株式会社T2は7月11日、佐川急便株式会社、セイノーホールディングス株式会社とともに、2024年10月から2025年6月にかけて、T2が開発した自動運転トラックを用いた幹線輸送の実証実験を、東京・大阪間の高速道路一部区間で実施すると発表した。
自動運行装置が運転操作の「全部」を代替する状態がレベル4
運送業界は常にひっ迫していると言っても過言ではない。大手ECサイトがセールやキャンペーンを実施するたびに、運送会社などは「お届け物の配達について、通常よりもお時間をいただきます」などの告知を発表するようになってきた。
また、労働環境の見直しによってトラックドライバーの労働時間にもメスが入ったものの、トラックの輸送能力の低下は社会問題のひとつになった。国の試算によれば、2030年には34.1%の輸送能力が不足するそうだ。
こうした課題に対し、自動運転トラックの技術開発を手掛けるT2と、陸送を長距離フェリーや鉄道に置き換えるモーダルシフトの推進、ラストワンマイルでのAIによる配送ルート提案等、課題に対しいくつもの施策を講じている佐川急便およびセイノーHDが手を組み、レベル4自動運転トラックを活用した幹線輸送の実現を目指すことになった。
自動運転技術は運送業界が抱える労働時間、人不足などによる問題を解決できる大きなテクノロジーだ。持続可能な物流、そして持続可能な社会の実現に向けた大きなプロジェクトともいえる。
自動運転にはいくつか「レベル」として、いわゆる自動運転がどれだけできるのかと段階的に区切りがある。
段階 | 名称 | 主体 | 状態 |
レベル0 | 運転自動化なし | 人 | システムが前後・左右のいずれかの車両制御を実施 |
レベル1 | 運転支援 | 人 | 車線を維持しながら前のクルマに付いて走るなど |
レベル2 | 部分運転自動化 | 人 | 遅いクルマがいれば自動で追い越すなど特定条件下での自動運転機能 |
レベル3 | 条件付き運転自動化 | システム | 高速道路等一定条件下での自動運転モード機能を有する「自動パイロット」 |
レベル4 | 高度運転自動化 | システム | 特定条件下においてシステムが全ての運転タスクを実施 |
レベル5 | 完全運転自動化 | システム(完全) | 常にシステムが全ての運転タスクを実施 |
T2らの今回の取り組みでは「レベル4」の実現を目指している。実証実験では、さまざまな条件下の公道において、運送事業者である佐川急便、セイノーHDの荷物を輸送することで、将来の事業化に向けた知見の獲得や改善点の洗い出すことが目的だ。
各社公式ウェブサイト及び報道発表資料に基づくT2の調べによれば、2024年7月11日現在において、レベル4自動運転トラック幹線物流輸送を目指した貨物積載状態での公道実証として日本初という。
「自動運転トラックは有力な輸送力確保手段」
本実証実験に関する各社の代表コメントは以下のとおり。いずれも敬称略。
T2 代表取締役CEO 森本成城
今回の実証は、2025年の事業開始に向けた重要なステップです。「日本の物流を共に支える」という大義に共感頂き、素晴らしいパートナーと共に自動運転技術を活用した未来の物流に向けたチャレンジができること大変嬉しく思います。今後、セイノーHD・佐川急便と共に自動運転トラックでの幹線輸送実現に向けた協議会の設立を目指しておりますが、本取組みを加速化させるべく、自動運転トラック幹線輸送に関わる幅広い業界の方々からの御賛同・御参画を切に願っております。
佐川急便 取締役 輸送ネットワーク・施設投資担当 枝川和弘
物流業界においてドライバー不足により輸送能力が不足すると懸念されている中で、自動運転トラックは有力な輸送力確保手段と考えています。官民でのインフラ整備計画も進んできておりますので、実証実験による知見の獲得と社会からの認知が加わり、自動運転トラックによる輸送が早期に実現されることを期待しています。
セイノーホールディングス 執行役員 オープンイノベーション推進室室長 河合秀治
当社では、2024年問題や環境問題等の社会課題に対し、オープン・パブリック・プラットフォームの概念のもと、中長期の経営方針として『Team Green Logistics』のスローガンを掲げ、ロジスティクス・貸切・特積みの3つの領域を中心として他社連携に取り組んでいます。このような中、T2様・佐川急便様と共に実証実験に挑めることは、持続可能な物流を実現し、お客様の繁栄に貢献できると考えており、今般の連携を大変光栄に思います。
【実証実験 概要】
期間:2024年10月~2025年6月
場所:東京~大阪間
・東名高速道路
・新東名高速道路
・伊勢湾岸道
・名神高速道路
・新名神高速道路
・京滋バイパス
実証内容:
・トラックレベル4自動運転に向けた高速道路上での自動運転
・貨物を積載した幹線輸送における自動運転の路線検証
※すべての実証実験はドライバー乗車の上、レベル2相当で実施するとのこと