サイボウズ株式会社は2024年12月20日、長崎県西海市の全庁において生成AIと同社のノーコード・ローコードツール「kintone(キントーン)」を活用した取り組みが始まったことを明かした。同時に、年間2,000時間以上の業務時間削減を達成したことを発表している。
生成AIの活用促進の足掛かりを築く
西海市は、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを掲げるなど持続可能な地域づくりを目指し、また、自治体運営においても、持続可能性を実現すべく業務改善に取り組んでいる。これらの状況に対応するために、一般用途向けの生成AIを導入していた。しかし、答弁書作成等の特定分野に特化した回答の生成ができず、職員が自治体業務で十分に活用しきれない状況だった。
そこで、株式会社西海クリエイティブカンパニーが提供する自治体向けAIサービス「ばりぐっどくん」がkintoneを基盤に全庁に導入された。「ばりぐっどくん」は、西海市が公開している過去の情報を追加学習できるため、西海市の業務に合ったより精度の高いアウトプットが可能だ。さらに、kintoneを基盤とすることで利用しやすいUIを実現し、LGWAN-ASPを経由してkintoneにアクセスすることで安全性が高い環境での利用を可能にした。
西海市はこの導入を通して、生成AIの活用促進の足掛かりを築き、ITの知識がなくても誰でも業務改善に必要なアプリを簡単に開発できる、kintoneの特長を生かして全庁でDX推進に取り組む。
西海市におけるkintone×生成AI の活用事例
現在、西海市では株式会社両備システムズが提供する「R-Cloud Proxy for kintone」を利用してkintoneにアクセスし、株式会社西海クリエイティブカンパニーが提供する自治体向けAIサービス「ばりぐっどくん」を活用している。これにより、議会答弁書の作成補助、画像内の文字起こし、翻訳など、さまざまな業務に生成AIを活用している。
たとえば、えば、議会答弁書作成においてkintoneで質問を入力し「回答スタート」ボタンを押すだけで過去の議事録などの公開情報を活用して生成AIが回答を返した。また、kintoneを介すことで生成AIが作成した内容を編集することができるほか、kintoneのコメント欄を活用し他部署のメンバーと情報共有やディスカッションができるなど、更なる業務効率の向上を目指している。
西海市が活用している生成AIの種類と用途は主に以下のとおりだ。
- 「議会答弁 教えてばりぐっどくん」:議会答弁用の原稿を作成する
- 「ノーマル 教えてばりぐっどくん」:汎用的な利用をサポートする
- 「要約ばりぐっどくん」:さまざまな文章の要点をまとめる
- 「翻訳ばりぐっどくん」:外国語と日本語の双方向翻訳をする
- 「音声文字起こしばりぐっどくん」:音声ファイルからテキスト化する
- 「画像文字起こしばりぐっどくん」:紙媒体の情報をテキスト化する
- 「議事録整形ばりぐっどくん」:音声などから文字起こしした情報を、議事録の体裁に整える
年間2,000時間以上の業務削減効果を実感
kintoneを基盤とした生成AIの試験運用開始後2ヶ月で実施した全庁アンケートでは、57%の職員がログインし、それぞれのモデルの合算で年間2,072時間の業務削減効果が確認された。また、アンケートによると約9割の職員がkintoneと生成AIの有効性を実感していると回答し、部署や役職によらず利用が広がっていることが判明した。
こうした効果の実感を得られたことについて、西海市 さいかい力創造部 情報推進課 DX推進班 課長補佐 熊本 英哲氏は次のように話す。
「行政課題や住民ニーズの多様化に対し、人材不足が現実のものとして迫りつつありますが、幸いにも近年のIT技術の目覚ましい進化は、このことに対処するためのひとすじの希望と言えます。DXの重要性がますます高まる現代、持続的にむりなく自治体運営をしていくためには、生成AIやITツールの利用は必須だと考えます。生成AIと聞くとセキュリティ面の懸念が拭えないと思いますが、kintoneはLGWAN-ASPを経由することで自治体でも安全に利用できます。今後も生成AIとkintoneの組み合わせをうまく活用し、自治体業務の変革を推進してまいります」