株式会社Specteeは12月2日、AIリアルタイム防災・危機管理サービス「Spectee Pro」が海外市場へ本格展開することを発表した。また、独立行政法人国際協力機構(以下「JICA」)の「中小企業・SDGsビジネス支援事業」を活用し、フィリピン政府及び関連機関に80ライセンスの導入が決定したことも発表された。
社会全体で災害への体制を高める「レジリエンスの向上」が急務
近年、気候変動の影響により世界各地で自然災害が増加し、これに伴う経済損失は約58兆円にのぼると推計されている。こうした災害の激甚化に対応するため、社会全体で災害への体制を高める「レジリエンスの向上」が急務となっている。
災害大国である日本は、防災分野において高い技術やノウハウを有している。土木やハードウェア技術などの伝統的な強みにくわえ、近年では、AIやIoTなどのデジタル技術との融合が進み、災害対応能力のさらなる高度化が進んでいる。
Specteeは、JICAの「中小企業・SDGsビジネス支援事業」に採択され、これまでフィリピンにおけるフィージビリティスタディや実証実験を重ね、現地のニーズに応じたソリューションの開発を進めてきた。これらの成果を結集し、国内多くの企業・自治体・官公庁などが使う「Spectee Pro」を世界中で利用できるようバージョンアップし、日本発の防災ソリューションとして、海外市場への本格展開をスタートさせる。
世界各地で増加する自然災害やあらゆる危機への対応に貢献するために、まずは東南アジアからスタートするという。
フィリピン政府および関連機関への80ライセンスの導入が決定
フィリピンにおける同社のサービスは既に運用段階に入っており、JICA「中小企業・SDGsビジネス支援事業」のもと普及化実証を展開する。具体的には、フィリピン政府および関連機関への80ライセンスの導入が決定しており、今後はユーザーからのフィードバックをもとに追加開発し、ローカライゼーションをさらに進めていく。
フィリピンは日本と同様、台風や地震など自然災害が多発する「災害大国」であり、災害対策への関心が高い国だ。同社が“第一の進出先”としてフィリピンを選んだ理由は「デジタル・ネイティブな若い世代が多いことから、デジタル技術を活用した防災ソリューションの普及に適した市場と考えているため」だとプレスリリースで述べられている。
AIリアルタイム防災・危機管理サービス「Spectee Pro」
同社が提供する「Spectee Pro」は、SNSや気象情報、自動車のプローブデータ、全国1万台以上の道路・河川カメラなどを解析し、世界で発生する災害や危機を、迅速に収集、可視化、予測できるAIリアルタイム防災・危機管理サービスだ。
利用者(対象者)に必要な情報をリアルタイムに通知し、独自開発のAI技術やマップ機能などを活用して、正確かつ整理された情報を瞬時に入手できる。そのため、災害対応やBCPを目的に、国内では民間企業・自治体を中心に利用されている。
同社の取締役COO 海外事業責任者 根来 諭氏は、「『Spectee Pro』は、比較的安価に、そしてクラウドで提供されるために特別な初期投資もなくすぐに導入できるため、災害に多く見舞われる国々の対応能力を飛躍的に向上させられる」と述べ、フィリピンでの導入事例をきっかけに、東南アジア全体への展開を加速させ、さらに世界各国の防災・危機管理の課題解決に貢献していくことを示した。