文京学院大学人間学部の小林剛史教授らの研究チームは、嗅覚VR(バーチャルリアリティ)を活用した高齢者の認知機能改善手法を世界で初めて提案した。本研究は、東京科学大学、ロンドン藝術大学、法政大学との共同で行われ、成果は2025年3月28日付で科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
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嗅覚VRを活用した認知リハビリを提案
本研究では、香りを発する嗅覚ディスプレイを搭載したVRゲームを開発。ゲームでは、参加者が最初に提示された香りを記憶し、異なる3か所の香りの発生源を移動しながら探し出す仕組み。ゲームの前後に認知テストを実施し、認知機能の向上を確認した。
実験で効果を検証、視空間処理に関するスコアが向上
63〜90歳の高齢者30名を対象に実験を実施。6日間空けて2回ゲームを行い、その前後で「ひらがなローテーション課題」と「単語空間記憶課題」における認知スコアを測定した結果、いずれも有意な向上が見られた。
社会的意義と今後の課題
本研究は、嗅覚VRを高齢者リハビリテーションの新たな手法として位置づけたもので、今後、認知症予防など社会的課題の解決につながる可能性が期待されている。
今後は、効果の持続期間や繰り返し実施による影響、視覚と嗅覚刺激の寄与の割合などについてさらなる検証が求められる。