地産地消という言葉は、小学校の社会科などの授業で習うので、耳馴染みのあるキーワードです。
農林水産省では地産地消について、「国内の地域で生産された農林水産物(食用に供されるものに限る。)を、その生産された地域内において消費すること」および「地域において供給が不足している農林水産物がある場合に、他の地域で生産された当該農林水産物を消費すること」としています。
一般的に地産地消とは、その地域で生産されたものを、地域内で消費するといった認識です。
実はこの地産地消には、地域貢献、果てはスマートシティ・スーパーシティなどの最新トピックにも関連する要素で、大きな注目を集めています。
この記事では、地産地消のメリットやデメリットについてわかりやすく紹介します。
地産地消とは
地産地消とは先にも記載したように、地域で生産された農産物を、その地域で消費することです。地産地消に取り組むことで、農産物の生産者と消費者を結び付けられます。
主な取り組みでは、道の駅や直売所、スーパーなど量販店で地域の農産物を販売したり、学校や病院、福祉施設などの公共施設での給食や食事として提供されたりすることで、地域の農産物を利用しています。
スーパーに買い物に行った際にも、「〇〇で収穫した野菜です」のようなポップとともに、一区画が“地産地消コーナー”になっている光景を見たことがある人も多いのではないでしょうか。最近では、コンビニエンスストアなどでもこのような地産地消を進める動きがあります。
地産地消に関連する法律も定められており、「農林漁業等の振興等を図るとともに、食料自給率の向上等に寄与することを目的とする」としています。
地産地消がSDGsにどのように影響を与えるのか
2030年の目標に持続可能な社会の実現するための目標である「SDGs」には、17のゴールと169のターゲットが掲げられています。
地産地消はSDGsの17のゴールのうち、複数の項目に当てはまる要素で、一層注目を集めています。代表的なものを以下で紹介します。
海や陸の豊かさを守る<SDGs 「14」「15」>
最も密接な関係にあるのは、SDGs14番「海の豊かさを守ろう」と15番「陸の豊かさも守る」の2項目です。
これらのSDGsの目標は、海と陸の環境や資源を守ることが目的とされており、目標に対するターゲットにおいてもそれぞれ記されています。
14番「海の豊かさを守ろう」のターゲットには「漁業や水産物の養殖、観光を持続的に管理できるようにする」「海洋資源を持続的に利用することで、より大きな経済的利益を得られるようにする」とあります。
また、15番「陸の豊かさも守る」には、「陸上の生態系と、内陸の淡水地域の生態系、および、それらがもたらす自然の恵みを、守り、回復させ、持続可能な形で利用できるようにする」としています。
エネルギー<SDGs「9」>
SDGs7番の項目はエネルギーに関する目標です。
地産地消のそもそものメリットに、物流コストの低減も含まれています。要するに、遠方に輸送するよりも近くの地域で販売・消費するほうが当然ながら輸送コストが減り、消費するエネルギーも少なくなります。
地球温暖化やCO2削減が大きなトピックである以上、エネルギー消費を抑えつつも、生活を豊かにできる地産地消は大きな役割を与えられているのです。
地産地消を推進するうえでの課題
地産地消の取り組み自体は現在も多数展開されているものの、さらなる発展・推進には課題も山積みです。
農業や漁業の担い手不足
地域によるものの、農業や漁業の担い手が不足していたり、高齢化していたりする現状があります。過疎化する農地が放置されるケースも少なくありません。
消費者自体の不足
各種生産者が地産地消を実施しようと販売店などで展開しても、買い手となる消費者が少ないケースもあります。都市部や都市近郊エリアは人口も多いため、即売所が活気あふれているものの、地域によっては閑散としているところも存在しています。
輸入品などとの価格競争
昨今、円安や物価高の影響で輸入品などが高くなり、国産品が安くなる事象が発生してはいるものの、依然として輸入品を選ぶ、頼るケースは変わっていません。また、地産地消だけを目的とした生産の場合、当然ながら生産量も全国展開するにも比べて少なくなり、結果的にコストが他社製品よりもかかってしまう話もあります。かといって安くすると、農業や漁業を営む人たちの実入りも減るため、業種としての衰退につながる恐れもあります。
地産地消に対して何ができるのか
地域活性化のためには、地産地消は「食」と「職」を支える大きな観点であることに間違いありません。
地産地消のための地域食品は目に留まる機会が増えてきたものの、実際の消費者はやはり一般流通品を選択するケースが多いです。これは決して悪いことではなく、消費者として金銭コストを考えると合理的な選択であるのも事実です。
しかし、国として物価高の影響を打破するため、また食料自給率を向上させるためにも国産品、地元生産品への注目度を上げる施策はいままで以上に実行される可能性もあります。
したがって、消費者レベルの話にまで落とすと、大きな行動を取ることは難しいものの、まずは地元・地域にも生産者がこれだけいて、こういう生産品があるのだと、気が付くことが最初の一歩かと思います。
ちなみに、東京都内でも地産地消は巻き起こっており、国立市では市内で収穫した野菜の即売所があったり、八王子市にある牧場では「東京牛乳」というブランドとして販売していたりしています。
住んでいる場所、勤めている場所などでの地産を知ることで、地消の活動に踏み出しやすいので、まずは“知る”ことから始めましょう。