在日ドイツ商工会議所(AHK Japan)は、2025年1月下旬から2月中旬にかけて実施した第10回在日ドイツ企業景況調査「日本におけるドイツビジネス2025」の結果を発表した。地政学的な不確実性が高まる中で、95%の在日ドイツ企業が日本の経済的安定性を評価しており、日本市場への信頼と期待の高さが浮き彫りとなった。
「安定した日本」で成長するドイツ企業——82%が利益を計上
調査に参加した企業のうち、2024年に利益を計上した企業は82%、そのうち23%は税引前利益率10%超を達成。ドイツ企業にとって、日本は「収益性が高く、信頼性のある安定市場」として重要な拠点であり続けている。
実際に、調査企業の64%が過去10年で売上を伸ばし、26%が売上を3倍以上に拡大。2025年と2026年にかけては、売上と利益率の更なる向上を見込む声が多く、成長見通しは明るい。
拡大する日独の連携、第三国市場での協業も加速
注目すべきは、第三国市場における日独企業の協業が加速している点だ。調査では63%のドイツ企業が第三国市場で日本企業と共同事業を実施しており、地域別ではASEAN(68%)、欧州(55%)、中国(44%)、北米(40%)と多岐にわたる。
「日本とドイツは自動車やハイテク分野で競争関係にある一方、水素技術やインダストリー4.0といった分野では協力が深まっている」と、KPMGドイツのアンドレアス・グルンツ氏は指摘する。
米国新政権の影響に対する見方は分かれる
2024年の米国大統領選挙に関連して、ドイツ企業の22%がトランプ再選は日本事業に好影響をもたらすと予想。一方で39%は悪影響を懸念しており、依然として慎重な姿勢も見られる。とはいえ、2017年調査時と比べて10ポイント上昇しており、日米戦略的パートナーシップに対する信頼が背景にある。
日本市場で求められる「長期的な視点」と「人材確保」
今回の調査では、在日ドイツ企業が直面する主な課題として、優秀な人材の確保(82%)と為替リスク(77%)が挙げられた。特に、少子高齢化と円安が継続する中での経営戦略の見直しが求められている。
それでも多くの企業は、長期的な視点での関係構築が日本市場での成功の鍵だと認識している。シュールマン専務理事は「日本市場は100メートル走ではなくマラソン。信頼関係を築くには時間がかかるが、その分だけ成果も大きい」と語る。
投資と雇用の拡大も加速
2025年には31%が投資を増やす予定で、52%が従業員の追加採用を計画。この傾向は2026年にはさらに強まり、それぞれ46%、59%に増加すると見込まれている。ニアショアリングの潮流と地域統合の進展により、日本が再び製造・生産拠点としての注目を集めていることも背景にある。
「グローバル・サウス」で注目される日本の投資戦略
また、日独両国が重視するグローバル・サウス市場においても、日本の存在感は際立っている。2023年時点で日本の投資額はドイツの1.5倍に相当する約6,380億ドル。ドイツ企業が日本企業との協業を通じて、これらの新興市場へ展開する動きも加速している。
調査概要
調査名:在日ドイツ企業景況調査「日本におけるドイツビジネス2025」
実施期間:2025年1月31日〜2月16日
実施主体:在日ドイツ商工会議所、KPMGドイツ
回答数:148社(在日ドイツ系企業475社のうち、回答率31%)
URL:https://japan.ahk.de/ja