国立大学法人岡山大学は9月1日、学術研究院環境生命自然科学学域の野上保之教授とDS(データサイエンス)部が参画する一般社団法人Hiroshima Web3 協会の事業が経済産業省「Web3.0・ブロックチェーンを活用したデジタル公共財等構築実証事業」に採択されたことを発表した。
この事業は、Web3.0・ブロックチェーン技術の社会実装・社会受容を進めるため、産業や地域の課題解決に資する公共性の高いテーマを設定し、これらの技術を活用したデジタル公共財等の構築に係る実証を支援することを目的としている。
Hiroshima Web3 協会は、島根県海士町および広島県三原市において関係人口創出に資する分散型自律組織(DAO)を構築・実証し、得られたノウハウ等をもとにWeb3.0型地方創生・関係人口創出事業のためのガイドラインを策定することを提案し、「テーマ(5):Web3.0型地方創生・関係人口創出事業のためのガイドライン策定に関する業務」に採択された。
ガイドラインや事例集の策定では以下の2点の要素が含まれている。
- 自治体がベンダーに発注する際に必要な調整事項を、専門知識が無い職員でも説明可能なように「要件定義」レベルで整理
- 地域外の人材の行動変容に繋げるうえでの、インセンティブ設計に関する成果・ノウハウ・課題を実例ベースで整理
この背景には、現状では地域のDAO等におけるインセンティブ設計は方法論が明確になっておらず、くわえて自治体関係者のリテラシー不足により、担当者レベルでWeb3.0に関する事業実施の意向があったとしても、地域内でメリット・リスクについての説明が十分にできていない実状があった。
というのも、人口減少下にくわえ、東京圏への転入超過も依然継続しているなか、Web3.0を用いた、関係人口の創出や都市部から地方への人材還流・副業人材の活用等が地域経済を支える人材・財源の確保手法として注目されていたからだ。
しかし、実際に地域内外の人材の行動変容・地域課題解決に繋げていくには、地域内外の人材に対し、分散型自律組織(DAO)や非代替性トークン(NFT)によって行動を変えるインセンティブが作れるか、その効果が既存の仕組みからのスイッチングコストを超えられるか、という2点が課題だった。
今後、野上教授と10人を超えるDS部学生・卒業生がHiroshima Web3 協会、自治体および他大学とともにDAOの構築・運営の実証事業の実施とそれを通じた地方創生・関係人口創出事業のためのガイドライン・事例集等の策定に取り組む。岡山大学は、「地域課題解決に向け、学生を起点とするイノベーション創出活動を推進しており、今回の採択事業をモデルとし、それらの活動の一層の増加を図っていく」とした。