スーパーシティ構想とは 選ばれた自治体は?重要なポイントを解説

スーパーシティ
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日本全体の大きな課題である少子高齢化やそれにともなう人口減少。これらの課題を解決するために、AIやビッグデータを活用し、企業だけでなく行政、自治体、ひいては日本全体で取り組みが進められています。

そのなかで、内閣府 国家戦略特区が定めたのが「スーパーシティ・デジタル田園健康特区」です。いわゆるスーパーシティ構想ともされています。地方創生への取り組みのひとつで、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目的として、先行事例を創出するべく地域課題の解決を目指しています。

この記事では、スーパーシティについて解説します。

目次

スーパーシティとは

内閣府が掲げるスーパーシティ構想は、「住民が参画し、住民目線で、2030年頃に実現される未来社会を先行実現すること」を目指している取り組みです。

以下の3点がスーパーシティ構想のポイントであるとしています。

1.生活全般にまたがる複数分野の先端的サービスの提供

AIやビッグデータなど先端技術を活用し、行政手続き、移動、医療、教育など幅広い分野で利便性を向上

2.複数分野間でのデータ連携

複数分野の先端的サービス実現のため、「データ連携基盤」を通じて、さまざまなデータを連携・共有

3.大胆な規制改革

先端的サービスを実現するための規制改革を同時・一体的・包括的に推進

スーパーシティは2020年から各種法案が整備されはじめ、実際にスーパーシティとして動き出したのは2022年4月のこと。今現在も進められている、非常に新しい取り組みです。

地方創生やスマートシティ、地域活性化などの取り組みは以前から進められていたものの、まだまだ生活全般が改善するほどのインパクトを残せていませんでした。特定の分野や領域においてのAIやデータ活用はまだ始まったばかりのフェーズであったことも理由です。

そこで内閣府らは「スーパーシティ構想」を立ち上げ、特区に選ばれた自治体が実証実験をすることになったのです。この実証実験を経て、先行事例を国内で作り、それを横展開させ多くの自治体を“スーパーシティ化”させ地方創生やスマートシティのプロジェクトを推進していく狙いがあります。

要するに、スーパーシティは、地方創生における選抜メンバーです。

スーパーシティに選ばれた自治体

スーパーシティとして選ばれたのは、茨城県つくば市と大阪府大阪市の2自治体です。2020年の公募開始を経て2022年4月に両自治体が選ばれました。当初公募で集まったのは31の地方公共団体で、北海道から沖縄県にいたるまでさまざまな自治体から寄せられていました。

それぞれの自治体の描いている構想は次のとおりです。

茨城県つくば市

目標

・大胆な規制改革と併せて、データ連携基盤を活用して複数の先端的サービスを実施することで、2030年頃に実現される未来社会を先行実現することを目指す。

・大学等の研究開発の成果や多様な人材を生かし、産学官連携の下、幅広い分野におけるデジタル技術を活用したイノベーションを実現し、「誰一人取り残さない」包摂的な社会のモデルを構築する。

概要

・つくばスーパー「サイエンス」シティ構想

・デジタル、ロボット等の最先端技術を社会実装

・住民参加で、住民中心のスーパパーシティを目指す

・対象エリアは、つくば市全域

・国の研究機関や粒科大学等と連携して推進

事業構想

1.移動・物流分野

・新型モビリティやロボットの本格導入

・ロボットやドローンによる荷物の配送

2.行政分野

・インターネット投票

・外国人向け多言語での情報発信

3.医療分野

・マイナンバーを活用したデータ連携による健康、医療サービスの提供

4.防災・インフラ・防犯

・効率的な避難誘導と避難所での医療連携

・インフラ長寿命化

5.デジタルツイン・まちづくり

・3Dマップの作成によるデジタルツインの実現

・ロボットと共生する都市空間の創出

6.オープンハブ

・外国人創業活動支援

・大学の土地や施設等の貸付 など

大阪府大阪市

目標

・大胆な規制改革と併せて、データ連携基盤を活用して複数の先端的サービスを実施することで、2030年頃に実現される未来社会を先行実現することを目指す。

・「夢洲」「うめきた2期」というふたつのグリーンフィールドを中心に、2025年開催の万博レガシーを継承していくことも見据え、先端的サービスにより、住民の生活の質向上と都市競争力の強化を図る。

概要

・2025年の大阪万博開催を見据えた取組

・「データで拡げる健康といのち」がでーま

・対象エリアは万博予定地の夢洲、大阪駅北の「うめきた2期」のふたつの新規開発エリア

・住民QoL向上、都市競争力強化を目指す

・関経連、大商、万博協会等と連携し推進

事業構想

1.最適移動社会の実現

・日本初の空飛ぶクルマの社会実装

・自動運転バス(レベル4)による万博来場者の輸送

・夢洲建設工事での貨客混載輸送、ドローンの積極活用

2.健康長寿社会の実現

・国籍や場所にとらわれない先端的な国際医療サービス(外国人医師による診察、外国の医師による遠隔診療等)

・ヒューマンデータ、AIの活用による健康増進プログラムの提供

3.データ駆動型社会の実現

・AIによる気象予報

・夢洲建設工事でのBIMデータ等の活用

・VR・MR技術の活用等による「未来の公園」

スマートシティとの違い

スーパーシティとスマートシティは似ている言葉で、地方創生というくくりでは同じような取り組みです。

スマートシティとの最も大きな違いは、国が特区として地方公共団体である自治体を認定しているかどうかという点です。スーパーシティは公募から選ばれた2自治体からわかるとおり、選ばれることでスーパーシティとしての活動が始まります。一方でスマートシティは冠をつけることに制約はなく、どこの自治体でも名乗れます。

そのため、スマートシティは各自治体や企業が中心となり動くのに対し、スーパーシティは自治体や企業はもちろんのこと、国としても注力している点に違いがあります。

冒頭に記載のように、スーパーシティの目的は先行事例を作ることとしているため、選抜して選ばれた自治体をモデルケースとして活用し、将来的にはほかの自治体などに展開することが全体としての目標です。

また、最近ではスマートシティに取り組む自治体や行政は、さまざまなサービスなどに先端技術を落とし込む動きが活発になりましたが、以前は特定の分野領域でのみの活動が多く、住民全体にいい影響を与えられるほどの成果が乏しいことが多々ありました。そうした状況もあったため、スーパーシティとして動きに刺激を与えているという背景もあります。

結果的には、さまざまな地区でスマートシティの取り組みが盛んになっているので、スーパーシティとして選ばれた自治体だけでなく、多くの自治体や場所、分野、領域で好事例が生まれるようになってきました。

重要なのは住民への恩恵と理解

スーパーシティやスマートシティ、そのほか各種取り組みには常に「住民」というターゲットがあります。

根底には生活をよりよくするという点があるため、生活者である住民に対して何を提供できるのか、何をしたら住民が喜ぶのか、どうすれば住民が増えるのかなどがあります。

たとえば、データ活用などは多くの分野で推進されていますが、内容によっては個人の行動からプライバシーの保護なども問われていく可能性があります。また、集まったデータをどのように使うのか、そしてそのデータのおかげで住民にどのようなメリットがあるのかなど、住民に対して理解を深めてもらう機会も必要になります。

そしていずれは住民も参画した取り組みになるため、活用のしやすさなども問われる局面が訪れます。

単純に先端テクノロジーを駆使して、画期的な取り組みをすればいい、というわけではないのがスーパーシティやスマートシティの重要な点です。

ただ、目指しているのは各自治体の活性化。そしてその先にある、人口減少や少子高齢化などの社会課題の解決です。

つくば市や大阪市以外の多くの自治体がスマートシティや地方創生などに取り組んでいます。読者の方が住んでいる場所、出身地などでも取り組んでいるケースがあるかもしれません。

生活者としてすぐに貢献できることは限られているものの、行政に携わる方々や周辺企業たちの熱意ある取り組みはぜひとも知っておいてほしいです。

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