株式会社Schoo(スクー)が2024年10月22日、東京証券取引所グロース市場に新規上場した。スクーはオンライン学習サービスを2011年から提供している。
シクチョーソンでは特定の企業が上場した話題のみではあまり記事として取り上げることはないが、スクーに限っては地方創生を事業のひとつとして設けている。そのため、スクーが上場したことによって地方創生とどのように絡んでいくのかを追っていく。
2024年現在、56の自治体と連携
スクーは先に記載のとおり、主たる事業はオンライン学習サービスだ。売上高構成の94.1%を法人向け(toB)のサービスが、残りを個人向け(toC)と高等教育機関や社会人教育事業者向けが占める。
スクーにはもうひとつ、大きな事業がある。それが「地方創生」だ。同社サイトによると「日本全国の地方自治体との協力関係のもと、多角的な側面から地方創生を実現していきます」「地域の方々と共にずっと存続しうる『未来の地域』づくりを推進していきます」としている。
同社の地方創生事業は2015年、福岡市と千葉市の自治体から始まった。現在では全国56の自治体と連携し、さまざまな取り組みを手掛けている。主な取り組み内容は以下だ。
- 離島の住民向けの遠隔授業
- 県庁職員向けに最先端テクノロジーの研修
- 行政と企業一体での地域全体への学習体制の構築 など
上記はいずれもオンライン学習による取り組みなので、スクーの主たる事業内容を自治体向けに展開しているに過ぎないが、「本屋さんの再発明」「九州地方との関係深化のために熊本に地域オフィスを開設」といった、根幹事業“以外”の取り組みも進んでいる。
地域の企業や人にどうやって学びを届けるか模索していく
上場した10月22日には報道向けに記者会見が実施され、質疑応答にて代表取締役・森健志郎氏は、上場したことによる地方創生の展望について次のように話した。
「自治体の方と連携して、個人や企業様に届けていく方式・方法をもっと探っていきたいと考えています。
企業様や個人の方のなかには、デジタルリテラシーの差や情報の非対称性、研修にかけられる予算など、さまざまな理由や課題を抱えていることがあります。
地域でパワーを持っている地方行政や地方自治体の方々と連携して、そういった課題を抱える企業様や個人の方にも『どうすれば学びを届けていけるのか』を現状でも模索しています。鹿児島県日置市での取り組みのように、自治体との連携によって、地域の企業様や個人の方に学びを届けていく方法を第一にして進めたいとは考えています」(森氏)
ゲームチェンジのタイミングになっている
本記者会見で印象的だったのは、少子高齢化から発生している人手不足によってゲームチェンジが起きているという話だ。時代の潮流は「人材不足・流動化促進や多様な働き方に対応する機運」であると森氏は話した。
ここ数年、HR(Human Resources)の領域では、人材の採用における“紹介”や“派遣”が活発だった。ただ、これからは「社内人材のリスキリングと定着支援が重要になる」と森氏は展望を語った。
そのうえでスクーは「人材の育成・定着」を同社の持ち場としてとらえており、優秀な人材の育成のためにサービスをこれからも提供していくとした。要するに、限られた人員をいかに優秀にするか、だ。これは都市部の企業に限った話ではなく、地方の企業、そして自治体などにも共通する話である。
スクーは豊富な動画研修コンテンツを取り揃えている。「伝え方講座」や「PowerPointのお作法」といったビジネススキルに関するコンテンツは4,179個、「デザインスキル」「DX入門」「Notionの使い方」などのデジタルスキルは2,356個ある。そのほかにも、お金のことや禅のことなど幅広いコンテンツをラインアップしている。
環境による学びなどの地域格差は以前から社会問題のひとつにはなっているが、スクーのようなサービスは日本が抱える社会課題の解決のひとつにもなっていきそうだ。どこにいても学べる時代はもう来ている。