デジタル庁・河野太郎大臣「デジタルに変えなきゃいけないニーズが日本では広まらなかった」

河野太郎氏 / 自治体公共Week
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「これまでの日本におけるデジタル化・デジタル改革は、コストセンターへの投資だと捉えられてしまった」。デジタル庁 デジタル大臣の河野太郎氏は、これまでの日本のデジタル化およびDX推進の潮流に対して、その実態について振り返った。

2024年6月26日(水)から6月28日(金)までの3日間、「自治体・公共Week2024」が東京ビッグサイトにて開催された。本イベントの基調講演「デジタル改革の現状と今後の方向性」では、デジタル庁 デジタル大臣 河野太郎氏が登壇した。

河野氏が語るこれまでのデジタル化・デジタル改革とは…。この記事では講演内容のレポートをお届けする。なお、この講演は、行政や自治体の職員や関係者を対象にしているものだ。

目次

世の中を“回す”ためのメリハリ

まず河野氏は、日本における課題とテクノロジーとの向き合い方について話した。

「中核都市にだけ人が集まり、ほかの地域は過疎化する。日本全体で人口減少、高齢化、そして過疎化が進んでいる。

これからそれぞれの地域で人と人が寄り添いあって“あったかい”社会を作っていくと考えているなら、『去年やっていたことを今年もやります。来年もおそらく同じことをやるでしょう』と言っていたら、どこかで行き詰まるのははっきりしている。去年やってきたことと同じことを今年もやるのは無理がある。来年にはもっと無理が出てくる。

そのため、人間は人間がやらなければいけないものに集中し、人間がやらなくてもいいものはAIやロボット、コンピューターに任せる。このようなメリハリを利かせた取り組みを進めなければ、世の中が回らなくなる」

なぜ日本では今現在、急激にデジタル化やDX推進などと騒がれるようになったのか。この現状に至った理由について河野氏は「日本は20世紀におけるアナログ技術では世界の最先端を走っていた。そのため、デジタルに変えなきゃいけないというニーズが日本全体で(しばらくの間)あまり広がらなかったから」と見解を述べた。

デジタル技術によって変化する、これまでの”当たり前”

続けて河野氏は、中東にあるヨルダンでの難民キャンプでの取り組みを紹介した。ヨルダンはシリアやイラク、パレスチナなどから難民が国境を超えて入ってきている。そのため、ヨルダンのいろんな場所に難民キャンプができている。

難民キャンプでは、配給としてパンなどを難民に配っている。ただ、一日に何十人も難民キャンプに人が訪れるため、アナログ(紙など)での配給切符による管理では手が回らない。管理する人が何人いても、このままでは対応しきれなくなってしまう。

そこでヨルダンでは虹彩認証技術を活用し、人手不足や管理機能の効率化に取り組んでいる。難民の瞳の虹彩情報から各種データを連携させているのだ。

この認証技術によって配給の管理はもちろん、難民は瞳を認証させるだけでスーパーマーケットでの買い物も可能になっているという。瞳の虹彩が読み取られると、難民それぞれのデータが集約されているデータベースに接続し、各手続きや購入処理を実現している仕組みだ。

テクノロジーの発達は、上記のような利便性の向上だけでなく、言わずもがな「シェアの獲得」にもつながっている。

「世の中のいたるところで、デジタル技術を使ったまったく新しいサービスが登場している。たとえばAirbnb。ホテル(業界)がデジタル化するまでにAirbnbが市場を席巻した。タクシー業界ではUberがシェアを取っている。デジタル技術によって“これまでの当たり前”が変化している」(河野氏)

日本ではどうなのか。それこそ、AirbnbやUber等のサービスが日本に入ってこようとした際には、「〇〇法があってできません」「××の業種の方が困ります」などの意見が出てきてしまう。河野氏は「日本では革新的なサービスをそのまま受け入れるのではなく、今あるものを“微調整”することが繰り返されてきた」と話す。

デジタル化やDXはコストカットのためではない

決して日本はこれまで一切のデジタル化やDXを進められていない、という話ではない。河野氏が話したのは日本と諸外国ではデジタル化などに対する「考え方・捉え方」が異なるということだ。

諸外国では、デジタル技術は利益や売上を向上させるプロフィットセンターへの投資だと捉えられる傾向があるという。デジタル技術を使って自分たちのビジネスをどのように変えるのか、ビジネスモデルの変革にデジタル技術をどのように使うか、という考え方が多いそうだ。

一方で日本では、デジタル技術は、たとえば業務効率化や工数削減などコストダウン、コストカットの取り組みが多かった。つまり、コストセンターへの投資だ。当然、コストの削減には貢献するものの、売上向上につながるわけではない。

河野氏はこれからの日本において必要なことを次のようにまとめた。

「日本と諸外国での捉え方の違いが10年、20年と続いてしまった。その結果、デジタル化やDXの進み具合が世界と日本とで大きく差が生まれてしまった。

現状と捉え方を何とか切り替えて、日本でもDXを進めることで、さまざまな生産性をどこまで上げられるかチャレンジしていかなければいけない」

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シクチョーソンでは、デジタル庁 河野太郎大臣の講演をはじめ、「自治体・公共Week2024」で実施された各種セミナーや出展ブースのレポートなどを公開中。気になる取り組み、参考にしたいサービスなどを紹介しているのであわせてチェックしてください。

自治体・公共Week2024 レポート記事一覧

展示会概要
展示会名自治体・公共Week2024
会期:2024年6月26日(水)~2024年6月28日(金)
会場:東京ビッグサイト 西展示棟
※本展は業界関係者のための商談展です。一般の方はご入場できません。

河野太郎氏 / 自治体公共Week

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