株式会社マイナビは9月27日、「企業におけるビジネスケアラー支援 実態調査」を実施し、その結果を発表した。
本稿ではプレスリリースに記載の内容をお届けしていく。
★ ★ ★
【調査概要】
調査期間:2024年7月12日(金)~7月14日(日)
調査主体: 株式会社マイナビ
調査対象: 民間企業で人事・労務業務に携わる20歳以上
有効回答数(サンプル数): 618人
調査機関:マクロミル
「育児・介護休業法」の改正内容について理解している企業の割合は約半数にとどまる
民間企業の人事・労務業務担当者に、2025年4月に施行される「育児・介護休業法」の改正を知っているかを聞くと、認知度は9割以上となったが、改正内容を理解している割合は54.9%にとどまった。
また改正される育児と介護に関する3項目(※)について自社の制度が整備されているかを聞いたところ、「介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度強化」が「本公布の前から制度化されていた(26.5%)」と「本公布に対応し制度化(22.3%)」は合計48.8%となり、「子の年齢に応じた柔軟な働き方の拡充」における同回答の合計59.0%に比べると、ビジネスケアラー支援の取り組みは対応に遅れが出ていることが明らかになった。
※:「育児・介護休業法」改正内容 ①子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充 ②育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化 ③介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
「支援制度の見直しが必要」と「制度がなく、早急に取り組むべき」で半数
「ビジネスケアラー」への支援制度について企業の対応状況を聞いたところ、「既に支援制度があり内容も充分である」と答えたのは11.5%にとどまった。
一方で、「支援制度があるが見直しが必要(24.4%)」および「制度は整備されておらず、早急に対策に取り組むべきだと思う(25.6%)」の回答が半数を占め、現状に問題意識を持っており、支援制度が十分ではないと感じている様子がうかがえた。
現在「介護を行う社員の状況に合わせ、勤務時間の調整ができる」企業は45.5%で最多
「ビジネスケアラー」への支援制度や取り組み状況について、具体的な内容を聞いたところ、最も多かったのは「介護を行う社員の状況に合わせ、勤務時間の調整ができる(フレックス・時短勤務等)」(45.5%)、次いで「介護休暇・介護休業の取得の流れを社内に周知している」(41.9%)、「介護を行う社員の状況に合わせ、柔軟にテレワーク・リモートワークができる」(38.5%)となった。
「多様な働き方」へ対応した制度が、介護を行う社員への支援にも役立つと考えられる。
「ビジネスケアラー」への支援を促進するきっかけは「介護を行う社員が増えた場合」が最多
「ビジネスケアラー」支援を促進するきっかけとなるのは「介護を行う社員が増えた場合」が43.0%で最多、次いで「従業員ニーズが高ければ」(35.8%)、「介護離職が増えた場合」(31.9%)となった。
団塊の世代が75歳以上となり、国民の5人に1人が後期高齢者という超高齢化社会を迎える、いわゆる「2025年問題」が目前に迫るなか、課題が顕在化してから取り組みたいと考える企業が多い現状がわかった。
介護は従業員が会社に状況を伝えづらい点が指摘されているが、「ビジネスケアラー」と企業の温度差は改善すべき点であり、まずは社員の実態を把握することが一歩目の課題解決につながるといえる。
調査担当者コメント「まずは経営者や管理職が社員・部下の実態を把握」
調査対象者であるウエルネス推進事業本部 ケア事業支援室 副室長 佐藤 公光子氏は次のようにコメントしている。
経済産業省による試算では、「仕事と介護の両立」・「介護離職」による経済損失は2030年に9.2兆円と予測されており、介護を行う社員支援の強化指針が明示されています。
本調査で明らかになったのは、ビジネスケアラー支援は出産・育児支援に比べて遅れているという現状です。背景にあるのは、介護を行う社員の状況を把握することが難しいためだと考えられます。
「ビジネスケアラー」支援については「制度があればよい」のではなく、一人ひとりの状況に合わせた周囲の理解やサポートが何よりも欠かせないため、まずは経営者や管理職が社員・部下の実態を把握しやすい環境を作りながら、これらの課題に向き合っていく必要があると考えています。