株式会社Liberaware(以下、Liberaware)は、鉄道環境に対応したドローンを用いた鉄道点検ソリューション「Project SPARROW」を推進している。本プロジェクトでは、ドローンや運航管理システム、デジタルツイン技術を活用し、鉄道施設の維持管理を効率化することを目指している。
このたび、LiberawareはCalTa株式会社(以下、CalTa)、KDDIスマートドローン株式会社(以下、KDDIスマートドローン)とともに、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)、東海旅客鉄道株式会社(JR東海)、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)、九州旅客鉄道株式会社(JR九州)、西武鉄道株式会社(西武鉄道)とそれぞれ協定を締結し、開発を加速させる。
鉄道インフラの老朽化と点検業務の課題
鉄道業界では、保有する鉄道施設の老朽化が進んでおり、安全な運行のためには継続的な点検・保守が欠かせない。しかし、日本では生産年齢人口の減少が進んでおり、効率的な点検が求められている。
また、鉄道現場では「触車」「感電」「墜落」といった労働災害のリスクが高く、点検作業の安全性向上が急務となっている。さらに、近年は自然災害の頻発により、鉄道設備への被害も増加しており、災害発生時には迅速な被害状況の把握と早期の運転再開が求められている。
鉄道は広範囲にわたるインフラであり、設備点検や災害時の被害調査に時間がかかることも課題の一つである。こうした問題を解決するために、ドローンを活用した点検の実用化が検討されている。
Project SPARROWの技術と開発内容
「Project SPARROW」では、鉄道特有の環境に対応できるドローンの開発を進めている。
主な技術開発のポイント
- 列車回避機能の実装
ドローンが鉄道環境に適応できるよう、列車の動きを検知し、自動的に回避できる技術を搭載する。 - デジタルツインプラットフォームの活用
ドローンで収集したデータを活用し、鉄道施設の状況をデジタル空間上で可視化する。 - 自律型ドローンによる点検
人手を介さず自動飛行で巡視や点検を行うことにより、安全性と作業効率を向上させる。
これらの技術を組み合わせることで、鉄道インフラの点検業務をより安全かつ効率的に実施できるようになる。
鉄道事業者との連携内容
Project SPARROWの開発を加速させるため、スタートアップ3社は鉄道事業者と以下の内容で連携する。
- 鉄道事業者が抱える課題や点検業務の知見・ノウハウの提供
- 実証実験を行うためのフィールド(鉄道施設)の提供
この連携により、鉄道会社が持つ運用ノウハウと、スタートアップが持つ最新技術を融合させ、実用化に向けた開発を進めていく。
今後の展望
Project SPARROWの推進により、鉄道点検業務において以下の効果が期待される。
- 高所作業や夜間作業の削減による安全性の向上
- 輸送障害発生時の迅速な対応と復旧時間の短縮
- データの蓄積による設備管理の高度化
特に、人口減少が進む地方の鉄道路線において、ドローンを活用した点検ソリューションは大きな効果を発揮すると考えられる。また、災害発生時においても、ドローンが現地で情報収集を行うことで、より迅速な対応が可能となる。
今後は、スタートアップ企業と鉄道各社が連携を深め、Project SPARROWの実用化に向けた実証実験を進めていく予定だ。
参考情報:
Project SPARROWの詳細については、以下のURLを参照。
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo17_hh_000168.html
また、プロジェクトのコンセプトムービーも公開されている。
YouTubeリンク: https://youtu.be/26q43jd369w
ドローンを活用した鉄道点検の実用化は、鉄道の安全性向上と作業の省力化に貢献するだけでなく、地域鉄道の維持にもつながる。今後の取り組みに注目が集まる。