株式会社カヤックは11月25日、地域おこし協力隊の採用成功の秘訣「ミスマッチ防止の10の心得」を公開した。これは地域おこし協力隊の隊員と受け入れる地域のミスマッチを防ぐための指針をまとめたものだ。
同社が運営する移住・関係人口促進のためのマッチングサービス「SMOUT(スマウト)」と兵庫県豊岡市、そして徳島大学大学院教授/令和6年度 地域おこし協力隊アドバイザーの田口太郎氏監修のもと作成された。
地域おこし協力隊の幸せな採用 10の心得
地域おこし協力隊・地域(住民)・地方公共団体の三方が幸せでいられるために必要な10の要素を、これまでの豊富な採用経験をもとにまとめられた。
豊岡市は、国の特別天然記念物であるコウノトリを保全し、コウノトリと共に生きるまちづくりに取り組んでいる。コウノトリと同じように、地域おこし協力隊も豊岡市にとって大切な存在であるという思いを込めて、コウノトリをモチーフにデザインされている。ポイントは、10の頭文字を繋げると「しあわせなまっちんぐ」になるように構成していること。さらに豊岡市の温かみが感じられる方言を取り入れている。
「し」っくりきとるんか。受け入れ目的と意思確認
豊岡市は、地域おこし協力隊の受け入れ団体と両者で話し合い、地域おこし協力隊を受け入れる意志と目的を明確にしている。これはミスマッチを防ぐ第一歩だ。
「あ」んしんだっちゃ! 地域が連携、受け入れ体制
地域おこし協力隊の採用から着任後のサポートまで、受入団体と協力隊担当そしてサポート団体が連携体制をとっている。
「わ」いらぁの仲間に思いやり。卒業後も考えた採用
「着任する協力隊のこと」はもちろん「受け入れる地域のこと」も大切に考えている。採用方法や着任後の環境そして、卒業後のことも考えた採用計画を立てている。
「せ」んめいにしてみんちゃー!着任後のすがた
豊岡市では、選考の過程で必ず現地に来ていただき、関係者と交流してもらっている。活動の説明をしながら、応募者側と受入側のイメージギャップをしっかり埋めていっている。
「な」んとなくは、あっきゃ〜へん。本音のコミュニケーション
相互理解を深めて、幸せな採用を目指す。協力隊希望者と採用側が本音のコミュニケーションをとれるように環境づくりを心がけている。
「ま」っとくでー、よーけ設ける準備期間
採用が決定後も移住の準備期間をしっかり設けて、安心して移住してもらうようにサポートしている。
「っ」ながりでゃぁーじ、一人にせんよサポート体制
着任後に、協力隊が孤独にならないように、交流会や研修会そして定期的な活動をサポートを実施。「ちいきのて」という協力隊のサポート団体も準備している。
「ち」ょうどえぇ、気持ちよく活動できる環境づくり
協力隊が気持ちよく活動しやすい環境づくりを目指している。活動経費の有効活用や研修機会などを設けたり、活動効率をあげる業務管理ツール「kintone」も導入している。
「ん」?! もう卒業? だんにゃーで! 準備は万端
協力隊の卒業後に地域で活躍できるようにサポートしている。たとえば、起業のための事業計画づくりのサポートや協力隊起業補助金に市独自で上乗せしてサポートするなど、金融機関と連携した研修などを用意している。
「ぐ」っとくる出会いのために、わいらぁの日々進化
幸せなマッチングを心がけた結果が、豊岡市の高い定着率につながっていると感じているという。これからもより良いマッチングのあり方について考え、改善を続けていくそうだ。
地域おこし協力隊、ミスマッチなどによる運用改善が課題に
地域おこし協力隊は2009年に総務省が創設した地方創生施策のひとつだ。この制度は、人口減少や少子高齢化といった課題を抱える地方自治体が、都市部から人材を呼び込み、新たな地域の担い手として地域活性化を推進することを目的としている。
2024年4月の総務省の発表によれば、2023年度には協力隊員が7,200人に達し、活動地域は全国1,100以上の自治体に広がったそうだ。政府は2026年度までに隊員数を1万人にする目標を掲げている。
しかし、自治体と隊員が望む活動のミスマッチや、地域住民と隊員のトラブルによって、任期途中で隊員を退任してしまうケースも目立つ。そのため、運用の改善が課題に挙がっている。総務省の調査では、2019年1月1日から同年12月31日までの期間中、任期途中で退任した隊員は604 人、そのうち106人がミスマッチが原因と回答した。
その点、今回の10の心得を手掛けた兵庫県豊岡市では、2014年に地域おこし協力隊制度を導入し、2024年5月には着任した隊員数が累計100人に。さらに、任期満了後の定住率は87.5%を達成している。豊岡市の取り組みや受け入れ姿勢などは、地域おこし協力隊の成功モデル事例になりそうだ。