11月26日の“いいふろの日”から、京都市北区にあった廃業した銭湯「明治湯」をリニューアルするプロジェクトが始まった。手掛けるのは京都在住の若手実業家たち。彼らによって京都銭湯甦生プロジェクト委員会が発足した。
プロジェクトのコンセプトは「地域と、育む、銭湯」。これはまちづくりそのものだという。
銭湯の聖地だった
京都市内の銭湯は、銭湯の聖地として文化を築き上げていった。しかし、経営者の高齢化や新型コロナウイルス感染症の影響によって利用者は減少。近年は廃業が相次いでいる。今回プロジェクトで手掛ける明治湯もそのひとつ。
明治湯は昭和30年ごろに開業した。昭和っぽさが漂う雰囲気で、ローカルな哀愁を感じられ、番頭さんはお客様と気さくな会話で盛り上がる。長期にわたって地元から愛され、地元の景観の一部として存在し続けていた。そんな明治湯は、施設の老朽化などによって閉店。令和3年のことだ。
実業家だけでなく学生も参画
こうした状況に対し、日頃から京都の町に家を建てる不動産会社・株式会社ハイトラストの社長 坂口 祐司氏が京都の銭湯業界に甦生の狼煙を上げた。坂口氏の熱意に集まった銭湯とサウナを愛してやまない京都を中心に活躍する若手実業家集団が、甦生プロジェクトに動き出し「京都銭湯甦生プロジェクト委員会」を発足した。
プロジェクトには、坂口氏が制作実行委員長およびプロダクトオーナーとして着任。サウナ設計は株式会社Replus 代表取締役・和田 孝明氏、アートディレクターはearthcampus株式会社 代表取締役・佐藤 涼介氏、建築設計デザインはエントデザイン株式会社 代表取締役・半谷 喜久氏が務める。また、企画スタッフアシスタントには、京都市立芸術大学 学生・京都芸術デザイン専門学校 学生など多数の学生が参画するそうだ。
明治湯→明司湯 2025年春オープン予定
単なる銭湯のリニューアルではなく、目指すのはまちづくりそのものだ。
京都のコミュニティには銭湯が欠かせない存在だった。老若男女問わず利用する銭湯には、おじさんと子どもが楽しく話したり、笑ったり、叱ったり。こうした光景を自然に演出するものが銭湯だった。
銭湯の良さを残しつつ、新しさを調和させる。この先もずっと町に残したくなるサービスやコミュニティを提供できる銭湯、いわば“銭湯2.0”を目指すのがこのプロジェクトの本質だ。そしてこの京都ならではのローカルカルチャーは、京都に数多く訪れる観光客にも伝えていき、京都の価値を高めていく。銭湯を軸とした地域活性化だ。
明治湯は「明司湯」に名称を変更し、2025年春にオープン予定。「人、まち、建築 全てを育む銭湯 明司湯を目指します」とプレスリリースで述べられている。