地域包括ケアシステムで医療や介護はどう変わる? 2025年問題とは?

地域包括ケアシステム
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日本の人口は1億2,495万人いるものの、そのうち65歳以上の人口は3,624万人で割合にすると29%です。内閣府の試算では、2070年には2.6人にひとりが65歳以上で、4人にひとりが75歳以上になる見込みです。

高齢化が進むと医療や介護などの需要がさらに増すと考えられています。とくに、団塊の世代が75歳以上になる2025年以降が大きなターニングポイントとされており、どうすれば快適に暮らせるか、快適に過ごすためには何をすればいいのかが問われています。

そのなかで厚生労働省は「地域包括ケアシステム」を提唱しています。この記事では、地域包括ケアシステムについて紹介します。

目次

地域包括ケアシステムとは

地域包括ケアシステムとは、団塊の世代が75歳以上になる2025年を目途に、重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるように、住まい・介護・予防・生活支援が一体的に提供される仕組みのことです。

高齢者のなかでも“認知症高齢者”の増加も予想されるため、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が重要だと厚生労働省は述べています。

同時に厚生労働省では地域包括ケアシステムについて、保険者である市町村や都道府県が地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要だとしています。

地域包括ケアシステムを構成する5つの要素

地域包括ケアシステムは以下の5つの要素によって構成されています。

  • 介護
  • 医療
  • 介護予防
  • 住まい
  • 生活支援

厚生労働省では、本人や家族がどのように心構えをもつかという地域生活を継続する基礎を「皿」と捉え、生活の基盤になる住まいを「植木鉢」、そのなかに満たされた「土」を介護予防や生活支援、専門的なサービスの医療・看護、介護・リハビリテーション、保健・福祉を葉として考えています。

これらの要素に加え、自助、互助、共助、公助の4つの「助」が支える役目を担っています。

東京都・世田谷区での地域包括ケアシステムの事例

地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みは各地で進められています。そのなかでも厚生労働省が公開している東京都・世田谷区での事例を紹介します。

概況

人口は約86万人。世田谷区は23区でも人口規模が最大の自治体です。都内でも有数の住宅地であり、都市公園や商業施設、私立学校などがあります。

高齢者の割合は、区内人口比で65歳以上が19.29%、75歳以上は9.77%です。

世田谷区が取り組んだ背景

区が独自で全高齢者実態把握調査を実施したところ、ひとり暮らし高齢者や、高齢者のみの世帯合計がおよそ半数を超えていることが明らかになりました。また、住民からも「身近な地域での健康づくりや介護予防の重要性」などについて多くの意見が寄せられたことが背景にあります。

そこで以下の地域包括ケアシステムを構成する5つの要素に“世田谷区らしさ”を取り入れることで、地域包括ケアシステムの構築を進めました。

  1. 医療 ⇒世田谷区医療連携推進協議会による在宅医療推進の取組
  2. 介護 ⇒定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用・事業展開の推進
  3. 予防 ⇒社会参加を通じた介護予防による高齢者の居場所と出番の創出
  4. 住まい⇒認知症高齢者GHや社会資源等を有効活用した都市型軽費老人ホーム等の整備
  5. 生活支援⇒住民団体・社会福祉協議会主体の地域活動の推進 …等

世田谷区での取り組み内容

上述の地域包括ケアシステムを構成する5つの要素ごとに各取り組みが進められています。

医療

■在宅医療の充実に向けた連携体制づくり

・連絡会などによる福祉と医療の顔の見える関係づくり

・ケアマネタイムや医療と介護の連携シートによる福祉と医療の情報の共有化

介護

■安心できる高齢者の在宅生活の実現

・モデル事業実施の実績を活かし、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を平成24年4月から区内全域で提供できる体制を確保し、計画的に整備を推進

・「24時間つながるサービス」など新サービスの普及に向けて、利用者や介護事業者等へパンフレットや事例集を配布

予防

■高齢者の居場所と出番の創出

・地域包括支援センターによる社会資源を活用した高齢者の居場所づくり(喫茶店や大学などを活用)

・買い物支援など中高年層ボランティアの活動促進

・リハ職等の専門職に夜訪問で生活機能低下に対応

住まい

■社会資源の有効活用による低所得高齢者等の居住の場の確保

・区立高齢者センターを民営化し、デイサービスやショートステイに併設した都市型軽費老人ホームをオープン

・都営住宅建て替え跡地に整備される特養への都市型軽費老人ホームの併設

生活支援

■公的サービス以外の地域活動・資源の活用

・地域資源をうまく活用した地域活動の拠点整備

・社協主体の生活支援サービスの提供や住民ボランティアの立ち上げ・運営支援

日本各地では世田谷区のほかにも事例があがっており、

千葉県柏市:市が主体になり、医師会をはじめさまざまな職種と連携を深めて在宅医療などを推進
熊本県上天草市:高齢化率50%にもかかわらず介護サービス事業者が存在しなかった同市では、地区内で11名のヘルパーを要請し、介護予防事業に従事してもらっている
埼玉県川越市:認知症に特化した支援を打ち出し、「認知症家族介護教室」(3回1コース)の開催や、「オレンジカフェ」と称する交流会を月に1〜2回開催

など、各地の課題に基づいて多種多様な取り組みがあるのが特徴的です。

地域包括ケアシステムの課題と考え方

基本的に地域包括ケアシステムは、その地域ごとに「何が必要なのか」「それに対して何をすれば解決できるのか」といったほかのまちづくりの解決フローと同じです。

ただ、直接的に人・・・とくに高齢者に対する課題であり、これまでもさまざまな事例があるため、比較的課題に対するアンサーは出しやすい部類ではあります。

しかし、地域包括ケアシステムに限っては、解決策は見えているものの、実現が物理的に難しいケースが存在します。その理由は、人手不足によるものです。

たとえば、24時間体制で見守る介護・看護サービスを提供すれば、在宅医療の実現は大幅に近づくのですが、そのサービスを提供する側の人材がいなければ成立しません。とくに、医療や介護などの分野は専門的なサービスであるため、一般生活者が気軽に介入できるわけではないという点も難しいポイントです。

また、住民側からも医療や介護などへの要望は非常に多く集まると考えられるにもかかわらず、それを実現できないと不満が募ってしまい、満足度の低下、ひいては人口の減少にもつながりかねない問題です。

国や行政による財政的な支援は見込める可能性があったとしても、実際に実行する人を確保できなければ地域包括ケアシステムの本当の実現が難しいのです。

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