JAXA認定の宇宙ベンチャー・株式会社天地人(東京都中央区)が提供する水道DXソリューション「天地人コンパス 宇宙水道局」が、人口10万人〜20万人規模の自治体において大きな成果を上げている。衛星データを活用した漏水リスクの診断により、漏水発見効率を6倍に高めるとともに、調査費用の大幅な削減も実現した。
実証自治体で明らかになった3つの効果
今回発表されたのは、令和5年度に「天地人コンパス 宇宙水道局」を導入したある自治体における事例だ。音聴調査との併用により、従来の方法と比較して以下のような効果が確認されている。
1. 漏水発見効率が6倍に向上
従来は水道管10kmあたり平均0.7箇所だった漏水発見数が、同システムの導入により10kmあたり4.2箇所と約6倍に上昇。
2. 調査費用を約79%削減
漏水1箇所あたり約86万円だった従来の調査費用が、約18万円にまで圧縮。衛星データを活用することで、コスト効率が劇的に改善された。
3. 高リスクエリアからの漏水検出精度が高い
全体のわずか20%の面積(E・D評価エリア)から、全体の40%にあたる50箇所の漏水を特定。限られた調査リソースを最も効果的に活用できることが裏付けられた。
見えない地下インフラの劣化に挑む“宇宙水道局”
日本全国で年間2万件以上発生する水道管の漏水事故。その多くが1960年代の高度経済成長期に布設された経年管による老朽化であり、現在でも約17.6万kmが更新を要する状態にある。加えて、異常気象や地震などによる地盤変動も、地下インフラに対する新たなリスクとなっている。
しかし、全ての老朽管を更新するには1kmあたり約2億円のコストがかかるとされ、自治体の財政や人材面での限界が課題となっている。
こうした背景を受けて登場したのが、「天地人コンパス 宇宙水道局」である。
「天地人コンパス 宇宙水道局」の機能と強み
本システムは、衛星データを基に100m四方単位で漏水リスクを5段階で評価するもので、主に以下の2つの機能を提供している。
1. 音聴調査の効率化
リスク評価に基づいて重点的に音聴調査を実施することで、作業の効率化と発見精度の向上を実現。実際の自治体では、全市域3,904メッシュ中、約1,059メッシュを対象に調査し、126箇所の漏水を発見している。
2. 更新計画の最適化
漏水リスクと社会的影響度(病院や学校など重要施設への給水停止リスク)を総合的に評価し、更新優先順位を柔軟にシミュレーション可能。地域の課題や目的に応じて「平時対応型」「災害対策重視型」などのシナリオを策定できる。
過去の知見と未来技術の融合で水道事業を再構築
「天地人コンパス 宇宙水道局」は、これまで各自治体が蓄積してきた管路データと、最先端の衛星技術とを融合することで、新たな「漏水リスク情報」という視点を社会に提供する。
調査対象を絞り込むことでコストと労力を抑えながら、高精度でリスクに対応できる本ソリューションは、今後の水道事業の持続可能性を支える重要な技術として、全国の自治体から注目を集めている。