トヨタ自動車が“歩道”を作ろうとしている理由

ウッドチップ舗装
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トヨタが道路を作ろうとしている。しかも、車道ではなく“歩道”を。

トヨタ自動車は誰もが知る日本を代表する自動車メーカーだ。トヨタのような大企業になれば自動車製造以外にも大変さまざまな事業に取り組んでいる。

しかし、数ある事業のなかでもトヨタが歩道を作ろうとしているのには驚きだ。現在は実証段階であるものの、この歩道を作るプロジェクトには自動車メーカーとしての狙いや、環境問題へのトヨタとしての向き合い方が随所に盛り込まれている。

目次

トヨタが作るのは木材を使った舗装路

今回トヨタが実証実験を進めているのは、自然素材のウッドチップ舗装ソリューションというもの。間伐材ウッドチップ舗装協会と協力し、ウッドチップを使った舗装路を作る取り組みだ。

舗装路にウッドチップを使用することで、防草や断熱、ヒートアイランド対策などの効果を備える。

素材となるウッドチップは、間伐材や剪定木、流木などの未利用材から作られる。製造時には海水由来の酸化マグネシウムを配合することで、木材の腐食を抑制。また、使用後は破砕することで土壌の改良材としても使えるため、廃棄物はゼロを実現する。

現在は実証段階ではあるものの、歩道(非車道)用途を想定した「滑り」「衝撃吸収・弾力性」「強度」「環境負荷」などの基本性能評価は良好だ。くわえて、使用状況に応じて補修が必要になる場合もあるが、ウッドチップという性質上、該当のウッドチップ自体を継ぎ足すことで誰でも補修できそうだ。

自動車メーカーが考えるゼロカーボンへの取り組み

ではなぜ、トヨタがウッドチップで歩道を作ることにしたのか。

自動車はCO2を排出する。これは揺るがない事実だ。産業として製造する際にも発生するだけでなく、我々が自動車を利用する際にもCO2は排出される(EV自動車は除く)。

2015年のパリ協定をきっかけに、日本では「ゼロカーボンシティ宣言」が環境省を中心に提唱されている。これは、2050年に二酸化炭素の排出をゼロにすることを目指した街・行政の取り組み、およびこの取り組みへの参加を表明した街・行政を指す。当然、二酸化炭素の排出をゼロにすることは現状では不可能に近い話なので、この宣言では“実質ゼロ”を目指すことを意味している。

実質ゼロとは、森林などの自然を増やしてCO2の吸収量を増加させたり、排出するCO2の量を減らしたりすることで、「吸収量 > 排出量」を図る取り組みだ。

世界的にもCO2削減に取り組むなかで、自動車メーカーであるトヨタが出した答えのひとつは「森林」を作ることだ。以前からトヨタでは「TOYOTAの森づくり」という取り組みを進めている。

日本の国土のおよそ7割は森林だ。そのうち、4割が人工林と呼ばれるスギやヒノキが占めている。人工林とは、戦後の木材需要に応えるために造成されたもの。人工林は継続的に手入れをすることで、CO2や雨を吸収し、少しずつ河川に流れる“自然のダム”としての機能を発揮する。

裏を返せば、手入れをしていない森林は、CO2を吸収しづらくなり、さらには土砂災害などの危険性もある。要するに、森林が機能不全に陥るということだ。

この森林における課題を解決するために、トヨタは森づくりに取り組んでいるのだ。そして、自動車メーカーとして自動車を作るのと同時に、排出されるCO2への対策も両立していくのが取り組みの背景にはある。これがトヨタとしてのゼロカーボンへの取り組みのひとつだ。

そして、今回取り上げている歩道を作るプロジェクトは、この森づくりの取り組みから着想を得たそうだ。

持続的な森林再生サイクルを構築

ウッドチップ舗装ソリューションの担当者に本プロジェクトの全体像について話を聞いたところ、次のように話をしてくれた。

「ウッドチップ舗装ソリューションは、トヨタだけの話ではなく、林業全体に繋がる話。いま、林業が衰退しつつある状況で、このままでは国全体としてもCO2削減への取り組みが進みづらくなってしまう。森林ならではの循環機能を活発にさせるためにも、林業を盛り上げるようにしたい。

たとえば、ウッドチップ舗装に使う未利用材は、その地域の木材を使用すれば、その地域の林業従事者も盛り上がる。しかも、材料の地産地消にもなるため、輸送面での環境問題への対策にもなる。

林業が盛んになれば、CO2の吸収量を増加させられ、地域や企業が目指すゼロカーボンの達成にも大きく近づくと考えている」(同担当者)

また、ウッドチップ舗装では間伐材などを主に使用するのだが、製造・加工するのも各地域の工場等でできるように検討しているそうだ。簡便な工法なのもポイントのひとつとのことで、検討中のサービスのなかには“水を入れて混ぜるだけ”で作れるようなものも考えているという。そのほか、酸化マグネシウムや水、そしてウッドチップを自動で混合する装置のレンタル等も検討中とのこと。

トヨタと間伐材ウッドチップ舗装協会が目指しているのは、「林業従事者が成長した木を伐り、伐った木を余すところなく適切に使用し、使った分の木を植えて育てる」という持続的な森林再生サイクルの構築だ。

企業としての核となる事業と環境への取り組みのハイブリッド

トヨタの本取り組みのなかで注目するべきは、根幹となる事業(自動車製造)をいかに推進させ続けられるか、推進するためにはどうすればいいか、という問題への解決方法の出し方である。

言うまでもなく、自動車メーカーである以上は自動車を作らないわけにはいかない。ただ、同時に環境問題への取り組みも進める必要がある。そのために、歩道を作るプロジェクトをスタートさせたのは、他社などでは、なかなか実現が難しそうな規模感だ。それも、自社だけでなく、他業種を巻き込む大きな枠組みを考えているのは、「さすがトヨタ」と言わんばかりのスケールだ。しかも、他業界において雇用を創出し、地方活性化を実現させられるかもしれない。

この取り組みがどういった展開になっていくのかは、実証段階である現状では我々はまだわかりかねるものの、ウッドチップ舗装ソリューションは環境問題、地域問題など、多くの社会課題の解決に貢献しそうだ。

これは極端な話ではあるが、人が住む場所にはそれだけ歩道が存在している。事業としても大きな可能性を秘めているのは間違いないので、どのようにトヨタたちが本プロジェクトを進めていくのか今後も注目したい。

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シクチョーソンでは、デジタル庁 河野太郎大臣の講演をはじめ、「自治体・公共Week2024」で実施された各種セミナーや出展ブースのレポートなどを公開中。気になる取り組み、参考にしたいサービスなどを紹介しているのであわせてチェックしてください。

自治体・公共Week2024 レポート記事一覧

展示会概要
展示会名自治体・公共Week2024
会期:2024年6月26日(水)~2024年6月28日(金)
会場:東京ビッグサイト 西展示棟
※本展は業界関係者のための商談展です。一般の方はご入場できません。

ウッドチップ舗装

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