東京都で、救急隊の業務効率化を目指した新たな取り組みが始まる。TXP Medicalと東京消防庁は、救急搬送時の情報管理をより迅速かつ正確に行うため、生成AIを活用した救急医療情報システムの実証検証を開始する。これは「東京消防庁 INNOVATION PROJECT」の一環として行われ、日本初の試みとなる。
救急活動の課題とAIによる解決策
東京都の救急出動件数は年々増加しており、令和5年には918,311件に達した。これは1日平均2,516件、約34秒に1回のペースで救急出動が発生している計算になる。増加する救急需要に対応するため、東京消防庁は2021年からDX推進を進め、2023年には「東京消防庁 INNOVATION PROJECT」を立ち上げ、デジタル技術の導入を進めてきた。
今回の実証検証では、TXP Medicalが提供する「NSER mobile」に生成AIを搭載。救急隊員が現場で傷病者情報を音声入力すると、AIが自動で構造化し、救急活動記録を作成する。これにより、以下の課題解決が期待されている。
- 情報入力の負担軽減:両手がふさがった状況でも音声入力で記録可能。
- データの精度向上:医療用語の誤入力や表記揺れをAIが自動修正。
- 迅速な病院搬送:病院への情報共有がスムーズになり、受け入れ決定までの時間を短縮。
実証検証の概要
期間:2024年11月〜2025年4月
- 2024年11月〜12月:シナリオを用いたデモンストレーション
- 2025年1月以降:実際の救急搬送での試験運用
実施内容
- 想定された救急搬送シナリオに基づき、AIによる音声入力の精度やデータ構造化の処理速度を検証。
- 実際の救急搬送の場面で新システムを試験運用し、業務効率向上の効果を測定。
期待される効果
- 傷病者データ共有の迅速化:搬送受け入れ先病院の決定時間を短縮。
- 救急隊と病院の通話時間削減:必要情報をデジタル化し、口頭説明の負担を軽減。
- 搬送の適正化:傷病者データを活用し、最適な病院への搬送を実現。
- 救急隊員の負担軽減:報告書作成の時間を短縮し、現場での対応に集中できる。
- 搬送データの分析強化:蓄積データを活用し、救急搬送のプロセス改善を図る。
「NSER mobile」の特徴
「NSER mobile」は、救急車と医療機関をリアルタイムでつなぐ情報共有システムだ。救急車内のタブレットで傷病者情報を入力し、そのデータを医療機関と即時共有できる。
- 音声入力の活用:救急隊員が音声で入力した情報を、生成AIが解析・整理。
- データの構造化:AIが自動的に傷病者情報を分類し、必要なフォーマットに変換。
- 多機能プラットフォーム:バイタルサイン、病歴、画像・動画データなどを統合管理。
- 病院側の受け入れ準備の効率化:事前に詳細な情報を受け取ることで、迅速な治療開始が可能。
今後の展望
今回の実証検証を通じ、救急医療におけるAI技術の有効性を評価し、今後の全国的な導入の可能性を探る。DXを活用した救急活動の効率化が進めば、傷病者への迅速な対応が可能となり、救急医療の質が大きく向上することが期待される。
東京消防庁とTXP Medicalの取り組みは、今後の救急医療の未来を大きく変えるかもしれない。最新情報は、東京消防庁やTXP Medicalの公式サイトで随時発信される予定だ。