埼玉県は、サーキュラーエコノミーの推進を目的に、県内外の企業・自治体と連携し、使用済みリチウムイオン電池等からのレアメタル回収に関する実証試験を実施した。令和6年度の成果として、回収・分別・再資源化の一連のプロセスの有効性を確認。さらには、収集拠点の拡充や安全な放電処理方法の検証も行われた。
本取り組みは、環境負荷の軽減だけでなく、廃棄物処理時の火災防止やレアメタルの安定確保といった社会的課題の解決にもつながるものだ。
実証試験の概要と成果
1. レアメタル回収の実現可能性を確認
令和6年10月から令和7年2月にかけ、県内5市(さいたま市、所沢市、狭山市、上尾市、越谷市)が参加。各市で公共施設などを活用して使用済みの充電式電池を収集・分別し、太平洋セメント株式会社と松田産業株式会社がリサイクル処理を担当した。
その結果、一定量を分別・確保すれば、ごみ処理費用が不要なうえ、レアメタル回収が可能であることが実証された。
2. スーパーやコンビニでの収集が利便性向上に寄与
令和7年1〜2月には、荏原環境プラント株式会社と加須市・さいたま市が協力し、スーパーや県庁内のコンビニで専用収集ボックスを設置。発火などの事故はなく、安全に回収できた。
住民へのアンケートでは、「身近な場所に回収ボックスがあることで利用しやすい」との声が多く、分別意識と回収率の向上に貢献していることが明らかとなった。
3. 放電による安全処理方法も確立へ
従来、廃電池の端子にテープを貼って絶縁する方法が一般的だが、手間や作業時間の課題があった。これに対し、県の環境科学国際センターが実施した実験では、セスキ炭酸ソーダ溶液に電池を漬けることで、安全かつ効率的に放電できることが判明した。
今後の展望:持続可能な回収ルートの確立へ
埼玉県では今後、今回の成果を基に、県民からの適正な分別排出→安全な収集→レアメタルの回収という一連の仕組みの構築を目指す。さらに、収集量の安定確保により、再資源化事業者の採算性を支える仕組みづくりも視野に入れている。
今回の取り組みは、廃電池による火災事故の防止と、リサイクル資源としての電池活用の両立を目指したものであり、全国の自治体や民間事業者にとっても先進的なモデルケースとなることが期待される。