大日本印刷株式会社は7月24日、生活者が自治体の各種サービスをインターネット上の仮想空間・メタバースで利用できる「メタバース役所」の提供を開始した。
大日本印刷はメタバース役所の提供を通じて自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、生活者の利便性を高めて、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」の実現に貢献していく。
三重県桑名市との実証実験で培ったノウハウを活用
全国の自治体にメタバース役所の提供開始に先立って、ことし2月に三重県桑名市でメタバース役所の実証実験を進めていた。電子申請手続きの総合窓口や各種相談業務、そして市民交流の場がメタバース空間上に用意されていた。
桑名市でのメタバース役所実証実験のプレスリリースには、「『メタバース役所』では、物理的・心理的・身体的な制約を受けずに、こうした相談したい市民と相談員の二人だけで会話できる機密性が保たれた空間を提供します。メタバース内で自身の分身となるキャラクター(アバター)を利用することで匿名性が確保されるため、市民がより相談しやすくなるようにして、課題の早期発見や解決につなげていきます」というメリットを謳っていた。
桑名市での導入所感など、担当者・現場の方のコメントは、桑名市 スマートシティ推進課のnoteにてまとめられている。
共同利用モデルにすることで各自治体の利用料金を抑える
大日本印刷が提供するメタバース役所の利用料金は、初期費用が100万円、月額料金は62.5万円としている。年額換算すると100万+62.5万円*12ヵ月で合計850万円だ。大日本印刷のプレスリリースによれば、「より多くの自治体がメタバース役所を活用できるように、複数の自治体で運用を分担してサービス利用料を抑える共同利用モデルとして提供します」としている。
共同利用モデルとは、複数の自治体の役所が同じメタバース役所空間上にあるという意味だ。総合受付や電子申請窓口なども連携している自治体が共用となる。
共同利用モデルだからこそのメリットがあるとプレスリリースでは述べられている。その共同利用モデルによる特徴を以下でまとめていく。内容はプレスリリースに記載のまま転記する。
複数自治体による連携と住民サービスの向上
複数の自治体が「メタバース役所」をプラットフォームとして共有することで、相互の連携強化による住民サービスの質の向上につなげることができます。例えば、子育てや介護、不登校等の課題に連携して取り組むことで、より住民にとって効果的な施策を検討・実施することができます。
災害時の事業継続計画(BCP)の拡充と住民コミュニティの維持・再生
自然災害をはじめとする緊急時にも、複数の自治体同士で支援し合う強固なBCPを構築できます。例えば、特定の被災地で物理的な役所の機能が滞った際に、連携先の自治体の「メタバース役所」で対応できるほか、復旧・復興時の住民コミュニティの維持・再生などに活用できます。
経済的負担と運用負荷の軽減
住民からの問い合わせに対応する業務等を標準化することで、複数自治体による共同利用を可能とします。これによって各自治体はサービス利用料を抑えながら、場所や時間の制約を減らした形で、行政サービスを住民に提供できます。また、住民との交流会等について、複数の自治体が企画・運営上の課題を持ち寄って解決を図ることで、利用自治体の運用負荷を軽減します。これにより、財政的な負担を抑えながら、住民に対する充実したサービスの提供につなげることができます。
メタバース役所の運用と関連サービスで2028年に10億円の売上を目標
冒頭に記載のとおり、大日本印刷が目指す未来は、自治体のDXを推進し、生活者の利便性を高めて、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」の実現だ。
メタバース役所があれば、役所に“いかなければならない”といった生活者が抱える悩みを払しょくできる。ゆくゆくは役所が自治体・行政が身近な存在になっていけば、その地域に対する愛着が増していく可能性もある。
大日本印刷は今後もメタバース役所の提供を通じて把握した利用者ニーズに対応し、継続的にサービスの機能を改善・強化することで、自治体のDX推進をさらに支援していく。目指すのは、2028年度にメタバース役所の運用と関連サービスでの売上10億円だとしている。