デジタル庁は8月20日、マイナンバーカード対面確認アプリを公開した。事業者や自治体向けのアプリケーションで、顧客や住民の本人情報の確認に確実性をもたすためのものだ。
マイナンバーカード対面確認アプリとは
マイナンバーカード対面確認アプリは、マイナンバーカードのICチップを読み取り、格納された氏名などの本人情報を確認するためのアプリ。先に記載のとおり、事業者や自治体のスタッフ向けのもので、顧客や住民の本人確認をする際に利用できる。
利用シーン
- 金融機関での取引のための本人確認時
- 携帯電話の契約のための本人確認時
- 中古品の買取のための本人確認時
- 自治体窓口での本人確認時
- その他、マイナンバーカードの対面での本人確認が必要なとき
主な機能
- マイナンバーカードに格納された情報の読み取り・表示機能
- 履歴機能
確認できる情報
- 顔写真(白黒)
- 氏名
- 住所
- 生年月日
- 性別
- 有効期限
- セキュリティコード
スマホを使ってNFCで読み取り電波が届かない環境でも利用可能
マイナンバーカード対面確認アプリは電波が届かない場所でも使用できる。そのため、事業者や自治体のスタッフが確認する場所や状況に左右されない。
また、氏名や顔写真などの個人を特定できる情報は保存されない仕様だ。ただし、カードの有効期限(年)およびセキュリティコードは履歴確認のために保存される。
本アプリはiPhone(iOS)およびAndroidを搭載したスマートフォン等で使える。iOSであればApple A12 Bionic以降のチップを搭載した端末(2024年7月時点で、iPhone8, iPhone Xは非対応)、Androidはカメラを搭載している端末であれば対応している。
国民を詐欺から守るための対策 マイナカード偽造問題
マイナンバーカードの普及率は70%を超える。マイナンバーカードがあれば、戸籍謄本や住民票など多くの証明書を発行できる。また、普及はまだこれから、という段階ではあるものの、マイナンバーカードを健康保険証としても利用可能だ。
以前は「普通自動車免許」が本人確認書類において最も使い勝手がいいとする人も少なくなかったが、最近ではマイナンバーカードのほうが利便性が高いという声が増えている。
ただ、多くの個人情報を引き出せるマイナンバーカードは、偽造される被害が発生しているのも事実だ。
ことし5月、大阪・八尾市議 松田憲幸氏のスマートフォンが乗っ取られた被害は大きな話題を呼んだ。同氏のスマートフォンが突然圏外になり、携帯会社に連絡すると「機種変更されている」と言われ発覚したニュースだ。知らぬ間にクレジットカード情報も悪用されるなどで、被害額は約240万円。他誌の報道による、偽造マイナンバーカードの作成自体は容易であることも話題になった。
こうした偽造や被害が多発した背景もあり、ことし6月に総理大臣官邸で第39回犯罪対策閣僚会議が実施され、「国民を詐欺から守るための総合対策」が取りまとめられた。総合対策では、マイナンバーカードに関連した施策として、マイナンバーカードのICチップを活用し、確実に本人を確認し、犯罪を防止する以下の要綱が盛り込まれた。
- 携帯電話や電話転送サービスの契約時の本人確認において、本人確認書類の券面の偽変造による不正契約が相次いでいることから、犯罪収益移転防止法、携帯電話不正利用防止法に基づく非対面の本人確認手法を、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化し、対面においても、マイナンバーカード等のICチップ情報の読み取りを義務付ける。
- マッチングアプリアカウントを悪用し、利用者を信用させるなどして、詐欺被害につながっている事案が確認されていることから、マッチングアプリ事業者に対し、アカウントの開設時に公的個人認証サービス等による、より厳密な本人確認を実施するなど、自主的な不適正利用対策に取り組むよう働き掛ける。
今回発表されたマイナンバーカード対面確認アプリはこれらの経緯から、事業者や自治体が確実に本人確認するために生まれた。
余談というほどではないが、デジタル庁の公式X(旧Twitter)では、8月19日にマイナ保険証の利用とマイナンバーカードを常に携帯してほしいという投稿があった。
ちなみに、マイナ保険証を活用した「マイナ救急」は神奈川県・横須賀市で実証実験がスタートとなる。マイナンバーカードを活用して、傷病者を救急搬送するにあたって必要な情報を入手し、救急業務の迅速化や円滑化を図ることが狙いだ。