エンペックス気象計株式会社は、北里大学獣医学部 動物飼育管理学研究室および大学発ベンチャーであるライブストックジャパン株式会社と共同で、乳用牛専用の暑熱ストレス指標計「ヒートストレスメーター(HEAT STRESS METER Dairy)」を開発し、2024年3月21日より先行予約受付を開始した。気温と湿度から算出される温湿度指数(THI)をもとに、牛舎内の熱環境をわかりやすく視覚化することで、適切な暑熱対策の実践と乳用牛の快適性向上を目指す。
牛の快適性が生産性を左右――開発の背景
近年、気候変動による猛暑が家畜の斃死や生産性の低下を招き、酪農業に深刻な影響を与えている。酪農現場ではこれまで、暑熱対策が経営者の体感や経験に頼っていたため、適切な対策を講じるのが難しく、結果的に乳生産量や繁殖性の低下を招くケースも多かった。
北里大学獣医学部では、家畜に与える熱環境の影響について長年研究を進めており、温湿度指数(THI)による暑熱・寒冷ストレスの評価が最適であることを明らかにしてきた。乳用牛の生産性を維持・向上させるには、牛舎内の熱環境をリアルタイムで把握し、適切な暑熱対策を行うことが不可欠となっている。
暑熱・寒冷を“見える化”する新技術
新たに開発された「ヒートストレスメーター(HEAT STRESS METER Dairy)」は、THIの増加に応じて「注意」「警戒」「厳重警戒」「危険」の4段階で色分け表示される。これにより、酪農家は牛舎の熱環境を一目で把握でき、タイムリーな暑熱対策の実施が可能となる。また、気温・湿度の数値も併せて表示されるため、より精緻な環境管理が行える。
さらに、乳用子牛に影響の大きい寒冷ストレスにも対応し、寒冷ストレス指標も表示されることで、年間を通じた牛舎環境管理に役立つ仕様となっている。
高精度・視認性を追求した国産技術
本製品は1973年創業のエンペックス気象計が持つ、高精度な気象計製造技術を活かして開発。ビッグデータとAI解析により、近年の猛暑にも対応した新たな指標を導入しており、水沢製の国産センサーを搭載。目盛り間隔を広げ、数字も大きくすることで、現場での視認性を大幅に向上させている。
この製品は、北里大学の鍋西久准教授が2011年に開発した「ヒートストレスメーター」を酪農家向けにリニューアルしたものであり、現場のニーズに即した実用性が追求されている。
アニマルウェルフェア推進と生産性向上を両立
本指標計の導入により、酪農家は牛の暑熱ストレスを的確に把握し、きめ細やかな暑熱対策が実施できるようになる。これにより、乳用牛の快適性が向上し、夏季の乳生産や繁殖性の維持・向上が期待されるほか、家畜福祉に配慮したアニマルウェルフェアの実践にも寄与する。
酪農業界の持続可能な発展を支える技術として、今後の普及が期待される。