「録画した映像を見せられているだけでは……」と思うほど、リアルなシミュレーションが登場した。まずは動画を見てほしい。
完全自動運転車両の開発に取り組むTuring株式会社（チューリング）は8月14日、日本初の自動運転向け生成世界モデル「Terra（テラ）」の開発を発表した。同モデルを運転シミュレータや自動運転システムの一要素として利用することで、より安全かつ効率的な自動運転開発を可能にするという。
リアルな運転シーンを動画として出力可能な生成世界モデル
テラは、現実世界の物理法則や物体間の相互作用など複雑な状況を理解し、リアルな運転シーンを動画として出力可能な生成世界モデルだ。アクセル、ブレーキ、ステアリング等の詳細な運転操作情報を含むチューリング独自の走行データと、オンラインで公開されている走行映像の合計約1,500時間分のデータを学習に使用しており、任意の運転操作を高精度で再現できるという。
特徴は以下の2点があるそうだ。
特徴１：シミュレータとして利用可能
テラを運転シミュレータとして利用することで、現実の運転シーンをリアルに再現し、右左折や突発的な状況への対応などを学習・評価できる。
工事等により路面に障害物がある場合や、運転操作を誤り進路を逸脱した場合など、一般的な運転シーンでは遭遇しづらいエッジケースのシミュレーションにおいて高い効果を期待できるそうだ。そのため、開発の安全性と効率性を向上させられるという。
特徴2：自動運転システムの一要素としての利用が可能
テラを自動運転システムの一要素として利用することで、現在の交通状況を分析し、未来の予測結果を自動運転システムの運転判断に用いることが可能だ。
具体的には、カメラ画像から得られたデータを解析し、周囲の歩行者や他車両の動きなどの詳細な状況を理解・予測したうえで自動運転のメインシステムと連携することで、より高度な運転判断を実現する。
2030年までに完全自動運転の実現を目指す
OpenAIの動画生成AI「Sora」に代表されるように生成AI技術は日々急速に進化している。近年では自動運転分野においてもこれらの技術を応用する試みが一部の最先端企業で始まっている。テラは、このような背景からチューリングが開発した日本初の自動運転向け生成世界モデルだ。
なお、今回公開したモデルはことし4月に開発開始した初期バージョン。発表では「今後さらに学習を進めることで、精度や生成速度を向上させ、安全かつ効率的な自動運転開発をより一層加速させていきます」と意気込みを述べている。
モデルを開発したチューリングは、完全自動運転車両の開発に取り組むスタートアップだ。カメラから取得したデータのみでステアリング、ブレーキ、アクセルなど、運転に必要なすべてをAIが判断するE2E (End-to-End) の自動運転AIを開発している。高度な自動運転を実現する「生成AI」、AIを車載で動かす「半導体」、車両とAIを一体化させる「自動運転システム」の3軸の開発を同時に進めることで、2030年までに完全自動運転を実現することを目指している。
