北海道富良野市と株式会社NTTドコモは7月25日、ゼロカーボンの実現と林業のデジタル化、および環境教育を通した地域社会への貢献を目的とする「持続可能な森づくりに関する基本合意書」を締結した。
富良野市とドコモは、「2050年ゼロカーボンシティの実現」「ドコモグループ2040年ネットゼロ」の実現に向けて、官民共創を進め、森林保全活動を通じて「林業」「教育」の面から新たな価値を創造していく。実施期間は2032年3月31日まで。
ドコモ富良野の森として活用しJクレジット創出に取り組む
ドコモが取り組むのは、大きく分けて3つある。
- 富良野市が保有する市有林を活用したJクレジットの創出
- ドコモが開発を進めているスマート林業機械の検証実施
- 富良野市内の児童に対する環境教育(環境保全活動)の実施
富良野市は、現在836.02ヘクタール(8,360,200平米)の森林を市有林として管理している。ドコモとの取り組みでは、同市保有の森林のうち160.42ヘクタール(1,604,200平米)が対象としている。2032年3月31日(水)までの約8年間、同市保有林を「ドコモ富良野の森」としてJクレジットの創出を目指していく。
Jクレジットとは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度のこと。本制度により創出されたクレジットは、経団連カーボンニュートラル行動計画の目標達成やカーボン・オフセットなど、さまざまな用途に活用できる。詳しくは、Jクレジット 公式ウェブサイトを参照。
また、Jクレジットの創出だけでなく、ドコモが開発しているスマート林業機械による省人化・省力化の検証、富良野市内の児童に対する森のフィールド環境教育活動を実施するなど、脱炭素社会の実現や担い手の減少および高齢化が課題となっている林業の再生、環境教育を通じた健全な森林を未来へ継承するため取り組みも進めていく。
1999年から全国各地でドコモの森づくりを推進
ドコモによる森に関する取り組みは1999年から始まった。自然環境保護活動の一環として、ドコモの森づくりを推進していてドコモグループの写真が現地の森林管理署・管理団体の協力のもと森林整備活動を継続的に実施している。
2023年からは、世の中における生物多様性保全に対する着目度の高まりや、30by30をはじめとする枠組みの拡大などを踏まえ、これまでの森林保護活動から「生物多様性保全の枠組み」へと拡大した。継続的に各地域ならではの生態系保全活動を推し進めることで、生物多様性の保全・回復活動に寄与させることが狙いだ。
ドコモの生物多様性プロジェクトでは、千葉県君津市や東京都八王子市、岐阜県土岐市、沖縄県座間味村など全国のいたるところで取り組みが実施されている。多くは森林を対象にしているが、座間味村の場合は海(そのなかでもサンゴ)をテーマにした取り組みだ。
以前シクチョーソンではトヨタによる森づくりのプロジェクトについて触れた記事を公開したとおり、大きな企業では環境保全等に関する各種プロジェクトが進められている。環境を守る、という面も重要ではあるが、地域活性化という面では雇用の創出・林業等の活性を目指しているケースも多い。それこそ森林を活用していくうえでは、林業を担う人たちの活躍が必須。これはゼロカーボンに取り組む場合でも最重要ポイントである。同時に、雇用を創出することで地域の経済が潤っていく。壮大な話にはなるが、森に関する取り組みをすれば、環境と雇用の両輪を活性化させられる、ということにもなる。
8年という月日によって、ドコモと富良野市はどのように変わっていくのか。いまから楽しみだ。