株式会社カヤックは9月24日に、鹿児島県日置市と人口減少による担い手不足の解消に向けた取り組みとして、関係人口創出事業「ひおきとプロジェクト」に関する連携協定を結んだ。カヤックは日置市にデジタル地域通貨とメタバース空間を提供し、市内外を問わず日置市と主体的に関わる人々を増やす仕組みの構築を目指す。
鹿児島県日置市は、近年、人口減少と高齢化が進むなかで、担い手の確保が深刻な課題だった。
国立社会保障・人口問題研究所の発表によれば、日置市の2065年の総人口は約26,000人となり、2015年からの50年間で約47%も減少すると推計されていた。
市は2021年10月に関係人口創出事業「ひおきとプロジェクト」をスタートさせ、市外在住者を対象に日置市のファンクラブの創設、お試し移住体験やSNSを活用したプロモーションなど、さまざまな関係人口の創出施策に取り組んでいた。
2022年にはインターネット上での交流を促進するためにメタバースを活用した「ネオ日置」を立ち上げたものの、人々の交流にはつながらない課題が浮上した。そこで、カヤックの地域通貨を導入し、関係人口の創出と移住促進の目指す取り組みを始める。
カヤックが提供する地域通貨「まちのコイン」は、地域や人々のためになる活動に参加するとアプリにコイン(ポイント)が貯まる仕組み。法定通貨には換金できないが、これまで全国27の地域で導入が進む。まちのコインとメタバースを掛け合わせる取り組みは、日置市が初だという。
日置市およびネオ日置において、まちのコインを使うことで、規格外の野菜をもらえたり、地元住民から鹿児島弁でコミュニケーションを取ってもらえたりなどするという。コインの収集は、現実世界ではエコバッグの持参などでもらえる。ネオ日置では特定のスポットで二次元バーコードを読み取ると入手できるそうだ。プレスリリースでも、まちのコインは「ちょっとお得な体験に使える」としており、日置市ならではという要素が盛り込まれるのだろう。
ひとえに地域通貨といっても多種多様だ。カヤックの地域通貨は、ポイントサービスとしての側面が強いように感じる。一方で、フィノバレーが提供するような地域通貨は、いわゆるキャッシュレス決済のような役割をもつ。
メタバースと地域通貨を掛け合わせたプロジェクトは先進的で興味深い一方で、やはりメタバースは「アクセスしないといけない」という課題がある。しかし、カヤックの地域通貨が大きなトリガーになり、利用者に大きなメリットがあればメタバース空間の利用、さらには地域の関係人口の創出に大きく貢献できそうだ。
日置市における「まちのコイン」の実装は10月末を予定。今後の展開に注目だ。