金沢大学 先端観光科学研究所は8月2日、同研究所のホームページで令和6年能登半島地震による写真付き被害状況マップを一般公開した。能登の観光復興ビジョンを考えるうえでの有用な情報提供となることが期待される。
令和6年能登半島地震による能登地域の観光資源の被害状況調査が金沢大学融合研究域融合科学系/先端観光科学研究所の川澄厚志准教授をはじめとする共同研究グループによって実施された。
本共同研究グループでは、令和6年2月9日から5ヵ月にわたり、珠洲市・輪島市・能登町・穴水町・七尾市・志賀町にて計17回の現地調査を実施し、計218ヵ所の能登の観光資源の被害状況を把握した。その結果、能登の観光資源の被害は71.1%で認められた一方で、全壊や半壊の被害を受けているにもかかわらず、人流データが増加している観光資源があることもわかった。
調査対象とする観光資源は、各自治体等の公式ホームページおよび観光パンフレットに記載されている資源や石川県指定の文化財とした。本調査にあたって、まずこれら218件の観光資源を「自然系資源」「人文系資源(歴史的資源)」「人文系資源(近代・現代的資源)」「人文系資源(その他)」「複合資源」の5つに分類した。次に、目視による被害評価にくわえ、施設の外観・内観の被害状況、物品の散乱状況、アクセス状況(道路、駐車場、看板の被害状況)について調査した。
また文化財だけでなく酒蔵も調査の対象にしている。酒造りの技術は日本四大杜氏である「能登杜氏」に代表される能登の伝統文化の中でも重要で、さらには「酒蔵ツーリズム」のような産業ツーリズムの観点でも重要な観光資源だからという。
本研究グループは今後、得られた被害状況データに人流データを掛け合わせることで、観光資源ごとの需要人流の増減の把握や震災前後の観光入込客数の把握を進めていく。さらにこれらの知見を集積し、今後の震災に活用できるように学術論文としてまとめる予定だ。
本研究および調査に参加したメンバーは、以下の通り(敬称略)。
川澄厚志、丸谷耕太、森崎裕磨、佐無田光(以上、金沢大学融合科学研究域/先端観光科学研究所)
菊地直樹(金沢大学先端観光科学研究所)
古山周太郎(早稲田大学)
藪長千乃(東洋大学)
宮島良明(北海学園大学)
中谷陽(金沢大学人間社会学域地域創造学類4年)
菊地由太郎、栗原共喜、松山怜乃、古田汐音、中田貴水(以上、金沢大学融合学域先導学類4年)
金沢大学先端観光科学研究所は2023年に金沢大学に設置された研究所だ。文理医融合の学際的アプローチによって、観光に関わる行動、サービス、政策・制度を科学的に解析し、観光による未来変革を研究することによって、観光の促進と地域の発展に寄与することを目的としている。