インタセクト・コミュニケーションズ株式会社は10月28日、同社が実施した「海外からの訪日客の安全に関する意識や要望の調査」の結果を発表した。この調査は、中国の北京市、上海市、広州市などの10都市に在住する20歳以上の中国人を対象としている。
調査の目的は、訪日経験のない外国人が現時点での災害等に関する認識・危機対応能力はどれだけあるのか、また、現行のツール等を活用することにより、外国人が混乱なく対応できるのか等の現在地を把握することだという。
本稿では同社のプレスリリースの内容を転載してお届けする。調査の概要は以下にまとめた。
調査概要
調査手法:インターネット調査
調査対象:中国の10都市(北京市、天津市、上海市、南京市、蘇州市、杭州市、広州市、シンセン市、成都市、重慶市)在住の20歳以上の中国人
調査期間:2024年10月6日~10月8日
有効回答数:601名
災害について
中国人にとっての日本の災害への不安に関して、訪日経験有無によって違いがあり、「訪日経験有りの人」は「訪日経験無しの人」より全体的に不安が少ない、という結果となりました。「訪日経験有りの人」は、日本の治安や交通インフラなどの安全性を体感しているため、この結果につながっていると考えられます。
地震に関して
地震への不安について、全体(訪日経験有り、無しの合算)として最も多かった回答は「やや不安」で36.4%でした。「非常に不安」と回答した人は25.8%で2番目に多く(「やや不安」「非常に不安」を合わせて62.2%)、「安心」「非常に安心」と回答した人は16.3%でした。
訪日経験有りでみると、「やや不安」が43.4%と多くの割合を占めた一方で、「安心」「非常に安心」と回答した人は24.5%と2番目に多い割合となりました。対照的に訪日経験無しの人では、「やや不安」が30.2%、「非常に不安」が28.3%という結果でしたが、最も多い回答は「発生する恐れのある所は訪問しない」で32.7%でした。地震に関しては、「ここが安全」と言われる場所を判別するのは難しいため、「訪日経験無し」だからこその回答と言えるでしょう。
津波に関して
全体の数字としては、地震と同様に「やや不安」と回答した人が最も多く32.6%でした。2番目に多かった回答が「発生する恐れのある所は訪問しない」で24.8%。発生する場所が海岸付近など限られているため、このように考えられているようです。東日本大震災がまだ記憶に新しいため、「やや不安」「非常に不安」という回答は54.7%という結果でした。
災害時の交通機関の遅延(鉄道・飛行機など)
世界一、時間に正確と言われる鉄道を持つ日本の交通機関。訪日経験有りの人は災害時においても「安心」(47.2%)、「非常に安心」(7.0%)と半数以上が安心だと感じている結果となりました。「やや不安」(32.9%)、「非常に不安」(8.0%)と不安を感じる人は4割程度にとどまっています。
災害時の情報収集について
災害時の情報収集方法に関して、訪日経験の有無別に関わらず、日本政府観光局などの公式による情報や中国国内のSNS(中国版インスタグラムのRED、中国版XのWEIBOなど)が主な情報収集方法になっています。
訪日経験有りの人は情報収集先を「日本政府観光局などのWEBサイト」と回答した人が67.5%で最も多く、一方で訪日経験無しの人が「同WEBサイト」を情報収集先と回答した人は53.7%と13.8%の差がありました。SNSに関しては、訪日経験有りの人は「RED」が57.3%、「WEIBO」が54.2%。
一方、訪日経験なしの人は「RED」が46.9%、「WEIBO」が45.7%でした。訪日経験の有無に関わらず、テレビ(訪日有り:32.5%、訪日無し:41.3%)やラジオ(訪日有り:11.5%、訪日無し:10.8%)よりインターネットサービスを利用した情報収集をより重視しています。
希望する情報を受け取る手段について
希望の情報を受け取る手段として、多くの支持が集まったのは訪日経験有無問わず、「Wechatミニプログラム」と「WEBサイト」で、それらを通じて「訪日観光客向けの災害情報」を受け取りたい、という回答が半数以上を占めました。
「Wechat」は全体が57.6%(訪日経験有り:61.2%、訪日経験無し:54.3%)。「WEBサイト」が全体として53.9%(訪日有り:50.4%、訪日無し:57.1%)となっています。
中国国内のSNS(RED、WEIBO)も多くの人が「希望の情報を受け取る手段」に選び、「RED」は全体で42.3%(訪日経験有り:48.3%、訪日経験無し:36.8%)、「WEIBO」は全体で44.3%(訪日経験有り:50.7%、訪日経験無し:38.4%)でした。
「テレビ」と回答した人は全体で37.8%とやや低い回答率でしたが、訪日経験無しは40.0%(訪日経験有りは35.3%)という結果でした。
また、「緊急事態の際に希望する情報内容」に関しては、「近くの避難所への行き方」という回答が全体で87.9%(訪日経験有り:89.2%、訪日経験無し:86.7%)で、ほとんどの人が近くの避難所に関する情報を必要としていることがわかりました。さらに、「近くの避難所の内容」が全体で67.4%(訪日経験有り:68.2%、訪日経験無し:66.7%)、「医療機関の情報」が全体で64.1%(訪日経験有り:62.2%、訪日経験無し:65.7%)でした。
訪日観光客向けのサービスの知名度
観光庁が監修した外国人旅行者向け災害時情報提供アプリ「Safety Tips」を知っている人は全体で73.8%と高い知名度でした。そのうち「知っていて使ったことがある」は24.8%、「知っているが使ったことはない」は49.0%でした。日本政府観光局の運営するWEIBO「安心访日Japan Safe Travel」に関しても全体の72.1%が知っていると回答しました(「知っていて使ったことがある:22.4%」、「知っているが使ったことはない:49.7%」でした。
その他、日本政府観光局 WEB「Japan Safe Travel Information」を知っている訪日経験者は69.9%、Japan Visitor Hotline JNTOコールセンターを知っている訪日経験者は62.6%と、さまざまな訪日観光客向けのサービスに関しては、どれも高い知名度でした。
また、訪日・日本人向け共通の「救急/消防119番」「警察110番」は94.4%でした。