地域医療とは 現状の課題は? なぜ医師のキャリア選択肢として注目されている?

地域医療
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日本では少子化と高齢化が進み、さらには人口構造が大きく変化しています。

来る2025年においては、およそ800万人いる「団塊の世代」が後期高齢者である75歳を迎え、国民の 4人にひとりが後期高齢者の「超高齢化社会」を迎えることになります。その一方で、社会保険や社会福祉などを支える社会保障を支える労働人口は減少していくため、医療分野などの整備や改善・改修が求められています。

厚生労働省をはじめとする省庁は、この状況に対し「地域医療構想」を唱え、国や各自治体での対応を進めています。この記事では、地域医療についてわかりやすく紹介します。

目次

地域医療とは

地域医療構想とは、厚生労働省が「中長期的な人口構造や地域の医療ニーズの質・量の変化を見据え、医療機関の機能分化・連携を進め、良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制の確保を目的とするもの」としています。

厚生労働省が本件を制定した狙いは、人口構造の変化に合わせ、医療に求められるモノやコト、ひいては医療体制そのものを改善していくためです。あわせて、地域を運営する自治体と、医療機関の相互の連携が重要だともしています。

主体となるのは、医療に関わる医師や医療従事者です。しかし、当然ながら医療機関の方々だけでなく、先述した行政や、そのほかさまざまな職種の方が協力して取り組んでいく必要があります。

たとえば、住民に対しての疾病の予防・それに関わる活動や、在宅療養への支援、妊婦からの相談受付、子育て支援などが代表的な例です。医療機関の方が中心ではあるものの、各手配や手続きを取りまとめるのは行政で、その取りまとめるためのサービスはさまざまな企業が手がけているケースがあります。

つまり、地域医療とは、医療機関だけでなく行政や多くの人を含む各地域全体で住民の健康を支えることです。地域に住む人が安心して暮らせることを目指しています。

地域医療に関する現状の課題

地域医療は一朝一夕で実現できることではありません。実現には解決するべき課題があります。

医師不足

厚生労働省によれば、2022年末時点での医師の総数は343,275人と発表されています。男性医師は262,136人(76.4%)で、女性医師は81,139人(23.6%)です。

実は、医師の総数は2020年と2022年を比較すると、増加率は1.1%で3,652人増えています。

医師の数が増えているのにもかかわらず、医師不足と言われることには理由があります。

まず、人口あたりの医師の数が諸外国に比べて低い点。これは、人口1,000人に対して医師の数が2.5人でOECD(経済協力開発機構)に属する38ヵ国のうち、日本は下から6番目です(本資料の発表は2021年12月時点)。

つまり、医師の数は増えているには増えているものの、まだまだ伸び率が足りていない、という意味でもあります。

都道府県別の医師の数

同じく厚生労働省が発表した「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によれば、都道府県別にみた人口10万人に対しての医師の数にも大きな差があります。

国内全体では人口10万対医師数は262.1人です。都道府県別でみると、最も多いのは徳島県で335.7人、次いで高知県335.2人、京都府334.3人です。最も少ないのは埼玉県の180.2人、次点で茨城県202.0人、その次が千葉県209.0人と明かされました。

ちなみに、小児科・小児科専門医の人口対比に至っては、全国平均が122.6人に対し、最も多いのは鳥取県の148.5人にもかかわらず、千葉県は66.1人であり、大きな差が生じています。

このように、地域ごとに医師の数が大きく異なる点も、地域医療を整備するうえで解決しなければいけない点です。

病院の経営難

上述した医師の数にも通ずる部分で、病院の経営が難しいという課題も発生しています。

病院の利用者が増えれば、病院の収益も上がりますが、とくに僻地といわれるエリアにおいては病院に対する需要が低くなりやすく、費用に見合った収入を得ることが難しい現状です。収支が安定しない以上、医師の雇用も難しくなり、結果的に医師不足に直結します。

医師が不足することで、住民は満足なサービスを受けづらくなるので、地域医療の活性化に向けての解決策が求められます。すでにこの問題はいくつかの方法で解決を図っており、高度な救急処置をする病院、長期入院患者に対して適切なケア特化の病院など「病院ごとの役割の細分化」や、複数の医療機関を統合するなどの取り組みです。

ただし、複数の病院の統合は経営課題を解決できる可能性はあるものの、統廃合によって患者は通いづらくなるなどの新たな課題も発生します。とはいえ、通いやすさに関してはシャトルバスの運行などの送迎サービスを地域や行政が連携して取り組むケースもあります。

地域医療の実現に取り組む事例 課題を多く抱えている沖縄県での取り組み

すでに地域医療の実現に向けた都道府県レベルでの取り組みは進められています。厚生労働省のサイトに掲載されている数ある事例のなかから、沖縄県での取り組みを紹介します。

沖縄県での課題

人口構造の変化により、高齢者人口は全国で最も高い伸び率です。一方で、県民の健康状態は悪化の傾向にあるとされ、男性の平均寿命は全国平均を下回る状況です。なかでも、働き盛り世代の死亡率は、多くの年齢階級別で全国ワースト5位以内で、数ある課題のなかでも解決すべきポイントのひとつです。

沖縄県での地域医療構想実現に向けた取り組み

これらの課題をもとに、沖縄県では4つの観点から地域医療の実現および現状の課題解決に向けて取り組みを進めています。

1.不足する病床機能の整備

特に不足している回復期機能への転換促進のため、転換に必要な施設や整備などを支援し、不足している病床機能の解消を目指しています。回復期とは、急性治療を受け、病状が安定し始めたあとの状態を指します。

実際、回復期病床は2015年は1,533床に対し、2022年は2,332床で、約800床増加しています。

2.病床機能の必要量に関する調査の実施

疾病予防や早期の発見・治療、そして切れ目のない医療を提供できる体制構築により、死亡率と平均寿命の改善に取り組んでいます。

まずは、病床の必要量や急性期から在宅復帰に至る医療提供体制の現状と、課題などについてを調査している状態です。

3.在宅医療の推進

慢性期医療の地域医療を支える体制構築のため、在宅医療に関するデータの分析、在宅医療や介護の連携推進事業、在宅歯科診療を提供するための多職種との連携事業、訪問介護総合センターの設置など、在宅医療の推進に向けた取り組みも進めています。

4.急性期医療の提供体制の充実

北部医療圏の急性期医療の充実および安定化を図る観点から、県立北部病院と北部地区医師会病院を統合し、公立沖縄北部医療センターの整備に取り組んでいます。

沖縄県の北部は、沖縄本島の約半分の面積を占める広大な地域で、離島や過疎地域が多く存在しています。人口は年々減少傾向にもかかわらず、高齢化率は上昇。2040年には高齢化率が34.3%に達する見込みです。また、北部地域のひとりあたりの所得は全国最下位のひとりあたりの県民所得と比べてもなお低い状況でした。

さらに、依然として無医地区が存在していることや、慢性的な医師不足による診療制限・診療休止が発生していることもあるため、先述した医療センターの整備が進められているのです。

公立沖縄北部医療センターは令和10年度の開院を目指しています。同時に、現在は財源確保はもちろんのこと、医療従事者の新規採用など、人員の拡充も進めている真っ最中です。

医師のキャリア選択肢のひとつとしても地域医療は注目

地域医療の実現のためには、現場で働く医師をいかに集めるかも重要な部分です。

とくに、ますます高齢化が進む社会に向けて、いち早く在宅医療などを身に着けられる環境であるとして、キャリア形成のひとつとしてピックアップされつつあります。また、キャリア紹介サイトなどでは、都心よりも地方で働く医師のほうが年収が高くなるケースもあると記しているものもありました。

しかし、現状までの地域医療・・・とくに過疎地域での現場は都市部に比べて労働条件の問題視もあり、いずれにしても環境整備、人員拡充問題の早期解決が求められている実状です。

また、“腕”を磨きたい医師にとっては、いわゆる“師”となる存在を見つけづらいという課題もあるため、働く医師個人が抱える課題解決も同時に考えなければいけません。

地域医療には課題が山積みですが、これからの日本を支えるうえでは必要不可欠な取り組みのひとつです。そして、生活する我々住民にとっても影響する問題です。

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