兵庫県淡路市を拠点とする株式会社匠創生が、新たな挑戦に踏み出した。長期熟成古酒ブランド「古昔の美酒(いにしえのびしゅ)」のプレミアムブレンドシリーズとして、『古昔の美酒 GOLD』『古昔の美酒 梅響(うめひびき)』の2商品を発表。2025年3月3日より販売を開始する。
2月27日に都内で行われた記者会見では、代表取締役社長・安村亮彦氏が登壇。日本酒市場の現状と、新商品のコンセプトについて語った。
「現在、日本酒業界は市場縮小の課題を抱えています。ワインやウイスキーなどの洋酒市場は拡大を続ける中、日本酒の消費量は減少傾向にあります。しかし、私たちはここに可能性を見出しました。ヴィンテージワインや熟成ウイスキーと同様に、日本の古酒も適正に評価される市場を築いていきたいと考えています」と安村氏。

若年層・女性にも届く“新しい古酒”
今回の新商品は、特に若年層や女性を意識した商品設計となっている。『古昔の美酒 GOLD』は、金賞受賞歴のある3種類の古酒をブレンドし、芳醇な香りとバランスの取れた味わいを実現。日本酒が苦手な人でも楽しめるよう、アルコールの刺激を抑え、飲みやすさを追求した。
また、『古昔の美酒 梅響』は、2006年仕込みのバーボン樽で熟成された梅酒と、2007年に仕込まれた梅酒をブレンド。深みのあるスモーキーな香りとフルーティーな甘みが調和した大人の味わいに仕上げた。
パッケージデザインにもこだわりが光る。従来の黒を基調としたデザインから一新し、『GOLD』は日本の伝統色・弁柄(べんがら)色を採用。『梅響』は梅の花を連想させる上品な色合いとなっている。


日本酒の未来を切り拓くブレンド技術
会見には、梅響の原料となる梅酒を提供した鳥取県・梅津酒造の梅津雅典会長も登壇。「日本酒業界は新酒の流通が主流ですが、かつては熟成を楽しむ文化がありました。古酒の価値を見直し、新たな市場を作ることは非常に意義のある取り組みです」と話した。
また、古酒のブレンドについては「通常、梅酒は単一のものとして販売されますが、ブレンドによって新たな魅力が生まれる。約20度という高いアルコール度数を活かし、様々な楽しみ方ができるのも特徴です」と、その可能性に期待を寄せた。

9,900円の価格設定の理由とは
今回の新商品は、375ml(GOLD)および350ml(梅響)で9,900円(税込)という価格設定となっている。これは、単なる日本酒や梅酒の価格ではなく、熟成酒としての価値を踏まえたものだ。会見では、価格に関する質疑応答も行われた。
「古酒をヴィンテージワインや熟成ウイスキーと並ぶ高級酒として確立していきたいと考えています。フルボトル換算では約2万円と、ヴィンテージワイン市場と比較しても妥当な価格設定です。ただし、日本酒の熟成酒文化はまだ一般的ではないため、まずはハーフサイズで提供し、手に取りやすい形にしました」と安村氏。
また、「海外市場では『日本国内で流行っているかどうか』が重要視されます。そのため、まずは日本国内での認知度を高め、いずれは世界市場にも広げていきたいと考えています」とも語った。
世界市場を見据えた展開
高級酒市場をターゲットにする以上、国内だけでなく海外市場も重要だ。匠創生は、すでに海外展開を進めている。安村氏は「世界の高級酒市場では、熟成酒の需要が高まっています。私たちは、日本の古酒を世界のセレブが憧れるブランドへと育てていきたい」と意気込む。
実際、同社の古酒はすでにフランス、シンガポール、香港、タイ、ドバイなど5か国に輸出されている。また、海外の品評会でも高い評価を得ているという。しかし、「海外市場では、日本国内での認知度も重要視される。だからこそ、まずは日本での人気を確立することが大切」とも語った。
3月3日、いよいよ販売開始
『古昔の美酒 GOLD』『古昔の美酒 梅響』は、公式オンラインストアで3月3日より販売を開始。今後、高級レストランや免税店での取り扱いも進めていくという。
「日本の伝統的な酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録された今こそ、日本酒の価値を世界に発信するチャンス。私たちは古酒という新たな選択肢を提案し、日本酒業界全体の活性化を目指します」(安村氏)
また、安村氏は「今回発売する両商品は、食中酒というよりも、食後にゆっくりと過ごす時間に楽しんでもらいたい。チョコレートなどといっしょに味わってもらうのがオススメ」と話した。
匠創生の挑戦は、単なる新商品の販売にとどまらない。日本酒の未来を拓く、新たな一歩となるだろう。