外国人観光客をめぐる自治体職員の期待と悩み 自治体側が担当者に考慮するべきこととは

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株式会社JTBコミュニケーションデザインは9月26日、全国の自治体でインバウンド(訪日外国人旅行)業務に携わる職員515人に実施したアンケート調査の結果を発表した。

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アンケート結果には同社目線での「まとめと提言」が記載されており、今後の課題と展望についてまとめられていた。この部分が非常におもしろいため、プレスリリースの内容をそのままお届けする。

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目次

インバウンドは、地域への経済効果が期待される重要課題

インバウンドに関しては、2023年3月に「観光立国推進基本計画」が閣議決定されておりその中には、訪日外国人旅行消費額の早期5兆円達成、2025年までに訪日外国人旅行者数3,188万人(2019年水準)超えの目標が設定されています。

2023年3月31日閣議決定「観光立国推進基本計画」より引用本調査においてもインバウンドに携わる地方自治体職員の半数が、インバウンド施策によって、観光名所や地元飲食店・宿泊施設などの“経済的なメリット”が期待できると回答しました。この期待は、特に都市圏以外の自治体職員の回答に強く示され、都市圏以外でのインバウンドへの期待が感じられました。

雇用増加や人口増加について期待するという回答は経済メリットよりも少ない割合ではありましたが、2~3割の肯定回答があり、自治体職員の3人に1人、あるいは4人に1人は、インバウンドが雇用増加や住民数の増加につながるという期待を持っている可能性が推測できます。

インバウンドは地域への経済効果や今後の地域活性化、地方創生のための重要課題と言えるでしょう。

外国語対応とメディア活用がインバウンド促進のキーワード

効果的だったインバウンド施策として上位に挙がったのは、「外国語対応のウェブサイトや観光案内所の設置」「オンライン広告やSNSを活用した情報発信」「外国人旅行者向けのキャンペーンや割引サービスの提供」でした。これらの施策により、訪日旅行の可能性のある潜在顧客にアピールして認知度を上げ、キャンペーンやサービスなどで一層の動機づけを図ることが重要であると考えられます。

調査では地域の歴史的名所、イベント・祭り、街並みや商店街などがインバウンド旅行者にアピールする観光スポットとして挙げられましたが、これらについても外国語対応およびメディア活用によって広く告知していくことが求められます。例えば、歴史的名所を外国語対応の説明をつけてオンラインで掲載したり、外国人旅行者が地域で楽しんでいる様子を個人情報の保護を行った上でSNSで投稿するなどの方法が考えられます。

もちろんこうしたアピールが可能となる実際のイベントやお祭りの開催なども重要な施策となるでしょう。リアルとオンライン、メディア等を複合的に活用することが今後のインバウンド促進に求められていると言えます。

インフラや体制の整備とともに、施策の効果を測定し費用対効果を高める

インバウンド施策実施における課題として、インフラや交通アクセス、インバウンド旅行者を受け入れる体制が挙げられました。さらに近年ではオーバーツーリズムの問題も指摘されており、これらの課題への対策は、訪日外国人旅行者だけでなく地域住民の安全や日常生活を守るという観点からも改善が必須と考えられます。

費用対効果や効果測定の方法がわからないという課題も挙げられました。効果測定を行っているという回答は56%あり、測定内容も「訪日外客の数」が最も多い一方で、詳細な効果測定、「サイト訪問から宿泊につながった数」などの割合は少ない結果でした。地方自治体の現場では効果が明確には把握できない状況で、インバウンド促進を試行錯誤しながら行っているケースもあると推測されます。限られた予算の中で効果的に施策を行うためにも、それぞれの施策の効果をできるだけ精緻に測定し、次の施策に活かすことが重要と言えます。

必要なデータとして挙げられたのは「どのSNSがインバウンド訪日につながったかの解析」「実施した施策別のインバウンド訪日客の数」「訪日客の出身国別の行き先や滞在日数」などでした。これらは、インバウンド施策に実際に携わる回答者の実感が表れている調査結果であると思われます。どのメディア、どの施策がどのような国からの訪日につながり、日本のどの地域に来て、何日滞在してくれるのかといった詳細な測定をできることが望まれています。

DX推進により課題を解決する

上述のようにオンラインを活用したインバウンド施策を企画し実施する上でも、また施策の効果を測定する上でもITに関する知識や技術は欠かせないと考えられ、地方自治体組織においてもDX推進は必須と思われます。

本調査ではDXに関しても回答を求めましたが、インバウンド事業を行う上でDXに課題を感じているという回答の割合は92%と多く、課題の内容としては「DXの知識や経験がある人材がいないこと」「DXによって何を達成するかが明確になっていないこと」が多く挙げられました。

都市圏以外では「十分な予算がないこと」も上位に挙がり、限られた予算の中で最大限の効果が発揮できることを行っていく必要があると思われます。自治体組織内にDX人材を採用する、あるいは外部組織と連携したり部分的に業務をアウトソーシングすることも検討の俎上にあると考えられます。

公務員(自治体職員)のモチベーションに寄り添った施策を

回答者にインバウンド業務に取り組む際の心情をたずねたところ、「インバウンドは日本や世界にとって意義のあるテーマだと思う」という回答が6割以上あり、モチベーションの要素である仕事の意義を感じながら業務に当たっている様子が示されました。一方で「インバウンド業務はむずかしい」という回答も6割近くあり、「新しい知識や考え方が身についた」も6割ありました。これらの回答から、業務に未知の部分や新しい内容が含まれることがモチベーションを高める効果を持ちつつも、その分業務の難しさや困難な事象も生じていることが推測されます。

このような事から、担当者のモチベーションを考慮した対応が求められます。例えば、知見を深める研修や教育の提供、それぞれが身につけた知識や問題意識を定期的に共有し、解決のヒントを得る勉強会の場づくり、また組織内に随時相談できる人や部門があることも重要です。

ただ、インバウンドならではの専門的な知識や先述した効果測定、DXに関する知識については、地方自治体の現場の組織内だけで解決することがむずかしい場合も考えられます。そのため、地方自治体同士で合同の対策を講じたり、外部の専門知識を有する組織と連携するなど柔軟に考えていく必要があると思われます。

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