宮崎県新富町を拠点にスマート農業を推進するAGRIST株式会社が、山梨県北杜市でNXアグリグロウ株式会社と連携し、農産物の収量予測に関する実証実験を開始しました。この取り組みは、山梨県が推進する「TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業」に採択されたプロジェクトの一環で、AI技術を活用して農業の課題解決と持続可能な未来を目指すものです。
リニア中央新幹線開業に向けた山梨県の挑戦
山梨県は、リニア中央新幹線の中間駅設置を契機に地域の活性化を図る「リニアやまなしビジョン」を掲げています。その一環として、スタートアップ企業の最先端技術を地域課題の解決に活用する「TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業」を展開。AGRISTのプロジェクトは、この未来志向型の取り組みに選ばれたものです。
課題解決に向けたAIの可能性
葉物野菜の生産を手がけるNXアグリグロウでは、収穫時期の天候や気温の影響で出荷計画通りに収穫が進まず、「前倒し収穫」が課題となっていました。この前倒し収穫の拡大は収量減少を招き、経営に悪影響を与える可能性があります。
今回の実証実験では、農場に環境センサー(温度、湿度、日射量、CO2濃度など)とカメラを設置し、収集したデータをAGRISTのAI技術で解析。2週間先の収穫量を精度高く予測することで、以下の課題解決を目指します:
- 物流効率化:出荷計画を最適化し、輸送コストを削減
- フードロス削減:過剰生産や廃棄を抑制
- 農家の収益向上:計画的な収穫で経営の安定化を実現
AIによる予測で収益性向上を目指す
AGRISTのエンジニア統括責任者である清水氏は次のように語ります。
この実証実験は、AIとロボティクスを駆使して農業課題の解決に挑む私たちのビジョンを実現する重要な一歩です。出荷計画の精度向上や物流効率化に向けた有益な知見を得ることで、フードロス削減や農業経営の持続可能性向上を目指しています。
全国展開を視野に入れた取り組み
AGRISTとNXアグリグロウは、この実証実験を通じて得られた成果を基に、さらに高精度な収量予測システムを開発する予定です。将来的には、収量予測データと市場価格データを連携させた高度な農業経営支援システムを構築し、山梨県内のみならず全国の農業経営者に活用を広げていくことを目指します。
地方創生への貢献と期待
AGRISTの本社がある宮崎県新富町は地方創生のモデルケースとして知られています。同社の取り組みは地域の特性を生かした農業課題の解決に留まらず、地方創生を後押しする象徴的な事例となっています。
テクノロジーを活用して未来の農業を変える挑戦は、山梨県を拠点に新たな一歩を踏み出しました。地方から世界へ――持続可能な農業の未来は、ここから始まります。