全国の地方自治体と金融機関に業務システムを提供してきた株式会社RKKCS(熊本県熊本市)は、2025年4月1日より、地方自治体職員の業務効率化を支援する生成AI型マニュアルシステム「おとなりさん」の提供を開始した。
「おとなりさん」は、定期的な人事異動や法改正対応などで煩雑化する自治体業務において、生成AIが職員の“おとなり”にいてくれるような安心感でサポートする、チャット対応型のマニュアルシステム。資料検索や引き継ぎ業務にかかる負担を軽減し、自治体職員の生産性向上を目指す。
会話感覚で質問、ピンポイント検索も可能な「3つの主要機能」
「おとなりさん」の特徴は、単なるFAQツールではなく、自然言語による“対話型”で利用できる点にある。主な機能は以下の3つだ。
1. ベテラン職員のように応えてくれる「質問回答機能」
利用者は、まるで先輩職員に質問するような感覚で、「住民票を発行したときのエラー対応」などの実務的な内容をチャットで問い合わせることができる。生成AIは、各自治体ごとに取り込んだ独自マニュアルや法令資料を参照しながら、わかりやすい言葉で正確な回答を提示する。
さらに、複数の言語モデルからの選択が可能で、条例や業務運用のローカルルールにも対応。回答に対する評価機能により、継続的な学習と精度向上が図られる。
2. 中身まで検索できる「キーワード検索機能」
ファイル名だけでなく、マニュアルや資料の本文からもキーワードを検索できる点も大きな特長。例えば、「住民 職権修正」と入力すれば、関連する運用ルールが記載された資料の該当箇所を即座に提示。過去の質問履歴や学習データも活用するため、情報検索の効率が飛躍的に向上する。
3. 議事録や条例の“要点だけ”を抽出する「文章要約機能」
膨大なテキストを読む負担を減らすための「文章要約機能」では、コピー&ペーストやアップロードで入力した長文の文書を、AIが簡潔に要約。議会の議事録や長大な条例文なども短時間で理解できるため、多忙な現場にとって大きな支援となる。
現場課題に寄り添ったシステム開発、自治体から他分野への展開も視野
「おとなりさん」は、RKKCSがこれまで300以上の自治体に行政システムを提供してきた経験をもとに、実務の課題感に即して開発されたもの。マニュアル提供や法改正説明会、電話対応といった従来の支援手法に加え、より迅速で効率的なサポート手段として誕生した。
今後は、自治体業務だけでなく、取り込む文書を変えることで他業種・他分野での活用も視野に入れており、随時バージョンアップが予定されている。
「人材不足」「複雑化」「制度改正」…自治体現場の課題にAIが寄り添う
慢性的な人材不足や制度変更による業務負荷増が叫ばれる自治体業務において、「おとなりさん」は、AIによる業務ナレッジの定着・継承という点でも大きな期待が寄せられている。
まるで職場にいつでも相談できる“ベテランの隣人”がいるような存在。それが「おとなりさん」だ。デジタルの力で地方行政に寄り添い、誰もが働きやすい職場づくりを支援する取り組みに、今後も注目が集まりそうだ。