関東経済産業局は8自治体で3年間にわたり実施した「地域の人事部」実証事業の成果をまとめたモデル事例集を公開した。人材確保が地域の喫緊の課題となる中、自治体と地域支援機関が連携し、人的資本経営の支援や関係人口創出などを目指すこの取組は、各地で新たなモデルを築いてきた。
👉 モデル事例集のダウンロードはこちら:
関東経済産業局|地域の人事部ページ
地域の人事部とは?──地域ぐるみの人材支援体制
「地域の人事部」は、商工団体や金融機関、自治体などが連携し、地域企業が抱える人材課題を面的に支援する体制である。地域企業の「変革」を後押しすることを目的に、関東経済産業局では令和4年度から実証を進めてきた。
本事業では、兼業・副業人材マッチング、インターンシップ、リスキリングなど多様な支援メニューが展開されたが、そうした取組を通じて、「地域の人事部」が①地域企業の人的資本経営の推進、②地域における学びの場の創出、③地域内外の人や組織がつながるプラットフォームの構築、という大きく3つの価値を地域に提供することが見えてきた。
8自治体の多様なアプローチ
本モデル事例集には、以下8自治体の代表的な取組が収録されている。
- 長野県塩尻市:連携協定、大企業連携、人材育成
- 新潟県燕市:兼業・副業人材マッチング、協議会
- 新潟県長岡市:インターンシップ
- 静岡県三島市:大企業連携
- 茨城県日立市:兼業・副業人材マッチング
- 茨城県大子町:兼業・副業人材マッチング
- 茨城県常陸太田市:協議会
- 長野県松本市:エンゲージメントセミナー
主導機関の属性や地域課題に応じて支援モデルが多様に展開されているのが特徴だ。
自治体職員の声に学ぶ、制度化と継続のヒント
事例集には、自治体職員へのインタビューによるコラムも収録されている。そこでは、自治体の総合計画に「地域の人事部」に関連する文言を盛り込み予算化を実現した経緯や、事業効果を財政部局へ伝える際の工夫などが具体的に語られている。
たとえば、長岡市ではインターンシップ事業に対する予算措置にあたり、市が補助金を出し続けることがが「民業圧迫にならないか」という懸念に対し、マネタイズの見込みを示して説得を試みたという。また、燕市では補助金ではなく委託費とすることで自治体の主体性を強調し、信頼性を担保した。
地域の人事部は“地域経済のハブ”となりうるか
本モデル事例集は、地域の人事部が単なる人材マッチング支援にとどまらず、企業経営や地域政策の変革にも寄与しうる可能性を示している。特に「関係人口の創出」や「学びの場の創出」を通じ、地域全体を巻き込んだ“共創”のエコシステム形成が進みつつある点が注目される。
地域の未来を担う新たな人材支援のモデルとして、自治体関係者だけでなく、地域で活動するすべての支援機関にとっても有用な内容となっている。
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