バリューマネジメント株式会社は12月19日、三重県伊勢市に分散型ホテル「NIPPONIA HOTEL 伊勢河崎 商人町」を2025年4月に開業することを発表した。まちに点在する歴史的建造物を「客室」とし、宿泊者に地域内での回遊を促す分散型ホテルを運営する。日本を代表する歴史都市である伊勢を深く愉しむ新しい滞在型観光を提案するとともに、歴史的なまちなみの保存継承とまちづくりにおける課題解決への貢献を目指すという。
分散型ホテルとは、地域に点在する空き家となった複数の建造物を、同時もしくは順次に、宿泊施設として活用する宿泊形態。日本では2018年6月の改正旅館業法の施行により整備が進んでいる。日帰り観光が課題になっている地域では、飲食や買い物などの観光客が宿泊施設に求める機能をまちに分散することで、地域に滞在して愉しめる観光まちづくり・ファンづくり・移住定住に繋げることが期待されている。
伊勢は、日本の神都・心のふるさとと称され、京都や金沢に並ぶ歴史的価値を保有している。海と山に囲まれた風光明媚な土地でお伊勢参りの文化を育むなど、古くから日本最大級の観光地として親しまれてきた。その一方で、少子高齢化による人口減少・税収減、中心市街地の空洞化など地方都市に共通する課題を抱えていた。この課題の解決策のひとつとして、伊勢エリア内での宿泊客増加やインバウンド旅行客の誘引への期待が高まっていた。
バリューマネジメント社が分散型ホテルを開業する伊勢河崎は、参宮客で賑わうまちの経済や文化を支え“伊勢の台所”として栄えた地域だ。室町時代頃から、伊勢湾を渡ってきた伊勢神宮への参拝客が上陸する勢田川の川岸を中心に発達し、江戸時代には大きな問屋街へと発展。現在でも、川沿いに伊勢独特の建築様式の古い町家や商家の蔵が軒を連ねている。
アクセス面も良好だ。近鉄伊勢市駅から徒歩10分、豊受大神宮(外宮)から徒歩20分ほど。このため、地域に残る伝統的建造物の保全・補修、観光資源としての利活用による、伊勢エリア全体の宿泊地としての魅力向上と、中心市街地の経済活性化への貢献が期待されている。
まち全体をホテルに見立てて地域を回遊
バリューマネジメントは、伊勢まち衆の暮らしや文化を感じる伊勢河崎エリアのまちなみの保存継承と、まちづくりにおける課題解決を目的に、この地域でまちなみ保全を行ってきた事業社と連携して、江戸~昭和期の蔵や商家、全6棟の改修・保全を進めている。
分散型ホテルの展開だけでなく、旅行者が滞在をとおして伊勢神宮と周辺の歴史・文化・暮らしを深く楽しめるように、複数のコンテンツも用意するそうだ。また、旅行客の要望に応じて、VMGコンシェルジュが伊勢河崎エリアや伊勢市周辺の飲食店を紹介してくれる。
同社は2018年に「篠山城下町ホテル NIPPONIA」の運営を開始して以来、2024年までに日本全国11箇所で分散型ホテルを展開している。
また、、観光開発が途上にある地域にも積極的に出店し、ホテルそのものを旅の目的地とすることで、地域に新しい宿泊者を誘引することにも取り組む。観光消費を高めるだけでなく、オーバーツーリズムの解消にも貢献しているそうだ。
施設概要
- 名称: NIPPONIA HOTEL 伊勢河崎 商人町
- 所在地: 三重県伊勢市河崎2丁目8-20 ほか
- 開業予定日: 2025年4月下旬(予定)
- 客室構成: 伊勢市河崎2丁目内に、フロント棟と客室、全6棟 8室 64.06㎡~120.08㎡