令和6年能登半島地震により深刻な打撃を受けた能登地域。その復興と地域の介護体制再建を目指し、株式会社TRAPE(本社:大阪市)は、石川県の委託事業「介護助手活用促進業務」において、地域の5つの介護事業所を対象に伴走支援を実施した。
震災で浮き彫りになった人材不足という課題
石川県が進める本事業は、介護現場の人手不足を背景に、資格を必要としない「介護助手」の導入を支援する取り組みだ。とりわけ震災の影響で離職が相次いだ能登地域においては、介護人材の確保が喫緊の課題となっており、TRAPEは珠洲市や輪島市、七尾市など6市町の介護事業所を対象に、業務の棚卸しや導入後の定着支援までを一貫してサポートした。
介護助手の導入で現場の空気が一変
各事業所では、業務の「見える化」と明確な役割分担によって、介護助手が担える業務を切り出し、専門職が本来業務に集中できる体制を整えた。その結果、利用者への個別ケアやレクリエーションの充実、職員間のコミュニケーション活性化など、さまざまな成果が現れた。
特に珠洲市の社会福祉協議会が運営するデイサービスセンターでは、7名の介護助手採用を実現。被災により施設を統合し、限られた環境での運営となったが、間接業務の分担が進んだことで職員の休憩時間が確保され、心身のゆとりも生まれたという。
求職者との新たな接点づくりも
伴走支援では、各地域で求職者向け説明会を開催。震災で職を失った住民が「介護助手」として社会復帰できるきっかけとなった。輪島市の事業所「あての木園」では、説明会のあと独自に募集チラシを展開した結果、計2名の採用に成功。新たな人材確保においても一石を投じる取り組みとなった。
「能登モデル」としての介護体制構築へ
TRAPEの支援は単なる人員補充にとどまらない。業務の再設計と対話による組織づくりを通して、事業所の中に「介護助手を活かす文化」を根付かせることに重点を置いている。そのプロセスにより、職員の育成やチームの一体感、働きやすさが向上し、震災後の厳しい状況にあっても「地域で支え合う介護」の実現に向けた新たな第一歩が踏み出された。
全国展開を見据えて
TRAPEはこれまでも厚生労働省のガイドライン策定や全国セミナーの開催など、介護業界の生産性向上の最前線で取り組みを続けてきた。今回の石川県での実証を通じ、同様の課題を抱える他地域への展開も視野に入れる。
震災復興と人材確保という二重の課題に直面する能登。その現場で生まれた実践知が、全国の介護現場にとっての希望の道筋となるかもしれない。