デジタル庁が提唱する「防災DX」とは? デジタルで何を解決できる?

防災DX
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日本全体でデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する動きが日々進んでいます。デジタルトランスフォーメーションは、デジタル化やIT化とは異なり、新たな事業や価値を創出する概念的な意味合いです。

そのため、単なるデジタルサービスの導入によるデジタル化で終わる話ではなく、さまざまなテクノロジーを駆使し、課題解決や価値提供を目指すことになります。

自然災害の多い日本においては、このDXの概念を防災に取り入れた「防災DX」という言葉が生まれています。この記事では防災DXについて紹介します。

目次

防災DXとは

デジタル庁による防災DXについての資料によれば、以下の3つがまず概要として掲げられています。

1.災害時に被害を迅速に把握し、的確に意思決定し、行動するためには「情報」が不可欠

2.国、地方公共団体、指定公共機関等がデジタル技術の活用によって災害情報を共有し、全体最適な災害対応を実行していくことが重要

3.また、住民等が平時から災害への備えを徹底し、災害時に命を守る行動を取れるよう、個人の状況に応じたきめ細かな支援が重要

そしてデジタル庁国民向けサービスグループは、関係省庁・地方自治体・民間企業等との連携を図りつつ、住民支援のための防災アプリ開発・利活用の促進等と、これを支えるデータ連携基盤の構築等の取り組みをはじめている、と述べています。

つまり、現在日本では災害対策、さらなる防災の一環として「防災DX」という取り組みが始まっている、というわけです。

防災分野における「データ連携基盤」とは

デジタル庁の防災DXの取り組みのうち、キモになっているのは「データ連携基盤」の構築です。

デジタル庁では、住民支援のためのアプリを開発、利活用の促進を図るため、データ連携基盤の設計、構築を進めています。アプリやサービス間でのデータ連携を図ることで、防災アプリなどで「ワンスオンリー」を実現し、ここの住民が災害時に的確な支援を受けられるような環境の構築を目指しています。

ワンスオンリーとは、一度入力した情報を複数回入れる必要がないことを指します。とくに緊急時においては、平時以上に同じ入力を求められるとまどろっこしく感じ、いわゆるユーザビリティの低下につながります。そうなってくると、防災DXの取り組みとしては本末転倒になるため、UIやUXの部分にも重きを置いて取り組んでいる話です。

ワンスオンリーと同時に、アプリやサービス間での連携も重要なポイントです。災害時は「平時」「災害発生」「切迫」「応急や救急」「避難」「復旧・復興」など災害が発生した場所、自身や周りの人の状況、タイミング、時系列によって状況が大きく変化します。

当然、状況に応じて使うアプリやサービスが変化することも踏まえると、デジタル庁で掲げているアプリ・サービス間の連携と入力の二度手間いらずの仕様は、とても的を射ている方針です。

災害時に考えられるアプリやサービス例

データ連携基盤のプロトタイプ実証イメージではマイナンバーカードやマイナポータルを活用し、「氏名」「住所」「性別」「生年月日」の基本4情報と、避難時、応急時などの各フェーズで発生する個人の属性に関する情報の入力と活用をワンスオンリーで実現する考えです。

災害時に使用するアプリやサービス例は以下が挙げられています。

  • 個別避難計画、マイタイムラインの作成
  • 避難準備、避難誘導
  • 避難所入所、安否確認、避難所対処
  • 支援物資、サービス利用登録
  • 生活再建支援制度のプッシュ通知

住民の基本情報とフェーズごとのアプリ活用の内容がデータ連携基盤に集約され、各省庁の対応やライフライン事業者、交通事業者などのインフラへも一挙に連携が取れる仕組みです。

連携の根幹にはマイナンバーが存在しており、2024年5月末に話題になった岸田総理大臣とApple社のCEO ティム・クック氏の会談で「マイナンバーカードの機能をiPhoneに搭載する」と話が挙がったのも、データ連携基盤や防災DXに向けた布石でした。

事実、デジタル庁の本件に関するページにも、マイナンバーカード機能がスマートフォンに搭載されるメリットとして「様々な行政手続や民間サービスのオンライン申込、健康保険証や図書館カードなどの利用のほか、災害時や救急時などの利用など、利用シーンの拡大が進められています」と記載されています。

今後は多くのスマートフォンにマイナンバーカードの機能が搭載される見込みです。

災害時の通信インフラがどうなるか次第

我々住民へのサービスとして、これらの防災DXの取り組みやそれによって生まれるアプリケーションなどが提供されるのは非常に期待がかかります。そして先端テクノロジーの活躍によって、迅速かつ正確な対応やサポートが働いてくれることで、救える命が増えると考えられます。

しかし、デジタル技術においては通信インフラ問題が切っても切れない問題です。

大規模災害が発生した際には、電力の供給が滞るケースも少なくありません。場合によっては通信の基地局が被害を受ける可能性もあります。

また、ネットワーク帯域が使える状況であったとしても、個々のスマートフォン端末の充電容量にも限りがあります。とくに災害時は“超緊急時”以外は電源を切る、省バッテリー運用をすることも多く、電気や電力の運用へ気を回す必要も出てくるのです。

ひとえに防災といっても、デジタル技術を活用するだけがすべてではないのも事実です。先端的な取り組みのうち、デジタル部分とアナログ部分の併用や切り分け、有事の際の緊急インフラの整備なども求められています。

スマートシティなどの取り組みによって、有事の際のインフラも万全になり、住民が安心して暮らせるようになる未来が到来することを願っています。

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