地域の観光ブランディングを支援する「Place Branding 魂」を運営する奈良アクア・ラボ株式会社は、都市部に住む15〜79歳の男女700名を対象に旅行に関する意識調査を実施した。その結果、令和7年現在の旅行トレンドとして、「国内志向」「費用重視」「SNSへの不信感」といった傾向が明らかになった。
本調査結果は、地域の観光資源をどう活かすか、観光ブランディングにおいてどのような情報発信が有効かを考える上で重要な示唆を含んでいる。
「費用を下げる」が最多の70.9% 物価高が旅行意識にも影響
旅行を計画する際に最も重視されている項目は、「費用を下げること」で、全体の70.9%が「力を入れている」「やや力を入れている」と回答した。続いて「グルメ・飲食」「快適な移動」「ホテル・旅館」といった項目が並び、旅行中の体験に対する期待も伺える。

特に、旅行が趣味だと回答した層ではその傾向が顕著で、「グルメ・飲食」に注力している人が86.3%、「費用を下げること」が80.3%にのぼった。旅行愛好者であっても、金銭的な制約は大きく影響していることが分かる。

国内旅行志向が8割超、海外旅行は敬遠される傾向に
今後行きたい旅行先としては、「国内旅行」が圧倒的多数の82.6%を占めた。一方で「海外旅行」に「行きたくない」と答えた人が51.0%と、半数を超える結果となっている。バブル期に海外旅行が人気を博した時代とは様変わりし、旅行ニーズは確実に国内回帰へとシフトしている。

旅行が趣味とされる人に絞って見ても、「国内旅行」は95.8%と非常に高く、「行ったことのないスポット」や「その土地独自の特徴があるスポット」にも9割以上が関心を示している。

情報源は「公式サイト」が圧倒的、SNSは信頼されず
旅行先の情報源として最も信頼されているのは、「公式サイト」で80.7%。「宿泊施設」や「観光協会」などが提供する公式情報が、旅行者の意思決定において重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
一方で、SNSを「信頼できない」「あまり信頼できない」と回答した人は60.7%にのぼり、情報源としては不信感が強い。観光地の魅力を正確かつ効果的に伝えるためには、信頼されるWebサイトを中心とした発信が求められる。

参考にされるのもWebサイト 紙媒体より手軽さ重視
実際に旅行先を選ぶ際に参考にしている媒体も、「旅系のWebサイト」「公式サイト」「宿泊・ツアー予約サイト」が上位3位を占めた。信頼度でも上位に位置した「旅行誌・ガイドブック」は、利用頻度ではやや下回る結果となっており、Webでの情報収集が主流であることが伺える。

SNSを参考にするのは若年層 年代に応じた情報設計がカギ
「SNS」を旅行先選定時に参考にするかどうかを年代別に見ると、10代では67.0%が「参考にしている」「やや参考にしている」と回答。一方、70代ではその割合が11.0%にまで落ち込む。年代によって情報収集の方法に大きな違いがあるため、ターゲットに応じた発信戦略が必要とされている。

「観光ブランディング」は誰に届けるかが重要
本調査は、国内旅行志向の高まりや、費用対効果への関心の高さ、信頼できる情報源としてのWebサイトの有用性など、観光ブランディングにおいて注力すべきポイントを浮き彫りにしている。
SNS全盛の時代においても、情報の受け手が「誰で」「何を信頼しているのか」を理解したうえで、戦略的な情報設計が求められる。今後の地域ブランディングにおいては、国内市場のニーズを丁寧に捉える姿勢が、鍵となるだろう。