株式会社TOWINGと株式会社三菱総合研究所(MRI)は12月10日、2024年3月から宮崎県で実施していたカーボンファーミングの圃場実証を完了したことを発表した。あわせて、TOWINGが開発した高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」を散布して、作物収量の12%増加と1.3トン相当のCO2吸収という効果を確認できたことも明かした。
「宙炭(そらたん)」とはTOWINGが開発した温室効果ガス排出削減と減化学肥料・有機転換を同時に実現する土壌改良資材だ。
サトイモの一株あたり重量が12%増加 CO2固定量はスギ約93本に相当
TOWINGとMRIは、食料・農林水産業の生産力向上をはじめ、温室効果ガスの削減や持続可能な食料生産システムの実現を目指し、2024年3月から、高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」を用いた「カーボンファーミング」の圃場実証に取り組んできた。 カーボンファーミング(Carbon Farming)とは、大気中のCO2を土壌に取り込んで、農地の土壌の質を向上させ温室効果ガスの排出削減を目指す農法で、いわゆる環境再生型農業を指す。
本実証試験は宮崎県の協力のもと、環境に配慮した持続可能な農業生産に積極的に取り組む農業生産法人2社(イシハラフーズ株式会社、有限会社新福青果)の圃場で実施された。対象作物はサトイモ、期間は2024年3月から11月まで。宙炭の散布面積はイシハラフーズが10a、新福青果が5aだった。
今回の実証で、ふたつの生産法人によって収穫されたサトイモの一株あたり重量は12%増加した。
宙炭の散布により土壌環境が改善し、生育過程におけるサトイモの根が成長。これが芋の個数や重量を増加させた主な要因と考えられている。
また、宙炭を散布すると空気中の二酸化炭素は土壌に固定される。今回の実証では合計1.3トン(CO2換算)に相当する量が固定されたそうだ。ちなみに、1.3トンのCO2は、スギ約93本が1年間で吸収する量だという。
農業における収量向上と環境負荷低減を両立しうる技術
今回の実証試験の結果から、農業における収量向上と環境負荷低減を両立しうる技術として、「高機能バイオ炭」が有効であることが改めて確認された。
しかし、こうした技術の社会実装に向けては、原料の調達から生産者への販売までのバリューチェーンの構築や、経済性の確保(原料調達コスト、輸送コスト、散布コストの削減、等)が課題だとプレスリリースで述べられている。その解決策のひとつが地域内資源循環の創出だという。
TOWINGとMRIは、今後も生産性向上と環境負荷低減の両立を目指し、宮崎県を中心に有機性廃棄物由来の高機能バイオ炭製造・農地利用などのさまざまな取り組みを通じて地域内資源循環の創出を推進していくとした。