SDGsをはじめ、日本では以前から個人や企業に対して環境への配慮が求められています。生活するうえで大きな変化があったのは、無料のレジ袋が急速に減ったことです。買い物バッグやエコバッグなどを持参するか、有料のレジ袋を購入するかどうか選択するようになりました。
環境問題に対しては個人や企業だけでなく、都道府県や市区町村などの行政および自治体も取り組みを進めています。そのなかでも、多くの自治体が表明しているのが「ゼロカーボンシティ宣言」です。
この記事では、ゼロカーボンシティ宣言について紹介します。
ゼロカーボンシティ宣言とは?
日本国内で進められている環境施策の一つに、「ゼロカーボンシティ宣言」があります。これは、各自治体が2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにすることを目標に掲げる取り組みです。環境省が提唱し、多くの自治体がこれに賛同しています。
現在、日本全国の多くの自治体がゼロカーボンシティ宣言を表明しており、環境負荷の少ない社会を目指した施策が進められています。しかし、唯一この宣言を表明していない県があります。それが茨城県です。
この記事では、ゼロカーボンシティ宣言の概要と、茨城県がこの宣言を表明していない理由について詳しく解説します。
ゼロカーボンシティ宣言の現状
2024年3月29日時点で、ゼロカーボンシティ宣言を表明した自治体は全国で1,078箇所にのぼります。日本の市町村数は1,718箇所あるため、約63%の自治体がこの取り組みを推進していることになります。
ゼロカーボンシティを宣言した自治体の内訳
- 46都道府県
- 603市
- 22特別区
- 352町
- 55村
これらの自治体は「2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにする」ことを目標に掲げています。
なぜ茨城県はゼロカーボンシティ宣言を表明していないのか?
ゼロカーボンシティ宣言を表明していない唯一の県である茨城県ですが、それは環境施策に取り組んでいないからではありません。実際、茨城県も省エネルギー対策や再生可能エネルギーの導入、技術開発の加速化といった施策を進めています。
茨城県の公式見解
茨城県がゼロカーボンシティ宣言を表明しない理由については、2023年11月に県の公式サイトで住民の質問に対する回答が発表されました。
県の見解を要約すると、以下のようになります。
- 茨城県の温室効果ガス排出量の約6割が産業部門からのものであり、これは全国平均の約2倍に相当する。
- 鉄鋼業や石油化学工業など、現在の技術では化石燃料から完全に脱却することが困難な業種が主要産業として存在している。
- カーボンニュートラルを実現するには、産業構造の転換や革新的技術の開発が必要だが、現時点でその具体的な道筋を描くことが困難。
- したがって、ゼロカーボンシティ宣言は現時点では表明できない。
茨城県のゼロカーボンへの取り組み
茨城県としてはゼロカーボンへの取り組みを完全に否定しているわけではなく、むしろ省エネ対策や再生可能エネルギーの導入には積極的に取り組んでいます。
また、県としての宣言は行っていませんが、水戸市や常陸太田市、石岡市、かすみがうら市など、多くの市町村がゼロカーボンシティ宣言を表明し、独自の取り組みを推進しています。
ゼロカーボンシティ宣言のメリットと地域活性化への影響
ゼロカーボンシティを宣言する自治体が増えているのには、いくつかの理由があります。その中でも、特に地域活性化につながるメリットが大きいとされています。
1. 環境省の支援を受けられる
ゼロカーボンシティ宣言を表明した自治体には、環境省が温室効果ガス排出量の現状把握、計画策定、地域の合意形成といった支援を提供します。これにより、持続可能な環境施策を進めるための専門知識や資源を活用できます。
2. 地域経済の活性化
ゼロカーボンを目指すことで、再生可能エネルギーの導入が進み、新たな雇用創出につながります。特に、太陽光発電や風力発電の推進により、地域産業の発展が期待できます。
さらに、災害時のエネルギー供給の安定化にも寄与し、地域住民の安全確保にもつながると考えられています。
まとめ
ゼロカーボンシティ宣言は、多くの自治体で進められている重要な環境施策ですが、茨城県はその独自の産業構造から、現時点では表明を見送っています。しかし、県としてもカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを進めており、市町村単位ではすでに多くの自治体がゼロカーボンシティ宣言を表明しています。
今後、技術革新や産業構造の変革が進むことで、茨城県もゼロカーボンシティ宣言を表明する可能性は十分にあります。日本全体のカーボンニュートラル達成のためには、各地域の特性を考慮した持続可能な施策が求められています。