日本における1人暮らし世帯の割合は年々増加しており、2020年の国勢調査によれば全体の38.1%を占めるまでに至っている。高齢化の進行や未婚率の上昇、配偶者との死別・離別などが背景にあり、この傾向は今後も続くと予測されている。
こうした社会状況を受けて、心療内科・精神科クリニック「よりそいメンタルクリニック」などを運営する一般社団法人徳志会は、孤独感とこころの健康に関する調査を実施。その結果、1人暮らしとメンタルヘルス不調の間に強い相関があることが明らかとなった。
「孤独」と「うつ病発症」の関係性を検証
今回の調査は、全国の400名を対象に2025年3月1日~20日の期間でインターネット調査として実施された。
調査結果によると、1人暮らし世帯は全体の約41%を占めており、うつ病の発症経験者は15%にのぼる。一方で、2人以上の世帯ではその割合は7%にとどまり、1人暮らし世帯のうつ病発症リスクは約2倍であることが判明した。


孤独感の実態──「相談相手がいない」ことが要因に
1人暮らし世帯のうち、約6割が「孤独感を感じたことがある」と回答。さらにその理由を問うと、「悩みを気軽に相談できる相手がいない」が最も多く挙げられた。日常的な会話の機会が少ないことや、家族との物理的・心理的な距離が影響しているとみられる。

孤独が引き起こすメンタル不調──早期対処の重要性
徳志会は調査結果を通じて、「1人で抱え込まず、孤独感を感じたら早期に専門機関へ相談することが重要」と呼びかけている。うつ病などの精神疾患は放置することで重症化し、命に関わる事態に発展する可能性もある。
新宿、横浜、そして4月には柏にもオープン予定の「よりそいメンタルクリニック」では、カウンセリングを通じた心のケアに注力。気軽に足を運べる環境を整え、心の不調に悩む人々を支援している。
地域と社会が支える「心のインフラ」へ
今回の調査は、単なる統計結果にとどまらず、今後の地域づくりや福祉政策において「孤独対策」が重要課題であることを浮き彫りにした。高齢化が進行する地方都市や、単身者が多い都市部では特に、地域社会全体での見守りや支援体制の構築が求められている。
「誰もが安心して、心豊かに暮らせる社会」を実現するために──。孤独と向き合い、支え合う取り組みが、今、地域に問われている。