大建工業株式会社、株式会社リバネス、大成生コン株式会社は、香川県三豊市および詫間漁業協同組合と連携し、新たに開発中の「海洋再生資材」の実海域での効果検証試験を開始した。
本資材は、藻場の再生を目的とした着生基盤 として開発が進められており、自然由来の素材を活用することで、海洋生態系の回復に貢献することを目指している。
海洋環境の課題とプロジェクトの背景
世界的な生物多様性の喪失と沿岸環境の悪化
世界自然保護基金(WWF)によると、過去50年間で世界の生物多様性の69%が失われたと報告されており、その経済的損失は44兆ドルにも及ぶと試算されている。特に海洋生物の減少率は深刻で、1970年以降の42年間で約50%減少している。
沿岸環境は、「海のゆりかご」と呼ばれ、多くの海洋生物の生息地となるだけでなく、炭素の貯蔵庫(ブルーカーボン)としても重要な役割を果たしている。しかし、陸地からの栄養塩の流入減少や海水温の上昇などにより、瀬戸内海をはじめとする沿岸地域では、藻場の減少が進行している。
この課題に対し、大建工業・リバネス・大成生コンの3社が連携し、新技術を活用した海洋再生資材の開発・実証に着手した。
実証試験の概要と目的
試験概要
- 設置日:2025年1月21日
- 設置場所:香川県三豊市沿岸
- 試験内容:複数種類の海洋再生資材を海域に設置し、藻場の形成促進効果を検証
- 試験期間:継続的にモニタリングを実施し、資材の有効性を評価
今回の実証試験では、構造や成分が異なる複数種類の試験材を使用し、最も効果的な海藻の増殖手法を検証することが目的となる。大成生コンが中心となり、資材の回復傾向や生態系への影響を調査し、今後の開発・改良に活かす。
プロジェクト関係者のコメント
大建工業株式会社
「建材事業を主軸としてきた当社において、海洋再生資材の開発は初めての試みであり、新たな挑戦となります。その中で、本実証試験は、大成生コン株式会社及び株式会社リバネスとの共創活動から生まれ、詫間漁業協同組合、三豊市の協力を得て開始することができました。当社が担う役割は、これまで培ってきた素材開発技術を活かしたモノづくりです。引き続き、皆さまとの活動を通して生態系にプラスに働く資材の研究開発を進め、環境の再生・回復に貢献してまいります」
株式会社リバネス
「『科学技術の発展と地球貢献を実現する』を理念として掲げる当社にとって、科学技術の力で海洋環境および生態系を回復させる本開発・実証はまさに推し進めるべき活動といえます。今回の実証試験に留まらず、今後も様々な研究者や企業が持つ知識や技術を集めて三豊、そして各地で海を豊かにする取り組みを進めてまいります」
大成生コン株式会社
「瀬戸内海沿岸に拠点を置く地域企業として、近年の海洋環境の悪化は目をつむることが許されない事態だと弊社は捉えております。しかし一中小零細企業である弊社に出来ることは限られている・・そのような想いの中、大建工業株式会社及び株式会社リバネスから本取組へのお誘いを頂きました。
世界中で進行している海洋環境の悪化や生態系の遷移は、もはや一組織では解決できるものではないのかもしれません。ユニークな特殊技術やスキルを掛け合わせ、地域に住む私たちの海洋修復の願いと結びつけることにより、事態を打開できる一手を見出したいと思います」
三豊市
「本市の豊かな海洋環境を次世代に引き継ぐため、本取組がスタートしたことを大変嬉しく思います。藻場の減少や海洋環境の悪化が進むなか、地域の漁業者の皆様、関係企業が連携し、新たな技術を活用した海洋再生資材の開発と実証に取り組まれることは、海の豊かさを守り、回復させる重要な一歩となります。
本市の海は、漁業や観光など地域経済の基盤であり、豊かな自然と共存するまちづくりにおいて重要な役割を果たしています。今回の実証試験を通じて、海洋生物の回復や環境改善につながることを期待するとともに、本取組が全国の沿岸地域に広がり、持続可能な海洋資源の保全に貢献することを願っています。
本市としても、本事業が成功するよう関係者の皆様と協力し、引き続き支援してまいります。」
詫間漁業協同組合
「『かつて豊かだったあの瀬戸内海を取り戻したい』。詫間漁協はそう想い、企業、自治体、関係団体と連携し、海洋再生のための試験材を設置する本取組に参画致しました。
本取組は、漁業者にとっても持続可能な漁業の推進に寄与するとともに、地域の自然環境の保全にも大きく貢献するものと考えております。本取組を通じて、豊かな海の恵みを次世代に引き継ぐことを目指し、引き続き環境保全活動に尽力してまいります。」
今後の展望
今回の実証試験は、瀬戸内海の環境回復に向けた重要な第一歩となる。この成果をもとに、さらなる技術改良を行い、海洋再生資材の普及を進めることで、全国の沿岸環境再生モデルを構築することが期待される。
今後の調査結果や試験の進捗については、随時発表される予定だ。三豊市をはじめとする地域社会と連携しながら、「海の再生」を目指した官民協働の取り組みが続いていく。
このプロジェクトが全国の自治体や企業にとって、海洋環境保全の新たなモデルケースとなることが期待される。