株式会社NEXTAGEは8月30日、栽培(Cultivation)と管理(Management)に特化したわさび栽培サポート拠点「横浜C&Mセンター」を開設し、9月から運用を開始する。この施設は同社のわさび栽培モジュールを導入した顧客に提供する栽培サポートの充実を目的としている。
NEXTAGEはわさびの自動栽培ソリューションの開発に取り組んでいるアグリテックベンチャー。代表の中村拓也氏が毎年旅行で訪れていた地域のわさび田の荒廃を目の当たりにし、強い懸念をもつようになったことがきっかけで、最高峰の国産わさびといわれる「真妻種」発祥の地 旧真妻村(現:印南町川又)を訪れ、2019年より真妻種の栽培を開始した。
わさび栽培には、冷涼で澄んだ湧水が流れる環境での栽培が困難になっている状況があり、新規での参入も耕作地の開発の難しさから大きく伸びることも難しいとされている。
NEXTAGEが目指すのは、わさびとテクノロジーを掛け合わせ、誰もがわさびを作れる環境の整備だ。冒頭に記載した「わさび栽培モジュール」は、場所や経験を問わず、誰もがわさびを栽培できる環境を提供するため、促成栽培技術とその管理手法をパッケージ化したものだ。
横浜C&Mセンター開設には、2023年秋から「わさび栽培モジュール」の受注を開始し、導入した顧客に向けた栽培サポートの充実が求められる状況から、わさび栽培モジュールと同様の設備をもった検証施設の必要性が高まったことが背景にあるという。栽培と管理に特化したサポート拠点になる。
わさび栽培モジュールに導入する設備と同様の設備での顧客の栽培モジュールで発生する課題等の再現検証や、オペレーションの効率化などの提案するための試験運用などを通じて、わさび栽培モジュールでのわさび栽培事業の発展に寄与していく。
全国どこでもわさびを栽培できる環境のためのシミュレーションのため、そして顧客ごとの環境を再現するための施設でもあるといえる。
この取り組みのポイントは、新時代の地産地消システムの構築ともいえる。
どこでも同等の食材(この場合でいえば「わさび」)を生産できるようになれば、「フードマイレージ」を抑えられる。フードマイレージとは、食材の移動距離(産地から食べるまでの距離)と食材の重量の掛け算によって求められ、値が大きくなればなるほど二酸化炭素などの排出が増えることを意味し、環境に負荷をかけている。二酸化炭素等の削減を求められるこの世の中としても、フードマイレージの増加は解決するべき社会課題のひとつだ。
わさびというターゲットがとても絶妙で、日本人になじみ深い食材であり、海外でも人気を誇る「寿司文化」を構成する大事な要素を担う。アグリテックは以前からさまざまな企業等が取り組んでいるが、このわざびを題材とした株式会社NEXTAGEの動向は、国内の“食べ物”に関して大きなインパクトをこれからも与えそうだ。