総務専門誌『月刊総務』を発行する株式会社月刊総務(東京都千代田区)は、全国の企業を対象に「両立支援に関するアンケート調査」を実施し、148件の回答を得た。調査結果からは、育児・介護に関する支援制度の整備が一定程度進んでいる一方で、特に“ビジネスケアラー”への支援が課題として浮き彫りになっている。
「支援に課題あり」が約7割 情報不足や先送りの実態も
働きながら家族の介護を担う「ビジネスケアラー」への支援について、約7割(69.6%)の企業が「とてもある」「ややある」と課題感を示した。背景には、育児サポートと比べて情報量が少なく、制度設計や運用が難しい現実がある。特に、「対象社員がまだいないため対応を先送りにしている」という声が複数上がっており、企業側の準備不足も明らかとなった。
また、「社員ごとに状況が異なるため、柔軟かつ創造的な支援が求められている」という現場の声も寄せられている。

介護支援における「把握の壁」 可能性を十分に把握している企業はわずか6.1%
社員が今後介護と向き合う可能性について、「十分に把握している」と答えた企業はわずか6.1%にとどまり、「あまり把握していない」「全く把握していない」との回答が過半数を占めた。現状では「本人からの申し出」に依存した実態把握が主流であり、企業側が積極的に情報を集める体制はまだ整っていない。

両立支援の制度は整備されつつあるが、文化の醸成は途上
育児・介護を理由にした退職・休職の傾向としては、いずれも女性に多く見られる。特に育児では、女性社員の休職が35.8%、介護では24.3%が確認された。また、雇用形態の変更についても、育児で29.7%、介護で18.9%の企業が対応したと回答した。

制度面では「育児休業制度」(85.8%)や「介護休業制度」(81.8%)の導入が進む一方、文化としての“取りやすさ”には男女差が残る。たとえば育休については、男性の3割以上が「取得しにくい」と回答しており、女性の方が取りやすいと感じている傾向が続いている。

制度運用のハードルに「現場負担増」や「理解不足」
制度導入後の課題として最も多く挙がったのが「現場社員の負担増」。育児では70.9%、介護では68.9%の企業がそう感じている。また、「制度を使う社員が少ないことで不公平感が生まれる」「総務部門からの教育が不足している」「社内の空気感の醸成が難しい」といった声もあった。

改正育介法への対応は分野により差 テレワークは遅れも
2025年の育児・介護休業法改正に向けた準備状況では、項目により大きな差が出た。とくにテレワーク対応については「全く準備していない」との回答が3割を超えており、制度対応が進む育児に比べて、介護分野では後手に回っている傾向が見られる。

総務部門に問われる「制度設計のその先」
今回の調査を通じて、制度の整備だけでは十分でないことが明らかとなった。利用のしやすさ、社内の風土づくり、そして柔軟な運用体制の構築までを含めた“実効性ある支援”が求められている。
株式会社月刊総務の代表取締役・豊田健一氏は「両立支援は個人を守る制度であると同時に、企業の持続性を支える投資。総務部門がその設計と現場との橋渡し役を担うことが重要」と述べている。