神奈川県は9月13日、県内産業の振興に資するロボット開発プロジェクトを4件採択したことを発表した。同県では「さがみロボット産業特区」の取り組みにより、生活支援ロボットの実用化や普及・活用を推進している。
採択プロジェクトと、その事業者は以下のとおり。
| プロジェクト名称 | 代表事業者 | 共同事業者 |
| 理学療法士向けソフトウェア搭載型歩行リハビリ用ウェアラブルロボットの開発 | 株式会社INOMER | – |
| 半自動小便器清掃ロボットの開発 | 株式会社小川優機製作所 | 株式会社JR東日本環境アクセス |
| 食事介助ロボットの開発 | ダブル技研株式会社 | – |
| 狭隘（きょうあい）空間点検ロボットの開発 | 株式会社ワークロボティクス | – |
理学療法士向けソフトウェア搭載型歩行リハビリ用ウェアラブルロボットの開発
株式会社INOMER
理学療法士が脳卒中片まひ者へ行う介助を再現する着るロボットと、リハビリテーションの実施、管理を行うロボットシステムを開発します。
このロボットシステムは、着脱が容易で、歩行リハビリテーションにおいて重要なポイントの一つである股関節への適切な介入をボタン一つで実現し、立脚期の正しい姿勢を維持しつつ股関節の伸展を促進します。
これにより、理学療法士の介助の再現性を担保しつつ、リハビリテーションの実施状況、ロボットから得られるセンサデータを定量的に分析、記録、管理することで理学療法士の技術の蓄積 及び 歩行リハビリテーション全体の質の向上にもつなげます。
半自動小便器清掃ロボットの開発
株式会社小川優機製作所（代表）、株式会社JR 東日本環境アクセス（共同）
エッセンシャルワーカーの作業負担を軽減し、働き方改革を推進するため、鉄道や道路、公共施設のトイレ清掃に特化した半自動ロボットを開発します。
アフターコロナやインバウンド需要の増加による人手不足が深刻化している中、エッセンシャルワーカーの労働力を補完することを目指します。
特に、負担の大きい便器内側の清掃作業に専念する設計で、ロボットの移動や設置は手押し台車で行う設計です。これにより、シンプルな機器構成を維持しつつ、狭い公共トイレ内でもスムーズに動作し、効率的に清掃作業を行うことが可能です。また、複雑な自動化システムを避けることで、導入コストを抑えつつ、作業の効率化と安全性の向上を図ります。今後の労働環境の変化にも柔軟に対応できる設計となっており 、将来的なニーズにも応えることが期待されます。
食事介助ロボットの開発
ダブル技研株式会社
上肢機能障害や麻痺により自力での食事が難しい方々のために、食事を支援するロボットを開発します。
このロボットは、利用者が自立して食事を楽しめるように設計されており、食事の満足感を損なうことなく、 QOL （生活の質）の向上を目指しています。
ロボットは通常の食事テーブルに簡単に設置でき、身体機能に合わせたスイッチ操作で動作します。手や足、音声による操作が可能で、利用者は自分のペースで 4 つのお皿から食べたいものを選ぶことができます。
また、このシステムは介護者や施設、病院における食事介助の負担を軽減することを目的としています。食事介助にかかる時間や労力を削減し、介護者が他のケアに集中できるよう支援します。ロボットによるサポートは、介護の質を維持しながら、利用者と介護者双方にとってより良い生活環境を提供します。
狭隘（きょうあい）空間点検ロボットの開発
株式会社ワークロボティクス
人が入れない狭隘部の点検に特化した革新的なロボットを開発します。建設され てから 50 年以上が経過した建築物が今後も増加する中で、狭隘部を安全に長時間点検できるロボットは 、 現時点では 存在しません。
このロボットは、耐環境性能と走破性能を高めた小型の 6 クローラ型の設計です。前後のサブクローラアームを活用し、 15cm 程度の障害物を乗り越え、凹凸のある地形でもスムーズに旋回できる高い走破性を備えます。さらに、ズームカメラやサーマルカメラを搭載し、カメラの向きを自由に調整できる機構を組み込むことで、点検作業の効率と精度を向上させます。
このロボットにより、人が入れない狭隘部の点検が安全かつ効率的に行えるようになり、老朽化する建築物の問題を早期に発見し、適切なメンテナンスを行うことで、建物の寿命延長と災害リスク の低減に貢献します。
採択された企業に対しては、ロボット実装促進センターが、生活支援ロボットの開発に要する経費について、１件あたり最大で1,500万円（税込）を支援する。
プロジェクトの募集概要では、3年以内の実用化（令和9年3月31日まで）、神奈川県内でのロボットの実装が見込める斬新なロボット開発プロジェクトであることが条件とされていた。
