スマートシティの事例集15選 日本国内外の成功失敗ケースを紹介

スマートシティ事例
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スマートシティとは、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)などの最先端技術の利活用による最適化された都市運営のことです。

日本国内でもさまざまな自治体や企業、団体が取り組み始めています。そこでこの記事では、日本国内の事例を中心に、海外での先行事例にいたるまで、スマートシティに取り組んだ自治体や都市とその取り組みについて紹介します。

この記事を読むことで、スマートシティを実現するためのポイントや秘訣がわかります。

目次

日本国内でのスマートシティ成功事例15選

北海道札幌市 新・さっぽろモデル

北海道札幌市では、これまで「DATA-SMART CITY SAPPORO」として、生活や経済、そして行政の質を高めるために、観光や健康、雪対策、新型コロナウイルス感染症対策などに関するデータを一目で見えるダッシュボードを公開していました。

さまざまな分野に関するデータを収集することで、データ駆動、そしてデータドリブンな街づくりを目指していました。このダッシュボードは2024年3月29日で提供終了しています。

この取り組み以外に現在は「新・さっぽろモデル」として新たな展開が始まっています。この新・さっぽろモデルは、厚別区もみじ台・青葉エリアを対象に、タブレット・スマホを通じて生活支援や健康増進、コミュニティ活性化などのサービスを提供する事業です。

住民の自分のスマートフォンや専用のタブレット端末で利用できるサービスで、デバイスを通して農園に参加したり、健康管理ができたりします。そのほか、タブレット端末のみの機能ではあるものの、近隣施設までの交通案内や、地域の飲食店から廃棄になりそうな食品を受け取るなどの機能もあります。

福島県会津若松市 スマートシティ会津若松

スマートシティ会津若松は、ICTや環境技術などを、健康や福祉、教育、防災、さらにはエネルギー、交通、環境といった生活を取り巻くさまざまな分野で活用し、将来に向けて持続力と回復力のある力強い地域社会と、安心して快適に暮らせる街づくりを進めていくものです。

いわゆる“会津モデル”と呼ばれるほど有名なスマートシティ事例のひとつで、多くのメディアや書籍でも取り上げられています。

先駆者としてのモデルケースになるだけあって以下の分野で取り組みが進められています。各項目の補足部分は目指している内容です。

  • 食・農業

地産地消とフードロスゼロの実現

  • 観光

データを起点とした地域一体型観光の実現

  • 地域活性化

人とモビリティが共存したまちなか空間の実現

  • ものづくり

共通プラットフォームによる中小企業の生産性向上

  • モビリティ

市民参加による新たな移動サービスの創出

  • エネルギー

グリーンエネルギー化と地産地消の実現

  • 廃棄物

資源循環型の地域モデルの実現

  • 教育

一人ひとりの特性に合わせた子育て・教育の実現

  • ヘルスケア

AI活用やデータ分析に夜医療サービスの実現

  • 決済

手数料ゼロのデジタル地域通貨の実現

  • 行政

デジタルとアナログが融合した行政サービスの実現

  • 防災

一人ひとりにあった防災サービスの実現

福島県浪江町 浪江町復興スマートコミュニティ

福島県では、会津若松市だけでなく浪江町でもスマートシティに関する取り組みがありました。

復興にあたり「非常時の安全・安心」「再生可能エネルギーの導入」「生活利便性の向上と新たな雇用の創出」をスマートコミュニティの構築によって目指します。

地域エネルギーの拠点になったのは道の駅。道の駅でEV(電気自動車)を活用したレンタカーやカーシェアリング、乗合タクシーを提供し、町民や交通手段に乏しい方、通学などに役立てています。

電気自動車の活用は近年注目されている取り組みで、同町では、太陽光などの再生可能エネルギー電源で動かし、余った電気を蓄え、非常時にはその電気を使うというシステムの構築を図っていました。

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浪江町復興スマートコミュニティ構築事業について - 浪江町ホームページ 浪江町の復興にあたり「非常時の安全・安心」「再生可能エネルギーの導入」「生活利便性の向上と新たな雇用の創出」をスマートコミュニティの構築で目指します。

宮城県仙台市 仙台市×東北大学スマートフロンティア協議会

仙台市は東北大学とともにスーパーシティ構想(現:スマートフロンティア協議会)としてプロジェクトを推進しています。

2022年には仙台市と東北大学、さらにはNTTドコモ東北支社の産学官連携による「ドローンによる360°撮影」×「AVATOUR(360°リアルタイム空間共有ソリューション)」×「XR(Extended Reality)」による共体験コミュニケ-ションに関する実証実験を実施しています。

※XRとは、Extended Realityのこと。現実の物理空間と仮想空間を融合させて、現実では知覚できない新たな体験を創造する技術。

実証実験の目的は、XRを用いて参加者同士がバーチャル空間内でコミュニケーションを取りながら、それぞれ自由な視点で時間と空間を共有することで、まちの多様な魅力への共感を得られるかの調査です。

実験に参加した全参加者が 「実際に現地に足を運んでみたいと思う」 という回答をしたそうで、街の魅力の発信などに今後大いに役立てられると考えられます。

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千葉県柏市:柏の葉スマートシティ

千葉県柏市では、柏の葉スマートシティ実行計画の取り組みのひとつとして、脱炭素社会実現に向けた環境に優しい暮らしとしてエネルギー領域での取り組みを推進しています。

柏市の柏の葉スマートシティでは、カーボンゼロに向けたエネルギー領域での取り組みとして以下の3つのテーマを掲げています。

・創エネ

・電力安定化

・グリーン電力

2014年から柏の葉AEMSという独自のエリアエネルギー管理システムを運用しています。太陽光発電、電気自動車の実証実験など、脱炭素に向けたさまざまな取り組みが行われています。

群馬県前橋市

いち早く自動運転バスに取り組み始めたのは、群馬県前橋市でした。2025年度までの実用化を目指しています。

目的は、少子高齢化によるバス運転手の担い手不足の解消です。くわえて、高齢者に対しての移動手段の提供の側面もあります。

2018年度から実証実験が開始され、2023年10月には自動運転実証実験計画として国に採択されました。

東京都渋谷区

若者の街・東京の渋谷でもスマートシティが推進されています。

まず挙げるのは高齢者デジタルデバイドの解消。デジタルデバイドとは情報格差のこと。高齢者に対してデジタル機器の無招貸与や、使用をサポートする講習会の実施などで、デジタルデバイドの解消を目指しています。

また、2021年からは支援ロボットを活用した、未就学児向けの発達状況を日常的に観測することも始めています。“発達あそび”をして、子ども発達状況を観測。観測されたデータをもとに、子どもの発達に関する早期発見や発達状況に合わせた支援をサポートします。

埼玉県さいたま市 スマートシティさいたまモデル

副都心である美園地区をAIやIoTなどを活用し、社会課題を解決する生活支援サービスを提供することを目指しているプロジェクトです。

かなり動きが活発な自治体のひとつで、スマートシティに関わる事業者を今夏採択予定とするなど、中長期的な展開を視野に入れた取り組みがいまも進んでいます。

同市における過去の取り組みでは、日立製作所、日立社会情報サービス、損害保険ジャパンの公民連携によって、AIを活用したインフルエンザ予報サービスを発表しています。

これはその名のとおりインフルエンザの流行状況を予測するサービスで、4週間先までの季節性インフルエンザの流行度合いをレベル0~3までの4段階で予測し、ウェブサイトなどに配信されていました。

そのほかには、シェア型マルチモビリティとして、専用アプリケーションで貸出及び返却場所である「ステーション」の検索、利用予約、決済までの一連の手続きができ、、「ワンウェイトリップ(乗り捨て)方式」で、エリアを問わず全てのステーションに返却可能にするという取り組みも進めていました。

長野県伊那市 空飛ぶデリバリーサービス

伊那市は、長野県の総面積の5%を占め、県内の市町村では松本市、長野市に次いで3番目の大きさです。南アルプスと中央アルプスの山々に囲まれた地方都市であるため、中山間地やその周辺地域での暮らしは高低差もあり、移動が大変なところが多いです。そして、山間の集落では少子高齢化も進んでいました。

同市では近年、物流や交通、そして買い物が地域課題として取り上げられていました。なかでも、高齢者を中心に食料品や日用品などの買い物困難者が増加していたそうです。

この課題を解決するため、ドローンを用いた新たな物流システムを構築することにより、中山間地域における買物困難者支援と地域経済の振興を目指しました。

利用方法は、ケーブルテレビで商品を注文された商品は、ドローンを使って近隣の公民館まで配送されます。そして、利用者はドローンの着陸地点である公民館に荷物を取りに行くだけです。

このドローンには、最大5kgまで積載可能で、およそ7km離れた地点まで配送できるとのこと。

ちなみに、利用者が近隣の公民館まで取りに行けない場合は、ボランティアが配達してくれるそうです。

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兵庫県・加古川市 スマートシティ加古川

2019年には、日・ASEAN スマートシティ・ネットワークハイレベル会合(ASCN)、グローバル・スマートシティ・アライアンス設立会合(G20)に出席した兵庫県・加古川市におけるスマートシティの取り組み。

加古川市では、安全・安心のまちづくりに寄与する事業を実施しています。

そのなかでも、小学校の通学路や学校周辺を中心に見守りカメラを設置し、通学時や外出時の子どもの安全を確保することで、市民が安心して子育てできる街を実現しています。

これまで設置された見守りカメラは1,500台。カメラとして映像を捉えるだけでなく、ビーコンのタグを内蔵することで位置情報履歴を保護者や家族にお知らせするサービスの普及にも取り組んでいます。

2017年と2023年における加古川市内の刑法犯認知件数は4割程度も減少しています。

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見守りカメラについて|加古川市 加古川市が市内1475か所に設置し管理する見守りカメラに関する情報を記載しています。

海外のスマートシティ成功事例

日本国内におけるスマートシティへの取り組みが盛んになったのはここ数年の話ですが、海外に目を向けるとすでに多くの諸外国およびその都市でスマートシティが推進されています。

オランダ・アムステルダム

オランダ・アムステルダムでのスマートシティプロジェクトの歴史は2009年から始まっています。

アムステルダムでは「アムステルダム・スマートシティ・プログラム」が2009年に立ち上がり、モビリティや公共空間などをテーマに、持続可能性とエコロジカルな生活、そして経済成長を目指しています。

たとえば、一般家庭に「スマートメーター」を取付、エネルギー使用量を可視化することで、生活者が自身でどれだけエネルギーを消費・使用しているのかを理解させ、改善に取り組ますようにしています。

そのほかでは、昨今日本でも導入が進んでいる行政における各種手続きの簡素化やデジタル化。街中の駐車場の空き状況をリアルタイムで発信することで、ドライバーはスムーズに駐車スペースを見つけられるようにするなどの取り組みも進んでいます。この駐車場の空き状況の情報発信によって、駐車場を探す時間、そして燃料消費を減らすことにつながっています。

アメリカ・ニューヨーク

ニューヨークでも多くのスマートシティに関する取り組みがあるものの、既存の公衆電話をWi-Fiスポットに変える「LinkNYC」というプロジェクトが有名です。使用頻度が下がった公衆電話の再利用という点で注目を集めました。

Wi-Fiスポットを用意することで、利用者データの分析なども進みやすくなり、収集したビッグデータからさらなる事業の創出にもつながります。

中国・浙江省杭州市

中国の杭州市は2016年にアリババグループと手を組み、スマートシティが急速に進んでいます。

中国では都市部における交通渋滞が問題視されていました。杭州市はアリババグループの「ET City Brain」と呼ばれるAI技術を活用したシステムを導入することで、交通渋滞や速やかに事故を検出し、“信号”を最適化させることで都市部の渋滞緩和に貢献しています。

さらには、緊急時には警察や緊急車両を優先的に走行できるような信号調整にも対応しているとのことです。

スマートシティの失敗事例

カナダ・トロント

トロントでは2017年に「Sidewalk Labs」と提携し、未来都市の開発を計画していました。しかし、2020年5月にプロジェクトは中止になりました。

理由は、公には資金不足となっているものの、実際は個人情報の取り扱いについて住民からの同意が取り切れなかったため、とされています。

Sidewalk LabsはGoogle(アルファベット)傘下の会社です。一見すると、「Googleだからすごそう」と考えるかもしれませんが、広告等などにも住民データが使われるのではないか、という不信感から中止になったのではという見解が多くされています。

日本・某自治体

日本国内における各スマートシティプロジェクトにおいて、現時点で「失敗」と判断するのは時期尚早かとは思いつつも、中止になったものも存在しています。

某自治体では、大手企業が取り組んでいる街づくり構想と連携し、未来都市の創造を描いていました。しかし、某自治体は高齢者も多く、先進的な技術を住民・市民の生活につなげることの難しさから、実装まで思うように進まず中止となりました。

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