉並区」、旧耐震マンション比率のTop5は「港区」「渋谷区」「目黒区」「新宿区」「杉並区」となりました。特に港区のマンションは、3棟に1棟が旧耐震という実態が明らかになりました。

古くから町が発展している地域では、旧耐震基準のマンションが多く、その比率も高い傾向にあります。これらの地域は地価が高く、周辺に空き土地が少ないため、高さ制限や施工の難易度が高くなることが予想されます。その結果、建て替えにかかる費用が高額になり、さまざまな問題が発生する可能性が高まります。

また、旧耐震マンションが多い地域では、激甚災害時に建物が大きく倒壊するリスクが高まり、周辺地域にも甚大な被害を及ぼす可能性があります。倒壊によって火災の発生率も増加し、さらに被害が拡大する恐れがあります。また、倒壊した建物が原因で周辺道路が使用できなくなり、救助活動が困難になる場合や、住居が居住不可能な状態となることで、個人の復興が非常に困難になるなど、さまざまな問題が発生します。

全ランキング

耐震診断、耐震工事、建て替えの検討有無から、マンションの耐震性や老朽化への関心の低さが明らかに

築40年以上のマンション居住者に対するアンケート回答者の7割近くが「60歳以上」との結果となりました。この調査はインターネットを通じて実施されたため、実際には60歳以上の居住者の割合がさらに高いと考えられます。

耐震工事や建て替えを行う場合、追加で工事費用を支払う必要があり、工事期間中は生活に制限が生じることも考えられます。しかし、居住者が高齢になるほど、高額な費用負担、工事による一時的な引っ越しに対してのハードルが高くなり現状維持を選択する傾向があります。高経年マンションの居住者は今後さらに高齢化が進むと予想されるため、万が一に備えマンションの耐震性や老朽化に積極的に対応していくことが求められます。

「お住まいのマンションで耐震診断や工事を検討や実施したことはありますか。」との質問に対して、32.3%の方が「把握していない」、29.6%の方は「どちらも検討していない」と回答。これにより、全体の6割以上が自身のマンションの耐震性について関心を持っていない様子が伺えます。また、実際に耐震診断を実施しているのは全体の約3割であり、そのうち実際に耐震工事を実施したのは全体の1割にとどまりました。

「お住まいのマンションで建て替えを検討したことはありますか。」との質問に対して、「(検討したことは)ない」と回答した方が66.1%でした。「把握していない」と回答した方も23.3%であり、多くの方はマンションの耐震性や老朽化について日常生活の中で気にすることがほとんどなく、何か問題が発生しない限り、対策の必要性を感じることがないと考えられます。

「耐震診断、耐震工事、建て替えの検討や実施のきっかけを教えてください。」との質問に対して、「管理組合からの提起」と回答した方が55.8%でした。耐震診断や工事、建て替えの検討に関するアンケート結果から、マンションの耐震性や老朽化について関心を持つ方は少ないことがわかります。しかし、管理組合が主体的に検討・推進しなければ、将来的に大きな問題につながる可能性があります。

マンションの耐震性を把握していない人が約6割。興味関心はあるものの、工事費の負担には消極的

「お住まいのマンションの耐震性は把握していますか。」との質問に対して、約6割が「把握していない」と回答。「把握していないが、耐震性に興味関心がある」と回答した人は48.1%にのぼり、意識はしているものの、個人の中でその重要度が高くない様子が伺えます。また、「把握している」と回答した約4割のうち、「耐震性に問題がある」と回答した人は9%であり、耐震性を把握しているマンションの約4棟に1棟が耐震性に問題がある実態が明らかになりました。

「お住まいのマンションを購入される際、耐震性は気にされましたか。」との質問に対して、「気にしなかった・論点に上がらなかった」、「あまり気にしなかった」と回答した人が過半数となりました。立地やコストを重視すると、耐震性には意識が向きにくく、結果として旧耐震マンションを選択してしまう方も多いと考えられます。

一方で、5人に1人が「購入判断に関わる程度で気にした」「他の各種条件面と横並びの程度で気にした」と回答しており、旧耐震であることが売買の際のネックとなることが推測できます。

「建て替え・耐震工事を実施する場合の費用の考え方について、一番ご自身に近い考え方を教えてください。」との質問に対して、46%の人が「修繕積立金の範囲で検討したい」と回答。しかし、修繕積立金の範囲で賄うとなると、実際は月々の修繕積立金が大幅に増額されることになりますが、それを許容しているわけではなく、現状の支出の範囲で対応してほしいという願望があることが伺えます。さらに、約25%の人は「極力費用はかけず現状維持したい」と回答しているため、合わせて約7割の方はマンションの耐震性を改善するための工事費の負担に消極的と考えられます。

過去にスマート修繕にて、マンションの建て替えにかかるコストを試算した結果、戸あたり2,000万円の負担で建て替えが可能なマンションは、関東や関西などの国内人気エリアでも1%にも満たないことがわかっています。そのため、追加費用の負担なく既存の修繕積立金の範囲内で建て替えに対応することは現実的ではないと言えます。

「住んでいる中で主に耐震や強度に関連して困りごとや気になることはありますか。」との質問に対して、7割以上の人が「ない」「あまりない」と回答し、マンションの耐震性や強度について関心がない様子が伺えました。

困り事や気になることが「ある」「たまにある」と回答した人に対して、「具体的に困っていること、気になっていることを教えてください。」と質問したところ、「建物自体の経年劣化」(63.5%)、「南海トラフなど巨大地震が来るのが怖い」(61.5%)と回答した方がともに6割以上となりました。

「耐震・防災観点で、組合/個人として行っていることがあれば教えてください。」との質問に対しての回答TOP3は、「備蓄や防災用品の準備」(46.6%)、「家具や家電の転倒・落下の防止対策」(45.0%)、「避難場所や避難ルートの確保・把握」(33.9%)でした。25.4%は「特に行っていない」と回答しており、4人に1人は災害に対して何の対策もしていない実態も明らかになりました。

築40年以上のマンション区分所有者の「耐震や防災に対する意識が低い」

株式会社スマート修繕 執行役員/組合営業責任者 兼 技術責任者 別所 毅謙氏のコメント

調査全体を通して、築40年以上のマンション区分所有者の「耐震や防災に対する意識が低い」ということが分かる結果であったと考えられます。最も「所在時間の多い建物」が「耐震性・強度が低い」というのは、防災の観点からすると良い状態とは言えません。防災用品の準備や家具等の落下防止などの対策はもちろん必要ではありますが、災害対策で最も重視するべきことは「利用する建物の耐震性・強度」です。

阪神・淡路大震災の経験から、旧耐震の建物が被災すると、大きなダメージを受けることが想定されます。建物は倒壊すると「潰れきる」という特性があります。隙間なく潰れますので、中にいる方が助かることはまずありません。建物がつぶれると、死亡してしまう可能性が非常に高くなりますし、前述の通り復興に大きな影響を与えてしまいます。

防災対策の最重要項目の一つに「利用する建物が新耐震である事」という原則がありますので、しっかりと耐震診断、耐震工事を行うことをお勧めいたします。

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